0527 菖蒲(受け継ぐ)

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@小松旧米谷家

久し振りの快晴、雨除けのシートは取っ払ってしまいました。
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葺きあがって頭がつかえるようになれば、いずれ外さなければならないものですし。

現場の周りでは菖蒲の花が盛りを迎えています。
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小満を過ぎて初夏の日差しに伸びきった緑の映える季節です。

菖蒲の他にもたくさんの花々に彩られています。
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紫欄に九輪草・・・手入れをされているのは、2棟の茅葺き民家の面倒も見ておられる I さんです。

昼休憩に弁当を使うのに囲炉裏端をお借りしながら、茅葺き民家と植物と過ごす日々の話しを聞かせて頂いています。
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「暮らした人たちの想いが詰まった建物、移築された後も変わらず育てて行きたい」「花は咲かすのではなく、咲いてくれるのです」
先人と自然の営みへの敬意に満ちた言葉が胸に沁みます。

0531 ゴモクの行方

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@小松旧米谷家

また、雨です。
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降ったり止んだり・・・

スギゴケは喜んでいるみたいですけれど。
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あまり雨に降られると屋根屋の懐は干上がってしまいます。
毎年この季節に同じことをぼやいていますが。遠征泊まり込みだと尚辛いです。

それでも止み間、晴れ間に仕事を進めて、ついに下げ葺きは完了。
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あとは棟に合わせて差し茅で馴染ませます。

ところでこの現場で発生した古茅などの茅くずは、I さんが用意して下さった林の中の空き地に積んでおいたのですが、今日の夕方近所のおじさん達がその一部を取りに来られました。
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菊栽培の土壌として活用されるそうです。きれいに菊の花を咲かせるために、綿密な計画のもと液肥を与える菊栽培では、茅くずが最適なのだそうです。
こうして茅くずが建築廃材になるのではなく、茅葺きの副産物として喜ばれるのはこちらとしても嬉しいことです。

0603 縄の手繰り方(ロープワーク)

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@小松旧米谷家

また雨降りですが、竣工間近で待機もしていられないので、富山県のスギヤマさんの現場まで手伝いに来ました。
こちらの現場は素屋根で覆われているので雨の日に人材を振り向けておいて、雨が上がったら今度は小松に来てもらおうという魂胆です。
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北陸には竹が少ないからでしょうか。太い丸太同士を縄で括った屋根下地なので、茅葺き屋根の小屋組の構造が良くわかると思います。

茅を屋根に固定する押さえ竹を、屋根裏のレン(垂木)に縫い付けるのも針金ではなく縄を使っています。
針金だとトックリ結びで締めることができますが、滑りの悪い縄はそうはいかないので、男結びでとめるためにまず2重巻きにする必要があります。
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以下、その方法です。

まず、屋根用の針に縄を通してレンの際に差し、屋根裏の人に掛け替えてもらって縄をレンに巻くのは針金と同じ。
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一回巻いただけだの縄を引っ張っても押さえ竹を締めつけることができないので、2回巻きにします。

長い方の縄のヨリを緩めて、短い方の縄の先を挟みます。
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短い方の縄を少しずつ引っ張ると、2本の縄がレンに向かって屋根に吸い込まれて行くことになります。
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この時、縄が絡まると後で上手く締まらないので、左手を添えて2本の縄が平行になるようにしてやります。

引っ張り続けると挟んだ縄の先がレンを廻って戻って来ます。
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挟んでいた短い縄を抜けば、レンに縄を2重巻きに出来ました。

2本の縄それぞれを右手と左手に持って引っ張りつつ、竹を足で踏んで締め付けます
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締め付けたまま男結びで止めてしまいます。
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僕の修業時代には美山でも縄だけを使っていました。懐かしいです。
価格的に針金の方がはるかに安価で、施工性も良いので最近では針金ばかりになっています。
冬の寒い時期にワラ縄を使うと、ワラに皮脂を奪われてあかぎれになったりしましたが、それでも個人的には縄の方が好きです。

0605 竣工

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@小松旧米谷家

雨上がりの池に睡蓮の花が咲きました。
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富山の現場からスギヤマさん達にも応援に駆けつけてもらって仕上げに入ります。

差し茅で棟に馴染ませたら一気に刈り落として完成です。
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後半雨にたたられたりしましたが、おかげさまで何とか工期内に仕上げることができました。
泊まりの仕事は経費の計算など胃の痛くなることも多いのですが、知らない土地に縁が出来るのは楽しいことでもあります。今回も新たな人や屋根との出会いに恵まれました。