1115 古屋根解体

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/Ni邸

ナカノさんの美山茅葺き株式会社の現場の応援に、美山町の野添地区にやってきました。

こちらのお宅は、母屋の正面を茅葺きのまま軒まで葺き下ろし、小屋も茅葺きで残されるなど、昔ながらの佇まいに愛着を持って守られているご様子が伺えます。
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美山の屋敷構えは、こちらのように小屋・母屋・土蔵が横一列に並び、小屋と蔵は母屋に棟方向が直交するものが、最も一般的に見られます。

まずは、母屋を葺き替えます。
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よく見るとそこここに押さえの竹が出て来てしまって、葺き替え時を迎えていることがわかります。

今回は棟まで葺き替えますが、一度にめくってしまうと工事用のブルーシートだけで養生する面積が大きくなり過ぎ、強く風に吹かれると雨漏りの心配が生じるので、まずは下半分だけをめくります。
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古茅はめくり取る時に分別し、再利用可能なものは長さごとにまとめ、使えないものは畑へと向かいます。

晩秋のこの時期、乾いて暖かな茅葺き屋根には、冬眠するために様々な虫たちが潜り込んでいます。屋根めくりの際に古茅ごと掴んでしまうと、カメムシなら臭いくらいですみますが、アシナガバチだと痛い思いをすることになります。しかも、後で猛烈にかゆくなります。
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夏場の鮮やかなレモンイエローは面影も無く、冬眠モードなのか焦げ茶色にくすんでふらふらしていて、まともに飛ぶことも出来ませんが、さすがに掴んだりすれば刺されることになります。
でも、焦げ茶色で動かないから、茅に紛れてなかなか気付かないんです。もっと、派手なままでいてくれたら良いのに。

1118 下地揃え

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/Ni邸

古屋根をめくり取ったら、屋根下地を直します。
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丸太と竹をワラ縄で結わえてあるだけの茅葺き屋根の下地は、しなやかで丈夫なのですが、時間が経つと縄が切れたり竹が虫食いにあって緩んでくるので、葺き替えの度に整えてやります。

こちらのお宅のように、茅葺き屋根に瓦の庇を差し込む錣(シコロ)屋根とせずに、昔ながらに茅葺きのまま軒まで葺き下ろしていると、レン(垂木の丸太)の分だけ軒裏から屋根裏へと空気の抜ける隙間が保たれます。
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屋根裏の換気が充分なされることが、茅葺き屋根の寿命に大きく影響しているように感じているので、屋根の一部なりとも葺き下ろしにしておくと、良いのではないかと思います。風情もありますしね。

屋根に穴をあけたので、屋根裏の様子も良くわかります。
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合掌材と棟束を併用する構造は、あまり古くない美山の茅葺き屋根に多く見られます。
毎年刈り貯めた茅がこの小屋裏一杯なると、ちょうど1回分の工事に間に合うくらいの量になっています。
最近ではお施主さんが茅を用意されることは少なくなりましたけれども。

こちらのお宅のある集落は西向きの高台にあり、美山では珍しくきれいに夕焼けが見られます。
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盛りを迎えた紅葉が夕日に照らされて、山が燃えるように輝いています。

1119 軒付け

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/Ni邸

今朝は冷え込んで、この秋初めて本格的に霜が下りました。
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眺めている分にはきれいでも、足場の丸太も真っ白になって、滑るし爪先は辛くなるし、地下足袋を履いた足には堪えます。

しかし、霜の降った日には、朝霧が晴れれば上空には青空が控えているものです。
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暖かな陽射しにぬくもりを覚えながら、順調に軒付けの作業が進みます。

紅葉が深みを増して行くにつれて、秋の実りもゆっくりと熟して行きます。
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美山にいるあいだは、旬の野菜が並ぶ農協の販売所を良く利用します。
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ナメコも秋の深まりとともに大きく育ち、街のスーパーで売っているものとはかたちからして随分違います。食べごたえがあって、美味しい!

1120 葺き上げ/小雪

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/Ni邸

小雪を前にして、とうとう今年最初の雪が積もりました。
美山では本格的な雪の季節は年末からですが、毎年小雪の時期に秋の終わりを告げるように一度雪が積もります。
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この雪に茅が潰されてしまうと、一番大切な根本の部分が折れてしまいます。美山の茅刈りは紅葉に急かされ初雪に追われて行われます。
来月始めには茅刈り体験会(カヤカル@美山)が予定されています。幸い今回はうっすら雪化粧程度で済みましたが、ひやひやものです。

現場も雪化粧。
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何度雪かきしても夜の間に降った雪でリセットされてしまい、毎朝雪かきしながら屋根を葺いた、何年か前の嫌な記憶が甦ります。

まあ、今年の秋は今のところ天候も安定しています。
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朝日が当たると薄化粧の雪はたちまち消えてしまいました。

無事に軒はつきました。雪の季節までに仕上がるように、張り切って葺いて行かなければ。
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1121 棟の解体

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めくり取った部分が埋まるまでには、まだもう何段か葺き上がることは出来るのですが、明日から茅葺屋チームはこちらの現場をしばらく留守にさせて頂くので、人数の揃っているうちに棟の解体を進めておきます。
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重いウマノリを下ろすのは危険な作業なので、慣れた人を揃えて段取り良く進めておく方が安心なので。

棟を雨から養生する杉皮を押さえるウマノリを外せば、その杉皮も外して下ろし、杉皮に養生されている棟に横積みした茅も解体します。
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どちらにしても、棟を交換するくらいに屋根の傷みが進んでいれば、棟の中にも多少なりとも雨が入ってしまって、積み上げた棟を止める縄もあちこち切れてしまっていますから。

棟から雨漏りしないように、厳重に、しかし作業する時には簡単にめくり上げることの出来るように養生しておきます。
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雨だけではなく雪が積もっても、シートを上げれば雪かきに煩わされずに作業を進めることができます。