茅葺屋の住まい@砂木の家/新築」カテゴリーアーカイブ

070927 壁土が来ました

夏のあいだに頼まれていた仕事を片付けて、自宅の屋根葺きに戻ってきました。
屋根を葺き出す前に、下地に使った縄を濡らさ無いように屋根の養生をして、ようやく雨ざらしの状態を脱しました。
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本格的な作業開始に先立って、まず足場を組みます。
茅葺きの足場は、軒の高さに合わせて微妙な調整が必要なため、昔ながらの丸太と番線の足場が具合が良いのです。

足場を組んでいると、左官屋さんが壁に塗る土を持って来られました。
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2tダンプ一杯の土・・・小さいながらも家一軒の壁を塗るのに、多いと言えば多いような、少ないと言えば少ないような。素人には判りませんね。

壁土は左官屋さんが土手に積んだ上に水を貯めて、シートで包んで寝かせておきます。
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途中に何度か切り返す必要があり、その際に藁スサを足す事になるのですが、それは茅屋根を刈り揃えた切り屑で賄えたらと面白いかな、と思っています。

070909 下地組み

大工さんが手際良く棟上げ、レン(垂木)を流すところまで進めてくれた「砂木の家」ですが、屋根屋が放ったらかしにしているあいだに、雨に打たれてカビが生えたりしてしまいました。
ようやく作業再開です。
と、行っても今日明日だけですが・・・仕事の合間を縫っての作業なので、屋根屋の自宅は後回しにせざるをえませんので。
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レンを固定するのは縄によってです。風や台風の力を柔らかく受け流す、茅葺き屋根の下地を組むのはやはり縄でなければなりません。
釘は抜けてしまいますし、ビスは折れてしまいます。ボルトで強力に組めばレンの方が折れてしまうでしょう。

しなやかで強い茅葺き屋根の構造を支えるのは、やはり縄が一番です。
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レンは2本1組で棟に股がらせたものの位置を決めて固定したら、それに吊るようにしてヤナカ(母屋)の丸太を設置し、間を埋めるようにやや細い丸太をモト(根本)とスエ(梢)を逆にして配置して行きます。

下屋のシコロ屋根は、既に瓦屋さんが仕上げて下さっています。
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カヤオイがついて軒の高さが決まり屋根のかたちが現れてきました。
ロフトの窓の雰囲気も、イメージして頂けるようになったのではないでしょうか。

070819 続々・レンを流す (茅葺きの小屋組)

棟上げのあと、棟の高さと並んで気にかかっていたのが、この部分です。
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ロフト部分の棟木が、茅葺き屋根の棟木を支える棟持ち柱としっかり組まれてしまっています。
「しまっている」というのは、本来の茅葺き屋根の小屋組は、柱梁からなる建物の箱の上にカゴが被せてあるように乗っかっているだけで、構造体としては建物部分と別々のものなのです。

そのため茅葺き屋根の小屋組は、屋根を葺いているとぐらぐら揺れるなど頼りないものです。大工さんもそれをご存知だからこそ、丈夫になるように気を利かせてくれたようです。
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しかし、揺れるということは総持ちで持っている茅葺き屋根が、地震の揺れや風圧力を上手くいなしている訳ですから、変に固めてしまうと構造材に局所的な無理な力がかかり、致命的な破損につながらないかと心配なのです。

ロフトの天井は建物部分が屋根裏に盛り上がった構造なので、茅葺きの小屋組はその上に乗っかっていなければならないはずです。
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とはいえ、せっかく大工さんが良い木を用意して、鼻栓継ぎで丁寧に組んで下さってもいますので、なかなか縁切りしましょうとは言い出せなかったのですが、悩んだ末に結局ちょん切ってもらいました。

そして変わりに、ロフトの棟木の上に建つ棟束と貫を通して繋いでもらいました。
棟持ち柱とロフトの棟木が切断されて、より高い位置で貫が通されたことがおわかり頂けるでしょうか。
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棟束は茅葺きの小屋組の方に属する部材ですから、これと組むことは問題ありません。むしろ普通に行われている必要なことです。

ちなみに棟持ち柱が立っている桁材(ナカオキと言います)は、天井板の上に転がしてあるだけで固定すらされていません。
棟持ち柱は大工さんの絵図板では、渡りあごを噛んだ梁材とも組んでありましたが、それは早めに気付いて外しておいてもらいました。ロフトの棟木との接合は刻み場を覗かせてもらった時には気付かなかったもので・・・
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と、いうかナカオキは本来渡りあごを噛んだ梁材の上に置かれるものなのですが、今回は新築ということで部材を減らすために、そのあたりの構造は多少整理されています。

モトを上にするレンを全て流し終えて、屋根のかたちが完全に確認できました。
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ロフトの天井と茅葺きの下地との関係も、わかりやすくなってきたのではないでしょうか。

070818 続・レン(垂木)を流す

茅葺きの家は基本的に2重梁になっていて、上の梁は桁の上に「渡りあご」を噛んで乗せてあります。合掌組みの場合は、必ずこの上に合掌材の根元を置きます。レンを縄で固定する草桁もこの梁の上に固定します。
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棟木から下屋桁まで渡したレンを受ける位置に調整して、草桁を梁にダボ栓で固定します。
こうして丸太の草桁は建物の壁面から離れて隙間が出来るので、縄をまわして固定することができるようになります。

2本1組にしたスミレンを棟木に架ける位置が決まり、大間(平)側の草桁が固定されると、その上に小間(妻)側の草桁をスミレンを受ける位置に調整して固定します。
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垂木を受ける枠を、垂木に合わせてあとから設置するところが、茅葺き屋根の下地組みの変わっているところです。

枠となる草桁を受ける梁は、垂木であるレンに合わせて調整できるように、余裕を見ておく必要があります。
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草桁の位置が決まればはみ出した部分は、竹の下地を組んで行く際に邪魔になりますから切ってしまいます。
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070813 レン(垂木)を流す

棟の上がった家にはなるべく早く垂木を流して屋根のかたちをつくり、雨から養生できるようにしておかなければなりません。
ベテランの大工さんたちも、茅葺きの屋根下地を新しく組むのは初めてなので、一緒に作業しながら説明させてもらいます。茅葺きの小屋組は現場合わせで組んで行くので、順番を間違えないようにすることが肝心です。
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まず、スミレン(隅垂木)の位置を決めます。屋根全体のかたちがここで決まってしまいます。

茅葺き屋根の垂木は丸太のモト(根元)を上にしたものと、スエ(梢)を上にしたものを組み合わせて使います。
モトを上にしたものはホゾを切って栓を打ち、2本1組にしてあります。
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それを棟木に引っ掛けて、軒の方は下屋の桁に乗っけてあるだけです。
2本1組にしたレンを両側のスミレンを含めて何組か放射状に並べて行くことで、屋根のかたちをつくっていきます。

棟木から下屋桁に渡したレンを縄をかけて固定するために、ちょうどレンを受ける位置に草桁(丸太の桁)を配置しなければなりません。
草桁を乗せる梁の鼻は長めに出しておいて、草桁の位置を微調整できるゆとりを持たせてあります。
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ところが、そのゆとりをはみ出しての調整が必要なことが判明してしまいました。
棟が上がった瞬間から、何だか低いような気がして胃が痛かったのですが・・・大工さんと何度も打ち合わせしながら進めて来ましたが、実際に建ててみて現物を前に説明しなければ、伝えきれないことが残ってしまうことに歯痒さを感じます。

とにかく、棟の高さを上げないことにはどうにもなりません。ただちに棟木の上に束を立てて小棟が乗せられました。
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緻密な仕口を刻み細かい寸法を合わせる大工さんと、現場で豪快な解決策を採用する大工さんと、その割り切りの良さには驚かされますが、とても面白いと思います。
まあ、茅葺きの屋根下地はそもそもが、屋根屋や近所の人達が現場合わせで組んでいますから、柔軟な気持ちで臨機応変に対応して行けば良いと思います。

とにかく屋根下時の勾配も、大間の側は美山の茅葺き民家の標準に近づいて、棟上げから続いていた懸念もすっきり解消しました。
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スミレンの頭の位置で小間の勾配も決まって来ます。
そちらはお盆明けに。

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070806 床組、貫

床組の部材は家が完成してしまうと人の目につく事はなく、しかし、湿気や虫害には最も曝されるところですから、昔から見た目は悪くとも乾燥し切った丈夫な古材が、転用されることの多いところです。
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砂木の家でも、何かに使えると思って集めていたヒノキやクリの柱などが、大引として用いられました。

束は茅葺き屋根の棟飾りに使う、ウマノリの端材です。
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自宅として暮らしていた小屋のまわりが散らかるのを気にかけながらも、いつか役に立つ事を信じて後生大事に抱え込んでいた木切れたちが、立派な仕事に就いてくれて何とも言えず嬉しいです。

砂木の家の耐力壁となる壁は、土塗りの荒壁とするので、柱のあいだに筋交いではなく貫が渡されました。
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構造用コンパネや筋交いでひたすら固めていく方法だと、限界を超えた途端に一気に破壊されることがあり得ますが、伝統的な貫構造は、小舞竹、壁土と一体となることで、丈夫なうえに粘り強い壁をつくります。

070731 建前

美山では随分と久し振りに目にする快晴の青空の下、大工さんたちが息を合わせて振るうカケヤの音が響いています。
施主の普段の行いはあまり感心されない筈なのですが、大工さんたちの心がけが良かったおかげでしょう。
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皆さんありがとうございます。お世話様でした。
僕は現場のお盆前進行が押しているので、ちょっと覗きに来ただけでしたが。もっとも施主なんか居ても、うろうろするだけだったでしょうけれども。

夕方には棟札、墨壷、差金にお神酒、ご洗米、盛塩を供えて、大工さんに上棟式を取り仕切って頂きました。
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とは言っても餅撒きは無し。近所に子供も少ないし、すぐ横が谷川で危ないですし。
でもご近所の方が次々とお祝いを持って来て下さり、夜にお礼のご挨拶にまわった際には「木槌の音が良かった、良えもんやなあ」とも言って下さいました。

基本的に金物は使わず、大工さんの手刻みによる材を組み合わせて建てられています。
僕が大工さんに示したのは図面と模型、そして予算だけでなのですが、要所には手間のかかる車知(シャチ)栓継ぎで、松材の長物(チョウモン/差物)が組まれています。
贅を尽くした旦那仕事ではなく、はっきり言ってしまうとローコスト住宅なのですが、押さえて置くべきところからは一切手を抜かないという大工さんの姿勢を示して頂いていると思っています。
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まあ、予算は限られているのでその分抜くところは抜きますが。
一般的なローコスト住宅とは、多分そのあたりのバランスが随分違うのではないかと思います。

さて、いよいよ屋根を葺かないことには、大工さんも左官屋さんも仕事を進められなくなりました。
屋根屋の段取りが悪くて申し訳ないです。胃が痛い・・・
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あと、この現場を使っての「カヤマル'07」企画中です。
こちらも実施の詰めが遅れて、未だにきちんと告知できずにいますが。
詳細が決まり次第に本ブログでも参加を募りますので、よろしくお願い致します。

070730 上棟前夜/アプローチの石垣

「何としても7月中に棟上げしておきたい」という大工さんの気合いが叶って、明日大安吉日の棟上げに備えて材が組まれ始めています。
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二次元の図面からついに立体に立ち上がって来るのを見ると、感慨もひとしおです。
無事に屋根が収まるかどうか、不安も立ち上がって来ますが・・・

後回しにされていたアプローチの整備が、棟上げのためにレッカーを据える地行と絡めて、一部行われました。
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この石垣は既に孕んで崩れかけていたので、いずれにせよ積み直す必要があったのですが、石垣も茅葺きもこのようなプロの手によらない、かつての「百姓の百の技のひとつ」として積まれたであろうもの方が、現在ではある意味で却って貴重な技となってしまっているような気がします。
ここでもプロの石屋さんに頼むのは大層ですし、かといって自分で積むことも出来ず、頼むあても無く手をつけるのを躊躇していたのですが、バックホーのオペレーターのおじさんがあっさりと(スロープの部分)積んでくれました。
ユンボが通れるくらい、結構しっかりしています。

組み立てを待つ柱のほぞ穴。
金物を用いない在来技法の継手を見るにつけ、あらためて大工さんの技能に感心させられます。
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建前が終わるまでのひとときだけしか見れませんが、トーテムポールのようでかわいらしい表情だと思います。

070726 土台

基礎の上に土台が回されました。
土台にはヒバを使っています。
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北東北や北陸では建材として重宝されるヒバですが、削ったときの独特の匂いが強いせいか、大工さんのお話しでは京都では材の品目として流通しておらず、立米売りのヒノキの山に、天然生えのものが混じっているくらいだそうです。
シラス干しに混じっている小さなタコとかカニみたいな感じでしょうか。

ヒバはヒノキの異物扱いなので、ヒバが多く混じっているヒノキのひと山は安くなるのだとか。
大工さんには早い時期からなるべくヒバ混じりのヒノキを買うようにしてもらって、土台用のヒバを貯めておいてもらいました。相対的にどこかのお宅に使われたヒノキも安く買えた訳ですから、結果的に上手く収まったと勝手に喜んでいます。
大工さんの刻み場にはヒバを貯め込む事になって、迷惑をかけてしまいましたが・・・
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土台の上に置いてある板は、茅葺きの棟収めに使うウマノリを作った際の端材をスライスしたものです。

茅葺き屋根のてっぺんで風雨に曝されるウマノリは、堅く水に強いクリの木で作ります。
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水廻りとなっている北側下屋部分の土台で、基礎とのあいだに挟んで土台を浮かせるパッキンとして使いました。

刻み場では大工さんたちが部材の仕上げにかかっておられます。
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スギ、ヒノキ、アカマツ・・・適所に使い分けられた材が、ノミとカンナを使う大工さんの手によって柱や梁に姿を変えて行くのは、何度見ても不思議な風景です。

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大工さんの刻み場では、砂木の家の部材の刻みが始まっています。
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プレカットではなく、ひとつひとつ、大工さんが手で刻んで加工されている様子は、思わず見とれてしまう職人の仕事です。

大まかなプランが決まってから、土地の造成やら何やら手間取ったせいで、実際に細かな寸法が決まるまで1年あまりが過ぎてしまいました。
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図らずしも部材には、充分すぎるほどの乾燥期間を与えられる事となりました。
刻み場にいつまでも積み上げておく事になって、大工さんたちにはご迷惑をおかけしてしまいましたが。

棟梁のサカイさんが墨をつけておられます。
三次元の収まりを頭の中で整理しながら、やり直しのきかない線をためらわずに引いて行く集中力。
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手前に積んである切り欠きの多い材は、神戸で解体された家の棟木だったのを、友人たちがわざわざ届けてくれたものです。
刻み直されて、砂木の家で再び使われます。