0427 刈込み/八重桜

投稿日: 6件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@丹後旧永島家

旧永島家住宅の周りはすっかり葉桜となり、今は八重桜が見事なまでに満開です。
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子供の頃は何だかけばけばしく思えて八重桜はそれほど好きではありませんでしたが、最近では年のせいなのかこの味わいがわかるようになって来たような気がします。

今回の現場では人数をかけて、表裏の大間(平側)と東面の小間(妻側)の三面をほぼ同時に葺いて来ましたが、葺き上がったところで少数体制に移行したため、刈込みは順番に行います。
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まず、両方のケラバを落として(決めて)から、表の大間を上から順に仕上げて行きます。

日が長くなって夕方遅くまで作業できる一方、紫外線量が増えて疲れも溜まるので、昼食後には昼寝が欠かせません。
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寝ておかないと、日の暮れ近くに体が動かなくなりますので。
そのような意味では、昼寝も仕事のうち。

表側が仕上がり続いて裏へとまわります。
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ケラバが決まると屋根のエッジが際立つようになり、スカッとしますね。

0428 刈込み/宮津の魚

投稿日: 3件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@丹後旧永島家

足場の丸太は二つ折りにした縄で押さえ竹から吊ってあり、屋根を棟の方から刈込み仕上げて行くに連れて外し、縄も外から二つ折りにした一方を引き抜いて外します。
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オギは丈夫なだけに、刈込むのは骨が折れます。

職人仲間では「粘る」と表現していますが、表面が水をはじく程堅いので、良く研いでおかなければハサミがかからず、無理に切ろうとすると切り口が潰れてしまいます。
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屋根は葺いて上がる時にかたちを決めておかないと、ハサミで始末をつけようとしても出来ることは限られているということです。
そもそも貴重な茅の、それも丈夫な根元をあまり刈り取ってしまっては、もったいないですし。

この現場もそろそろ終盤ですが、宮津滞在で嬉しかったのはやはり何といっても、魚が美味い!
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桜鯛の一夜干し、ほたるいかのかき揚げ、旬の蛤みたいなアサリの汁、朝採りのもづく、さよりの握り・・・
しかも、車なのでお酒を頼まないと、お勘定のあまりの安さにも驚かされます。

だからといって毎晩外食に出歩いていた訳では無くて、普段はつつましやかに自炊ですが。
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ただし、これは朝食。
料理好きな後輩達に恵まれて幸せです。

0430 竣工

投稿日: 6件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@丹後旧永島家

最後に軒の裏表を刈り揃えて完成です。
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美山のような寄せ棟型の入母屋だと、一般に小間(妻側)の屋根の方が大間(平側)の屋根よりも勾配が急なのですが、切り妻型の入母屋であるせいか、この屋根は小間の方が大間よりも勾配が緩かったために、角を葺いて上がる時に勘が狂って苦労しました。
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小間の方が緩やかな入母屋の茅葺き屋根は、福知山盆地から丹後にかけて普通に見られます。おそらく屋根下地の組み方と関係しているのではないかと思います。

天橋立を望む旧永島家住宅の屋根葺き替え、無事終了しました。
手前の小間は一昨年の春に差し茅で修理しているので、これでひとまず四面全てのメンテナンスが済んだことになります。
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せっかくの良い茅葺き民家なのに、余り人が来ないと愚痴をこぼしてしまいましたが、魚屋のおじさんに「資料館の屋根を葺いとう人やね」と声をかけられたり、地元の人達は結構意識して下さっていました。
定期的なメンテナンスのためにも、何とかその興味を汲み上げて、人の集う場所にして頂けたらと願わずにはおれません。

070501 丹後の笹葺き

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: トタン考茅葺き現場日誌@丹後旧永島家

蚕室として利用する中2階への通風のために、茅屋根の軒を切り上げて窓を設け、妻側の壁を大きく曝す旧永島家住宅の造りは、丹後の山村集落で普通に見られる民家の造りです。
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ただオリジナルの丹後の民家は、茅材としてススキやヨシではなくササを用いる、笹葺きが一般的だったようです。

宮津では笹葺き文化を継承し里山の再興を目指そうと、立命館大学経営学部学生有志や地元NPO、森林組合などが「笹葺きパートナーズ」という活動を続けていて、本ブログに度々登場してもらっているヤマダさんも中心的な役割で活躍されているため、僕も何度かお手伝いにお邪魔したことがありました。
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今回せっかく宮津まで来ているので、帰る前に活動拠点として笹葺きの屋根を葺いている、上世屋という集落の様子を見に行って来ました。

毎年笹刈りをして収穫した分だけ葺き進めているのですが、今年の秋の収穫分でいよいよ葺き収まりそうなくらいに捗っていました。
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表面に笹の葉が密集していることからわかるように、ここで笹は元を上にして葉先を外に出した逆葺きで葺かれています。
逆葺きの笹葺きは、今ではここ丹後と能登にわずか数軒ずつが残っているだけの、貴重な技術となってしまいました。

しかし実は笹はつい最近まで、丹後から由良川水系に沿った福知山、綾部あたりまで、広く茅材として用いられていました。
この写真は由良川周辺に大きな被害の出た記憶も新しい、2004年の台風23号の直後に撮ったもので、強風によって「缶詰」屋根のトタンが飛ばされてしまったところ、中から笹葺きの屋根が現れています。
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定期的な葺き替えの必要な茅葺き屋根は、たとえ重要文化財であっても、わずか数十年前の屋根の実態を知ることすら難しくなってしまいます。しかし、トタンを被せられている屋根では、内部の茅葺き屋根は被せられた当時のものが長く保存されることになります。カンヅメ屋根はかつて茅葺きが当たり前であった時代の、地域毎の特色を活かした豊かな材料や技術を保存してくれてもいるのです。

トタンを被せられた茅葺き民家について、以前「茅葺きに厳しい時代を乗り切り次代に繋ぐための文字通りカンヅメとして」 「人の暮らしとともに変遷する民家のある時代を象徴するスタイルとして」もっと評価するべきだと書きましたが、歴史資料としても学ぶべきことの多い、大切なものだと思っています。

ところで上世屋を訪ねた目的は、実は笹葺きの様子を見るだけではなく、この棚田を見ておきたかったからでもあります。
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笹葺きのお手伝いに来るときは常に晩秋だったのですが、見事な棚田に水を張ったところを是非一度見ておきたかったもので。
ところどころ休耕田も目につくようにはなっていましたが、文化としての茅葺き屋根は周りの里山と一体としてでなくては成立しませんから、笹葺き再興の取り組みがいずれはこの棚田を活かしてくれるようになることも期待してしまいます。