1221 棟の解体

投稿日: 6件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

歪んだ現状の棟は、屋根を葺いて行くにあたっての目標を過たすので、撤去してしまうことにしました。
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正しい下地の棟木とスミレンの位置を確認しておかないと、最後になってとんでもないことにもなりかねませんので。

今年になってから鎌倉や茨城で何回も見て来た、瓦で収めたタイプの関東の棟です。
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何故か最近この棟に縁があります。

でも、何となく感じが違うな、と思っていたら、瓦の下の養生に引かれたガルバリウム板を剥がすと、潰したヨシが積まれていました。
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おそらく琵琶湖産のヨシで、屋根全体に差し茅されていたヨシと同じものです。
つまり差し茅の際に棟も傷んでいたので、どうやら滋賀の職人さんによって、関東風に似せて積み直されていたようです。

正しい葺き止めの位置を確認して、あらためて安心して屋根葺きに専念できるようになりました。
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武相荘もそろそろ冬枯れの景色となりつつあります。
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それでもなお、毎日尽きることなく落ち葉が舞い落ちて来ます。

葺きかけの屋根にもすぐに積もってしまいます。
乾いているから良いようなものの、大量の濡れ落ち葉が張り付いたいりすれば、もちろん屋根の寿命に良いことはありません。
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まあ、でも、葺いて行くあいだに関しては、雪が積もるよりはずっとましですけれど。
美山なら例年この時期になると、雪かきしながらの屋根葺きを覚悟しなければならなくなりますので。
今年はまだ一度も屋根に霜も下りていないし、暖かいなあ。

1224 軒のかたちを変える

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

今回の葺き替えでは隣接棟の2階増築によって、一部の軒に改修が必要となっていました。
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増築された2階の壁が茅葺き屋根の軒に接してしまっているため、雨仕舞いが不自然なことになってしまっています。

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また、このように軒先に体を入れて作業するスペースが全くないと、そもそも葺き換えること自体ができません。

屋根の形状を変更するためには、それに合わせて下地を作り直す必要があります。
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破断したスミレンの補修に合わせて、問題の部分の軒下地にも手を入れます。

隣接棟に接する部分の軒を切り上げて、空いたスペースに雨水を受ける樋を設置します。
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簡単な下地補修なら我々屋根屋で済ませますが、このような作業には大工さんの手を借ります。

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茅葺きの軒下地も樋の高さに合わせて変更します。

さらに板金屋さんに仕上げてもらって、新しい軒を付け直します。
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これで茅葺き屋根からの軒垂れが、手前の下野庇に速やかに排出されるようになりました。

隣接棟とのあいだに充分な隙間を設けて、新しい軒が取り付けれれました。
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茅葺屋根は時間が経つとその形状が変わって行きますので、それを見越して後々問題が生じることの無いようなデザインにしておかなければなりません。

1227 葺き上げ工程

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

最後に残っていた古屋根も全て取り払い、あとは棟まで葺き上がって行くばかりです。
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日々ひと針ずつヨシを並べては止める作業を繰り返して、ここまで葺き上がって来ました。
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ヨシの葺き上げ工程は藍那里山公園の交流館の現場で詳しくご紹介していますが、あらためてざっとした流れを。

ヨシは滑りやすい素材なので、滑り止めに板を立ててから並べます。
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真っすぐに並べられるように捌かなければいけないのはもちろんですが、ヨシを屋根に置く勾配が立ちすぎたり寝すぎたりせず適切な勾配を保つように、長さや太さの微妙に異なるヨシを使い分けていくのが難しいところです。
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丸太で仮止めしてから板を外し、叩き揃えて屋根のかたちに整えます。
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押さえの竹を屋根裏に入った人と共同作業で、下地の垂木に縫い止めて茅を固定します。
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この作業を繰り返して葺き上がって行きます。

本日で年内の作業はひとまず終了です。
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しっかりと雨養生して現場の掃除をしてから、お正月の準備に関西に帰りました。

0107 仕事初め

投稿日: 8件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

(遅くなりましたが)
新年明けましておめでとうございます。

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今年はシーズンにはウミガメの上がる海南の浜で、随分久し振りに初日の出を拝んできました。

さて、武相荘の現場初めは、昨日いきなりの嵐で水を差されてしまいました。
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他の現場の都合で2人抜けて1人加わり、少しチーム編成が変わりましたが、今日から新しい年の仕事が始まりました。

葺き上げもそろそろ後半に差し掛かっています。
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今年も事故など無いようにして、良い屋根を葺いて行きたいものです。

0110 古茅で庭つくり

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

年が明けて、ようやく武相荘の雑木林も裸となりました。
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すっかり葉を落とした林の枝越しに見る、冬晴れの空の青の清々しさ。

武相荘には葺き替えで生じた古茅を、堆肥として活用する畑はもうありません。
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古茅は丁稚のワカモノたちが、茅運びの合間を縫ってカブトムシの幼虫と一緒に、竹薮にきれいに敷きつめました。

個人的な好みなのですが、人間が型にはめたような作為的な公園には落ち着けない一方、全くの成り行きに任せたままの自然には「荒んだ」印象を覚えてしまいます。
自然とともにある人の営みが、積み重ねられてできたような風景が好きです。

僕としてはこの竹薮は、古茅=建築廃材(ゴミ)が捨てられる前より「美しく」なったと感じるのですが、いかがなものでしょうか。

さて、葺き上げ作業の方はまもなく終了の見込みです。
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毎度のことながら棟まで葺き上がってみると、毎日少しずつの作業の積み重ねでこれだけ大きなものが出来たものだと、あらためて我ながら感心してしまいます。
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作業は終盤のヤマ、棟収めへと続きます。