茅葺き現場日誌@美山/M窯」カテゴリーアーカイブ

0627 竣工

母屋は軒裏も刈り落としてほぼ仕上がり、順次足場の解体に移ります。
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いよいよ梅雨らしく雨が強く降り込める日も多くなるなか、合間をついて方丈の差し茅も佳境に入って来ました。

雨の止み間は森の蒸気に満ちた空気がねっとりとまとわりついて、思わず出た「ヒレを付けたら泳ぎ出せそう」という台詞にはげしく同意してしまいました。
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しかし梅雨が明けたら明けたで、屋根の上に一年で最も暴力的な日照の降り注ぐ季節が到来することになるのです。

何とか方丈の刈込みも終わり竣工です。
もっとも、僕は皆が蒸し暑さに弱っている中、最後の2日間は現場を離れており、仕上げには携わっておりませんが。
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そういうわけで、この竣工写真に限り photograph by Yu Osaki ですので。

0620 差し茅/棟修理

毎年我が家の庭に一輪だけ咲いてくれているササユリの花。
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昨年の鎌倉長期滞在 途中に帰った際には見付けられず、自宅周りの造成で石垣を削った影響で絶えてしまったかと思っていましたが、今年も花を咲かせてくれました。

棟は丁寧に積んでいたつもりでも、年月が経つうちに傾いて来てしまうことがあります。
日当りの差がきつかったり、鳥や動物がいたずらをすることもあります。
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傾いてしまった屋根は雨養生の杉皮やトタン板を外して、茅を積み直したり適宜差し茅することで修正します。

傷みやすい棟飾りの一番上に渡してある丸太「ユキワリ」も、腐って折れていたので新しいものに交換しました。
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と、言いますか、僕が萩に行かせてもらっているあいだに直してありました。おつかれさま。

棟の修繕も済ませた母屋の方は、刈込みも仕上げの段階に入っています。
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やや後回しになって来ていた、方丈の差し茅にも力を入れて行きます。

0614 差し茅/カンヅメ屋根の維持

雨の季節が近づき、路面のカエルに気を取られながらの、危険な運転が続きます。
今日は、カーブを曲がったところに道路を横断中の亀(クサガメ?)が!
咄嗟に跨いで躱しましたが、亀の方は直前で頭と四肢をひゅっと甲羅にしまっていました。
そんなことしても、意味ないのだけれど・・・
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僕はライフスタイルとしての茅葺きを広めて行くことで、絵空事ではない人と自然の共生する社会の実現を目指しているのですが、人間と野生動物の生活域が無理矢理に重なると、ロードキル(Road Kill)が頻発することになります。
おそらく産卵のために川から上がって来たのであろう亀を、道路の反対側まで運びながら色々と考えさせられました。隣人との付き合い方がとても下手になっているように感じます。人間の方が。

現場の方は屋根を合わせてから後は順調に差し茅を続けて、今回修理するアリゴシから下はだいたいかたちになりました。
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手前の方丈の方は傷みが酷くて、正直「葺き変えた方が早い」と思わないでもありません。
しかし、たとえ葺くのと変わらない程の手間がかかっても、差し茅にすれば材料は節約できます。今回は方丈は差し茅で凌いで予算を圧縮する方針なので、職人としてやるべきことは決まっています。

ところで、美山町内の現場から少し離れたところでは、トタンを被せられたカンヅメ屋根に、さらにトタンを被せるという工事が行われています。
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住む人の生活や社会の変化により、ススキやヨシや麦ワラが屋根葺き材として合理的ではなくなったときに、より合理的な屋根材として「茅葺き屋根」を葺いて来たトタン板ですが、実はそれほど耐久性に優れているというわけでもありません。
施工後再塗装必要になるまでの期間は、製品それぞれの塗膜の性能如何によりますが大体10年〜20年くらいのようです。塗り直しは吹き付け塗装でおこなわれるので、その後は5年〜10年毎に行う必要があります。

それでも、自給自足的な伝統的生産システムが崩壊して後、住人の生活がより大きな経済システムの中に組み込まれてからは、お金を出せば買えるということは、安定的に屋根を維持して行くために大切なことでした。
また、茅葺きのサイクルが伝統的な生産システムに組み込まれていた時には、古屋根の茅くずが貴重な資源であったため、茅葺き屋根は必ずしも長持ちする必要はありませんでしたから、長持ちさせるための葺き方も十分には発達しませんでした。
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現在美山を中心に葺かれている茅葺き屋根は、耐久性の面で金属による覆いをされた場合に劣ることは、決してないと思っています。
さらに物理的にも情報としても大きく広がった個人の生活圏に合わせた、新しい茅葺きのサイクルを確立していくことで、トタン板よりも茅のほうが合理的な葺き材だという環境を、これからは用意して行くことが出来るはずだと考えています。

0609 屋根を合わせる

M窯の葺き上げが続いています。
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丸太のてこで「こぜあげ」たところまで、茅を葺きつめて通常通りに竹で押さえます。

押さえ竹を踏んで締めたら、てこにしていた丸太は引き抜いてしまいます。
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上の古い屋根は下からの支えが無くなるので、新しく葺いた屋根の上に自然と下りて来て、葺き材の勾配が合わさり一つの屋根となります。

ここから先は、差し茅により屋根をなおして行きます。
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方丈の方も合間を見て軒までつけました。

0601 差したりめくったり

助っ人稼業は続いています。
永谷宗円生家を仕上げて、M窯に戻って来ました。
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軒付けを手伝った小間(妻側)は葺き収まり、大間(平側)と手前に建っている方丈の修理に取りかかります。

基本的には「差し茅」による補修を行いますが、傷みの酷い大間の軒を丈夫なものにするために、軒の部分は古屋根を解体してつけ直します。
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新しく葺く屋根の先は、残した上部分の古屋根の下に潜り込んでいないことには水仕舞いがなりません。
そこで、古屋根の下に細い丸太を大体2m毎に差し込み、てこの要領で屋根を持ち上げ充分な隙間を作っておきます。

方丈の方はノーマルな差し茅の方法で軒を付け直して行きます。
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人数の出入りがある現場なので、2カ所の工事を平行して行うことで調整して行きます。

0520 軒付け

大野のM窯、軒付けの続きです。
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ヨシの編み付けだとマメコバチが巣を作るのをお施主さんが嫌われたので、軒裏に出て来るところには断面に穴の空いていないススキをかきつけました。

続いて稲ワラを取り付けます。
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・・・何か、ついこのあいだ同じようなことをやっていたような気が・・・

稲ワラの上には茅を並べて、軒裏を仕上げます。
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葺き替えの現場は軒が付かないと落ち着かないということで、サガラと2人軒付け助っ人の旅でした。

0519 編み付け

S邸の軒裏を仕上げたところで、慌ただしく次の現場の応援にやってきました。
美山の大野地区にあるM窯。ここも美山茅葺き株式会社の現場です。
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美山ではナカノさんや僕の、さらに次の世代が現場を担えるだけに育って来ていて、定期的な部分補修は手分けして、日常的なメンテナンスとしてこなせるようになってきています。

古屋根はすでに解体してあったので下地を直し、こちらは土間が吹き抜けで屋根裏が見えるので、化粧にオギを並べておきます。
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オギは充分に長いので軒の編み付けと兼用しても良いのですが、ストロー状のオギやヨシを軒に使うと、その内部にハチが巣を作ることをお施主さんが嫌われたので、外に現れる部分には穴の無いススキを使うことにしました。

オギの断面に空いたこの穴に、マメコバチ(コツノツツハナバチ)が好んで巣を作ります。
果樹園ではリンゴやサクランボの受粉に活躍しています。栽培農家の方の話しでは、人を刺すことはないハチらしいですけれどね。
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草桁に乗った、レン(垂木)とレンの間の隙間からは、家の中で火を使わなくなると、ネコやイタチといった動物が入り込んで来るようになってしまうので、ワラ束や板で塞がれることが多くなっているのですが、こちらでは屋根裏の換気を妨げないための配慮でしょうか、金網が使われていました。