051018 現代住宅としての茅葺き民家のネガ

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

伝統的な茅葺き民家は、現代の生活にとって必ずしも快適な住宅ではありません。新素材などを用いた改装がなされていても、残念ながら住みにくいが故に建て替えられることも多く、その住み難さを楽しめる人でなければ暮らせない、特殊なものになってしまっています。

昔の茅葺き民家を住宅として使い続ける際に問題となる点としては、「夏は快適でも冬は寒い」「屋内が昼間でも照明が必要なほど暗い」「水回りの設備の不備(或いは初めから存在しない)」があると思います。

それらへの対策を講じて尚、今の茅葺きの家が抱える問題をあげてみると

◯「寒い」ことへの対策として、
天井を張り、アルミサッシ、ボード、断熱材で部屋を気密して対応

結果として激しい結露、その割にあいかわらず寒い

泥縄式の対応で不十分な気密、そもそもの構造的な熱効率が改善されていない

◯「暗い」ことへの対応として、
シコロ屋根を設けて茅屋根の軒先を切り上げる

小屋裏の換気を阻害

茅屋根の寿命を縮める一因に

また、
雨戸列にアルミサッシの窓ガラスを入れる

結露甚だしい

縁側は構造的にそれでも寒いため結局閉め切り、採光の改善に繋がらない
(むやみに直射日光を屋内に入れると、陰が深まり余計に暗く感じることも)

◯水回りの使い勝手の向上のために、
土間に台所、風呂、便所を設置

暗くて、寒くて、湿っぽいキッチン、サニタリー

土間に風が抜けなくなることで家全体まで湿気る

そもそも、土間が無くなると民家の間取りはユーティリティに欠ける

家の周りにものが溢れ、軒下に積み上げられる

建物周りの通風が悪化し、ますます湿気る

と、いったところでしょうか。

051017 茅葺きの 普通の 家

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

茅葺き民家を、お金持ちの道楽や数寄者の趣味ではなく、ふつうの住宅として使ってもらいたいと思っています。
文化財として遺して行くだけでは、文化としての茅葺きは滅びてしまいます。

住宅として使って行くためには、文化としての茅葺きが今の社会にとって必要とされることと、建築としての茅葺きが住む道具として充分機能することが必要です。
茅葺きを次代へ繋げて行くためには、このソフトとハードの両面で茅葺きを支える、新しい仕組みが必要ということです。

ソフト面では文化としての茅葺きの意義を探り、それを広く知って頂くためにカヤマルカヤカルカヤコヤ 等の活動を行っています。
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ハード面では建築としての茅葺きが、現代住宅として使われるために必要なことを検討し、検証するために、茅葺屋の経験に基づいて考える、「茅葺きの 普通の、家」 を建ててみる事に決めました。

普通の とは、住宅として現代的で快適な生活を送れる「普通に暮らせる家」であり、茅葺きならではの快適さや自然と共生した生活を送れる「普通の装飾ではない茅葺き」 と、いうことです。

田舎暮らしをする住宅として、ログハウスや瓦葺きの古民家などと同列に、茅葺きの家が選択肢として上げられるようにしていきたいのです。