060823 旧南桑田郡の茅葺き

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 屋根からの眺め

かつて各地に出稼ぎして活躍していた、芸州屋根屋と呼ばれる広島の茅葺き職人さん達の記録をされている、マイミクの 青原さとし さんが出稼ぎ先の一つである亀岡に、調査のため訪ねて来られました。
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亀岡市南部の旧南桑田郡は、京都府と大阪市の県境=丹波と摂津の国境にあたる地域です。
美山の近所でもあるので、ご案内がてらに同行させて頂きました。

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自分とは立場の異なる方がヒアリングする内容は、とても興味深く勉強になります。

調査の結果はいずれ 青原 さんが記録映像へとまとめられて、発表されるのを楽しみに待たせて頂いていますが、僕個人の印象としては、亀岡盆地の南側では茅葺き職人と住人の方との関わり方が、我々の地元である北側とは随分異なる事が驚きでした。

060930 初秋

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 屋根からの眺め里山

美山の現場の途中ですが工程を調整してもらって、神戸で一週間作業して来ました。
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藍那の里山では、草刈りを続けて来た場所でススキの尾花が咲き始めています。
いよいよ茅場に銀の波がうねる季節となってきました。

葺き替えの途中で神戸に行って来たのは、ストックしてある茅材のうち他所の倉庫にご好意で置かせて頂いていた分を、搬出する期限が迫っていたためです。
茅材はとにかくかさばるうえ湿気や水濡れに弱いので、保管のための場所を確保するのに苦労させられます。

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倉庫に山積みの茅を運び出していると、こんなものが出て来ました。
鶏卵の半分くらいの卵の殻。そしてヘビの抜け殻。

やがて茅のあいだからこんなものがたくさん出て来ました。
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生まれて間もないアオダイショウの子供たち。
まだら模様がマムシに似ているせいで、間違えて殺されてしまう事も多いのですが、体形が細めだし頭部を隠して守ろうとするので、落ち着いて見れば簡単に見分けられます。
ネズミを獲りに茅葺きの屋根裏で暮らしているおっ母さん達は、農家の守り神として昔は大切にされていたものですが・・・

10年以上茅刈りを続けて、ニュータウンの道路法面で育てている茅場の様子も見て来ました。
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今年は少し生育が悪いかなあ。

ススキの根元にはナンバンギセルの可愛らしい花が。
変な名前ですが、万葉集にも詠われた在来種だそうです。
ススキの地下茎に寄生するこの花は、元気なススキ野原がなければ咲く事が出来ません。
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茅刈りをすることによってこんな貴重な植物が、団地の中であっても群生する自然環境が育まれています。

061122 湖北の茅葺きの里

投稿日: 7件のコメントカテゴリー: トタン考屋根からの眺め

滋賀県マキノ町の在原という茅葺きの集落を訪ねて来ました。
扇状地にある市街地から谷を遡り山へ分け入った、いわゆる隠れ里と呼ばれるような集落です。

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滋賀の茅葺きというとヨシで葺かれたものをイメージされるかもしれませんが、湖岸を離れた場所ではススキが使われるの普通で、在原の屋根もススキで葺かれています。
ヨシはとても重量があるので、船で運んで行ける場所でなければ使いづらかったのかもしれません。

ここを訪ねた目的のひとつは、サガラのターレットトラックの回収です。
ターレットトラックとは、魚市場などでトロ箱をいっぱい積んで構内を走り回ったりしている、アレです。
生来インドア派のようですが、茅運びにも活躍してくれたら良いのですが・・・
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背後の民家の屋根は、初夏にヤマダさんの山城萱葺屋根工事によって、手前の小間を葺き換えられています。
サガラはそのとき在原に泊まり込みで手伝っていました。

さらにその奥の民家は、マイミクのふくい さんがセルフビルドで廃屋を一旦基礎まで解体してから、再建中のものです。もちろん、茅葺き屋根もセルフで。すごい。
今回はお留守でしたが。

もともと在原には職人さんが入ることはあまりなく、ごく最近まで住人の方が茅を集めて自ら葺くのが普通だったようです。
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今でも雪の季節を前にして、あたりまえにススキが刈り集められ、軒下で干されています。

それは、積雪の多い土地で雪囲いとしての需要があるからかもしれません。
ビニールトタンの雪囲いに比べて茅束の雪囲いは明るさで劣るものの、断熱性能に優れてすきま風も防ぐので暖かいそうで、2つを組み合わせると具合が良いようです。
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雪囲いにするために茅を刈るので、その茅を使って屋根のメンテナンスもする。と、いうのは、茅葺きを守るために茅を刈る、というのに比べて合理的で健全な気がします。

とは言うものの、茅刈りは結構な肉体労働です。ましてや、職人によるケアが一般的ではないまま高齢化が進むと、やはり屋根の維持は難しくなってきて、徐々にトタンが被せられてもいるようです。
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丁度トタンを被せるための下地が組まれた屋根がありました。
トタン板と茅葺き屋根のあいだには隙間があることが判ります。この隙間があるので、トタンを被せても茅屋根が蒸れたりすることはありませんが、あまり隙間が大きいとオリジナルの屋根の面影を失ってしまうことになります。

同じ入母屋の茅葺きでも在原の屋根は、美山の屋根とも神戸の屋根とも異なります。
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ミノコの無い直線的なケラバ、小さめのハフ、屋根勾配より緩やかな低い棟、など。

しかし、プレスされた瓦型のトタンで包まれると、そのような個性は失われてしまいます。
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在原には庇の無い葺き下しの茅葺き屋根が多いのも特徴です。
僕は茅葺き屋根に庇が付けられるようになったことは、ひょっとするとトタンを被せられることと同じくらい大きな改造だったかも知れないと考えています。
「囲炉裏を焚かなくなったから、茅葺きが長持ちしなくなった」という説が一般的ですが、庇が付けられたことはそれ以上に茅葺きの寿命に影響しているかも知れないからです。が、それについての話しはいずれまた改めて。

061228 寒中ツーリング

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 屋根からの眺め

美山では冬支度がすっかり整っていて、茅刈りもすでに済ませられていました。
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雪の多い日本海側では、まだススキが枯れきっていない年内に早めの茅刈りをするので、刈ったススキは雪で倒されないように束にして立てて、春まで風に曝して乾かします。

しかし、今年はまだ雪らしい雪は降っていない模様。

自家用車は武相荘の現場に置いて来たので、神戸の実家には単車で帰省することに。
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美山町周辺は、景色良く、道広く、交通量少ない、関西有数のツーリングスポットなのですが、そこに暮らしながら休みの日=雨の日という暮らしなので、なかなか単車に乗る機会がありません。

以前、夏の夜に単車を走らせたら、体中が虫だらけになってひどい目にあってしまったし・・・
そもそも、景色が見えないことには走っても楽しくないですしね。

夕方篠山を過ぎたあたりから急激に気温が下がって来ました。
ようやく、本格的な冬の到来でしょうか。
美山を出るのが一日遅かったら、雪で動きがとれなくなっていたかもしれません。

070203 香港行

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 屋根からの眺め

突然ですが、少し香港に行って来ました。

'05年の4月と10月に当地に新しく整備された日本(風)庭園で四阿の屋根を葺きました。
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その様子を見に行くついでに、まあ、旅行です。
屋根屋仲間で、たまには、と。

10月に行った段階で実は既に4月に葺いた屋根は随分傷んでいました。
これはその時の写真です。
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雨期のあいだ屋根はほとんど乾く間が無いような有様で、高温多湿な環境では茅を引き抜いてみると、雨水が染み込んでいない屋根の奥まで蒸れてカビが生えていました。

今回訪ねてみたところ、さいわい心配していたほど傷んだ様子は見られませんでした。
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南国の茅葺きというと、茅の葉を屋根の外に出してバサバサとした「逆葺き」を思い浮かべます。
香港は他の多くの都市国家と同様に木造建築が禁止されて来ていたので、地元の茅葺きを既に見る事は出来ないのですが、周辺の中国で見られるのはやはりそのような南国風の茅葺きだそうです。

一般に「逆葺き」は日本で多く見られる「真葺き」より耐久性に劣るとされています。
ただ葺く手間は真葺きほどかからないので、簡単に葺いて頻繁に葺き替えるか、手間をかけて長持ちさせるか、かかるコストは同じようなものです。
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手間をかけても茅葺きが長持ちしない環境ならば、逆葺きが選ばれるのは賢明で自然なことでしょう。
この現場では材料のヨシや竹も全て日本から持ち込んでいました。僕はあくまでも手伝いに呼ばれた立場でしたが、いつか地元の材料と技術を用いて日本風の屋根になるような葺き方も、試してみたいものだと思っています。

四阿は九龍サイドの志蓮浄苑という仏教寺院が管理し、一般に無料で公開している庭園にあります。
香港に行かれた際には時間があれば訪ねてみて下さい。
香港まで行ってわざわざ日本庭園を訪ねるのもどうかとは思いますが・・・園内の中華精進料理レストランはなかなかだと思います

以下、茅葺きとは無関係ですが。

香港に着いたら、何はともあれまず、マンゴー。
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「糖朝」は確かに美味しいけれどいつも混み合っているので、庶民的な「許留山」が落ち着きます。

古い香港はどんどん取り壊されて新しくなりつつあります。
仕事をさせてもらったお寺も、啓徳に空港があった頃にはスラムが広がっていたのを、再開発して建てられています。
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上のような町工場や住宅や老人ホームが積み重なった「香港らしい」ビルは次第に少なくなって来て、ガラス張りのビルが増えて来ています。
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ガラスが金色だったりするのが「香港らしい」とも言えるかもしれませんが。

香港名物の高層マンションのデザインも洒落たものが増えて来ていました。
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穴があいたりしているのが「香港らしい」とも言えるかもしれませんが。

でも、相変わらず足場は竹で組まれています。
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茅葺きの現場でも地元の足場屋さんが竹で組んでくれました。ちょっと恐いこともありましたが・・・

香港と言えば「茶餐廳」
何それ?と言う方は「レビュー」でもお薦めした香港無印美食をご参照願います。
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煮出した(ような)ミルクティーと「サイトー」で一服。

'05年に仕事をしていた時には、毎晩新メニューを開拓するのが楽しみでした。
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何を頼んでも美味しかったので。

最近、香港で気に入っているのは郊外や離島の漁村です。
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明るくのんびりとした光や空気は、熱帯ではなく「亜熱帯」加減が良い感じです。

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もちろん、海鮮料理も美味しいですし。

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しかし、残念ながらこいつは試せませんでした。
食うのかコレ?食うのか、そうか。
日本では天然記念物サマだけれどね。
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お店で売られているものはたいがい平気で食べますけれど、有明海沿岸の魚屋さんで、ポリ袋に詰められたイソギンチャクを見て以来の驚きでした。

三度の食事が美味しいのに、合間に甜品(スウィーツ)もこなさなければならないので忙しい。
マンゴープリンの他にも牛乳プリンや杏仁豆腐等々。
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喫茶店のフルーツポンチみたいなものでも、缶詰ではないフレッシュフルーツで作るのでとても美味しいです。

今回初めての人も大勢いたし、定番の観光露天商を押さえておくのも悪くはないのですが・・・
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やはり市場は地元向けが楽しいです。
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果物は検疫があって持ち帰れないし、せっせと食べなければ。

と、いう訳で屋根の様子見にかこつけて、食べてばかりの香港行。
最後まで読んで下さった方はありがとうございます。お疲れさまでした。
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香港はお正月を目前にして、街中に飾りつけがされていました。
来年は猪(ブタ)年です。

それにしても、お正月を西暦(キリスト教歴)で祝う日本は、つくづく不思議な国だと思う。
別に善し悪しでは無く。