0720 男鬼での葺き屋根

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今年も滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、廃村「男鬼(おおり)」での茅葺き民家保全のお手伝いにやって来ました。
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昨年差し茅で補修した反対側の屋根を、今度はめくって葺き替えます。

山城萱葺き屋根工事のヤマダさんの指導で、学生達自身が足場に上って屋根を葺いて行きます。
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適切な職人の助力が得られれば、素人でも建築工事に参加できるのも、茅葺きの大きな魅力のひとつです。

屋根裏では針受けも学生達がこなします。
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屋根裏で地面の上で、テッタイ仕事を率いるのはヤマダさんの新しいお弟子さん、ナカヤマさん。

今回葺き替えに用いた茅は、トタンを被せて葺き替え用の茅がいらなくなった、ご近所の茅葺き民家からの頂き物だそうですが、男鬼楽座では自ら茅場の再生にも取り組んでいます。
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こうして実際に自分で葺いてみると、「良い茅」とはどういうものか良くわかるようになります。茅を刈るモチベーションもきっと高まるとことでしょう。

里山での営みの再興を試みる、地に足の着いた取り組みに触れて楽しい一日だったのですが、帰り道で目にする雑木林は昨年以上にナラ枯れの被害が広がっていて、気持ちが暗くなってしまいました。
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地球温暖化とか酸性雨とか様々な要因が重なっているのでしょうが、本来生態系の中で木を伐る役割を与えられているはずの人間が、化石燃料に過度に依存して薪や炭として木を伐らなくなってしまい、森が年老いた木ばかりになってしまったことも、大きな要因の一つに思えます。
屋根を葺くために身近な草を刈ると、豊かな草原が生まれる茅葺きという仕組みを通すと、人の営みと他の生き物たちとの関わりがとても良く見えて来ます。
男鬼に蒔かれた種が、自然と人の暮らしが織り成す里山全体の再生へと育って行ってくれることを願いながら、帰路につきました。

0809 ため池と竪穴住居

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兵庫県立考古博物館ボランティアにより取り組まれている弥生時代の住居の復元に、ちょこっと顔を出して来ました。
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博物館のある東播地域は、日本有数の40,000 ! を超えるため池が独特の景観と自然を育んできました。
博物館のエントランスも今や希少種になってしまったオニバスが大きな葉を広げる池で、たくさんのトンボが飛び交っていました。

竪穴式住居の復元はボランティアの市民や学生等によって、全く業者の手を借りずに進められています。
材料の丸太や竹は近くの雑木林から伐り出して来たもの。葺く茅はため池に生えるヨシ。
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約2000年前、稲作が行われるようになった弥生時代には、すでにため池が造られていたといわれています。
ため池をめぐる人の営みと自然との関わりが、茅葺きの竪穴住居を介して甦って行けば素晴らしいことだと思います。

お知らせ 茅葺きシンポ@神戸

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「人のいとなみと田園景観〜茅葺き民家が『ゆたかさ』のシンボルに」というタイトルで、神戸市北区において茅葺きシンポジウムが開催されますので、お知らせいたします。
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港町の印象の強い神戸ですが、この建設年代が明らかな日本最古の民家「箱木千年家」も神戸にあります。明治以降の急速な街の発展を支えたのは、六甲山の北側に広がる豊かな北摂の農村地帯でした。

そして茅葺きのある農村での営みが、このススキ野原に巣をかけて暮らすカヤネズミ等、多くの生き物の命も支えていました。
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自然との共生が日々の暮らしに求められる現在、茅葺きの現代的な再評価を進めて来た齊木崇人、安藤邦廣、両先生の対談からは、新たな茅葺きの可能性を導き出してくれるのではないかと、個人的にもとても楽しみにしています。
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平成20年12月4日(木)10:00〜12:30
すずらんホール 大ホール (神戸市北区役所前)

【基調講演】「茅と民家と神戸の田園景観」
齊木崇人(神戸芸術工科大学学長)
/対談:安藤邦廣(筑波大学教授)

【パネルディスカッション】「なぜ今茅葺きなのか〜茅葺きの魅力について」
コーディネーター:齊木崇人(神戸芸術工科大学学長)
パネリスト:
上野弥智代(全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会事務局)
岡田孝久(八多町自治協議会副会長)
磨家孝昭(神戸市教育委員会文化財課主査)
塩澤実(茅葺き職人/茅葺屋代表)

【内田家イベント】「茅葺き屋根の補修の見学や体験イベント」

※ハガキ、FAX、Eメールのいずれかで、件名「茅葺きシンポシンポジウム」とし、住所、氏名、電話番号、参加人数を記入して、下記まで申込の上当日直接お越し下さい。

{問合せ}
〒651-1114 神戸市北区鈴蘭台西町1-25-1 北区まちづくり推進課「茅葺き」係
TEL:(078)593-1111(代) FAX:(078)593-1166
Eメール:kitaku@office.city.kobe.jp

フライヤーのpdfはこちら
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0327 神戸建築物語

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ようやく春の息吹が感じられるようになっていた季節に開催されたイベントについてご報告します。
神戸市では建築文化の魅力を引き出し、発信する機会として、講演会と見学会を組み合わせ地域や建物にまつわる物語を紐解いて行く、神戸建築物語を継続的に開催しています。
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「神戸に生きる茅葺建築」と題され3月27日に開催された第9回において、神戸芸術工科大学大学院助手の鎌田誠史先生と共に講師役を仰せつかり、行って参りました。

茅葺きについて現場での四方山話を中心に、基本的にくだけた話しか出来ない僕と違って、かっちりとした構成で茅葺きについて講義してくれた鎌田先生は、実は学生時代の同期だったかまやんです。
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同じ大学で同じ時期に同じ先生の指導を受けても、ずいぶん違う種類の人間になるものですね w

僕たちが学生の頃には、1,200棟とも言われていた神戸の茅葺き民家ですが、今では750棟を割り込みました。
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半分近くに減ったと見るか、まだ良く残っていると見るか・・・

参加者の皆さんからは、見学会を通して活発にご質問を頂くことができました。
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人と自然の織り成す里山のシンボルとして、茅葺き民家のある風景が広く神戸市民の財産として愛されるように、これからも自分に出来ることを考えて行きたいと、あらためて思う機会になりました。

0626 第1回茅葺きフォーラム@富山県・五箇山

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表題の集まりに参加するために、合掌造りで有名な五箇山の相倉(あいのくら)集落を訪ねて来ました。
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昨年まで毎年のシンポジウムを重ねて来た、㈶日本ナショナルトラストの全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会が、㈳日本茅葺き文化協会 と生まれ変わっての設立記念フォーラムです。「茅葺きの暮らしと生業」と題して開催されました。
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今回のテーマに「生業」とあるように、情緒的な話が目立った初期の頃に比べると、社会の中で茅葺きをどう活かして行くかという未来志向の話をたくさん聞くことが出来ました。

せっかく独立した法人格を得たことですから、今後は植物学や都市工学や農村経営学等々、様々な分野の専門団体と協調して、多様な切り口から茅葺きの可能性をさぐる機会を増やしてもらえると嬉しいです。

フォーラムの後は参加者同士お酒を酌み交わしながら場所を移しながら、夜更けまでの茅葺き談義。
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合掌造りの民宿に泊めて頂いた翌朝の、温かい朝のお膳は、袋入りのパンとパック牛乳という病院や施設の朝食が続いていた身には、しみじみと美味でした。

お味噌汁の匂いで目覚める朝の幸せ!

ところで相倉の集落を散策していると、屋根にぶらさがるハシゴが目につきました。
何に使うんでしょうね?
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2連梯子を伸ばしても合掌造りの棟には全然届きません。雪下ろしに上がるときのために、足りない分を設置してあるのでしょうか?
でも、夏の間は外しておかないと、屋根もハシゴも傷みそうですが・・・他に何か役割があるのでしょうか?