0304 古屋根解体

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@神戸/赤井家住宅

神戸市の登録文化財にもなっている赤井家住宅にやって来ました。
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長らく物置になっていて、雨漏りの始まった屋根には一部シートが被せられた状態でしたが、所有されるあかい工房経営赤井さんが、会社のオフィス兼、地域に開かれた古民家とするべく再生されるのを、お手伝いさせて頂きます。

ギリギリまで葺き替えを伸ばして保たせた屋根は、古い部分はおそらく60年、70年前に葺かれたもの。
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当時はおクドさんや囲炉裏を使って、毎日家の中で火を焚いていたでしょうから、古茅にはたっぷりと煤が積もっていました。

飴色の煤竹は丈夫そのものですが、前回の葺き替えで交換されたらしい白い竹には、虫食いでだめになっているものも少なくはありませんでした。
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煤竹には虫がつかないというよりも、切り旬が良くて虫のつかなかった竹だけが葺き替えの度に繰り返し再利用されて、長い時間をかけて煤竹になっているようです。

ところで、屋根をめくって行くと、かつておクドさんがあったであろうあたりの上に、こんなものが半ば茅に埋もれていました。
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大きさはこれくらい。
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瓦と一緒に葺かれていました。煙突のようにも見えますが穴は塞がっています。結局、何のためのものかは判りませんでした。
どなたかご存知ではありませんか?

古屋根を全てはぎ取って軽くしたら、低い地盤はかさ上げして、傷んだ柱の根本には新しい材を継いで直すために、一旦建物全体を基礎から持ち上げます。
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ですから、足場も全て解体してから、厳重に屋根の養生をしてひとまず帰ることとなります。
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0509 下地拵え

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@神戸/赤井家住宅

大工さんによる土台や柱の補修が済んだので、赤井家住宅に戻って来ました。
足場を組み直したら、下地の補修にかかります。
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赤井家の小屋組は美山でよく見られるウダツ(棟束)が無く、合掌材だけで支えられています。

さらに、合掌材の根本も美山のような二重梁の上ではなくて、桁に直接載っています。
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構造が合理化されて部材が整理されたおかげで、屋根裏に生まれた大空間は、毎年刈り貯めた茅を蓄えたりするのに重宝されて来たことでしょう。

丸太と竹を縄だけで結わえて組み上げられた茅葺き屋根の下地は、とてもしなやかで丈夫です。
しなやかさを保つために、葺き替えの際には傷んだ竹や丸太は交換して、縄もかけかえます。
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何百、場合によっては何千もある結び目を掛けかえるのは大変ですが、古民家族が応援に来てくれました。

茅葺き古民家の再生に取り組む彼等は、ワラ縄の扱いにもすっかり慣れて、男結びも習得しつつあります。
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おかげさまで、下地括りはずいぶん捗りました。
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ありがとうございました!

0601 軒付け

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@神戸/赤井家住宅

修復前とは茅葺き屋根のかたちも少し変わります。
それに合わせての下地拵えも全て終わりました。
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早速軒付けにかかります。
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今週末に開催予定の、茅葺き現場体験会カヤマル'09@神戸までに、参加者の皆さんに葺いてもらえる工程まで進めておかなければなりません。

ところで、葺き替えを始める前には、家の裏手にこんな蔵がありました。
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敷地に余裕が無く取り壊されてしまいましたが、その壁土は新しい土や藁スサと混ぜられて、赤井家住宅の壁を塗り直すために、寝かされています。
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古い土を混ぜて良く寝かせてから壁に塗ると、とても丈夫になるそうです。
何でも古壁の酵素が大切なのだとか。パン種みたいですね。

0604 葺き上げ/狭くても葺き上げ

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@神戸/赤井家住宅

6月に入ったとたんに、空模様があやしくなって来ました。
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週末を目指してどんどん葺いて行きます。

材料もどんどん運ばれて来ます。
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干し草の山があったら、そりゃ登りたくなるね!

茅葺き屋根は雨水の流れる表面から少しずつ減って行き、年々薄くなって行きます。
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雨漏りする程薄くなっていた赤井家の屋根に接して、後年ガレージが建てられていました。

このまま新しい屋根を葺いたら、軒が隣りの建物にめり込んでしまいます。
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そこで、収まりを考えて屋根のかたちを変えたりもしたのですが、それでもこんなややこしいところも残ってしまいました。
丁稚サガラが苦労しながらカドをつけています。

美山茅葺き(株)から職人オーサキとマツキに丁稚コースケが。山城萱葺き屋根工事からウエノくんが応援に来てくれています。
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腕利きの若手が集まってくれて、体験会の準備が間に合いました。

0607 カヤマル'09@神戸/赤井家住宅

投稿日: カテゴリー: 茅葺き体験会「カヤマル」茅葺き現場日誌@神戸/赤井家住宅

茅葺き屋根の葺き替えを、たくさんの人が交流する機会として活かそうと、上津茅葺き保存会主催による茅葺き体験会、カヤマル'09@神戸が開催されました。
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地下足袋にヘルメットで決まった参加者の皆さん。
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職人の手解きを受けながら、実際に茅を捌いて並べて行きます。

長さや堅さが様々な茅を、それぞれの性質を活かしながら所定の厚さまで並べたら、仮押さえしてから屋根のかたちに叩き揃えて行きます。
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大胸筋と僧帽筋が鍛えられます!

屋根のかたちが整ったら、押さえの竹を縫い止めて行きます。
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屋根の外から大きな針で針金を差し入れたら・・・

屋根裏ではレン(垂木)の際に誘導して、レンに針金がまわるように架け替えてやります。
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最後にみんなで並んで、タイミングを合わせながら押さえの竹を踏み固めたら、ひと工程が終了です。
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たっぷり体を使ったら、いつも最高のお昼ご飯をあかい工房さんが用意して下さいました。
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地鶏の親子丼、忘れられません!

茅葺き屋根を葺いていたことは覚えていなくても、みんなで集まって遊んだ、とても楽しい夏の日の想い出の中に、茅の匂いや屋根を葺く音は刻み込まれて、いつか、懐かしく思い出すこともあるでしょう。
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色々なところから、色々な人たちが集まって、ひとつの屋根を力を合わせて葺いた2日間。
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茅葺き屋根と、あかい工房の人たちの、人と人を繋ぐ力にあらためてほれぼれとした2日間でした。