カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築
070713 手刻み
大工さんの刻み場では、砂木の家の部材の刻みが始まっています。
プレカットではなく、ひとつひとつ、大工さんが手で刻んで加工されている様子は、思わず見とれてしまう職人の仕事です。
大まかなプランが決まってから、土地の造成やら何やら手間取ったせいで、実際に細かな寸法が決まるまで1年あまりが過ぎてしまいました。
図らずしも部材には、充分すぎるほどの乾燥期間を与えられる事となりました。
刻み場にいつまでも積み上げておく事になって、大工さんたちにはご迷惑をおかけしてしまいましたが。
棟梁のサカイさんが墨をつけておられます。
三次元の収まりを頭の中で整理しながら、やり直しのきかない線をためらわずに引いて行く集中力。
手前に積んである切り欠きの多い材は、神戸で解体された家の棟木だったのを、友人たちがわざわざ届けてくれたものです。
刻み直されて、砂木の家で再び使われます。
070726 土台
基礎の上に土台が回されました。
土台にはヒバを使っています。
北東北や北陸では建材として重宝されるヒバですが、削ったときの独特の匂いが強いせいか、大工さんのお話しでは京都では材の品目として流通しておらず、立米売りのヒノキの山に、天然生えのものが混じっているくらいだそうです。
シラス干しに混じっている小さなタコとかカニみたいな感じでしょうか。
ヒバはヒノキの異物扱いなので、ヒバが多く混じっているヒノキのひと山は安くなるのだとか。
大工さんには早い時期からなるべくヒバ混じりのヒノキを買うようにしてもらって、土台用のヒバを貯めておいてもらいました。相対的にどこかのお宅に使われたヒノキも安く買えた訳ですから、結果的に上手く収まったと勝手に喜んでいます。
大工さんの刻み場にはヒバを貯め込む事になって、迷惑をかけてしまいましたが・・・
土台の上に置いてある板は、茅葺きの棟収めに使うウマノリを作った際の端材をスライスしたものです。
茅葺き屋根のてっぺんで風雨に曝されるウマノリは、堅く水に強いクリの木で作ります。
水廻りとなっている北側下屋部分の土台で、基礎とのあいだに挟んで土台を浮かせるパッキンとして使いました。
刻み場では大工さんたちが部材の仕上げにかかっておられます。
スギ、ヒノキ、アカマツ・・・適所に使い分けられた材が、ノミとカンナを使う大工さんの手によって柱や梁に姿を変えて行くのは、何度見ても不思議な風景です。
070730 上棟前夜/アプローチの石垣
「何としても7月中に棟上げしておきたい」という大工さんの気合いが叶って、明日大安吉日の棟上げに備えて材が組まれ始めています。
二次元の図面からついに立体に立ち上がって来るのを見ると、感慨もひとしおです。
無事に屋根が収まるかどうか、不安も立ち上がって来ますが・・・
後回しにされていたアプローチの整備が、棟上げのためにレッカーを据える地行と絡めて、一部行われました。
この石垣は既に孕んで崩れかけていたので、いずれにせよ積み直す必要があったのですが、石垣も茅葺きもこのようなプロの手によらない、かつての「百姓の百の技のひとつ」として積まれたであろうもの方が、現在ではある意味で却って貴重な技となってしまっているような気がします。
ここでもプロの石屋さんに頼むのは大層ですし、かといって自分で積むことも出来ず、頼むあても無く手をつけるのを躊躇していたのですが、バックホーのオペレーターのおじさんがあっさりと(スロープの部分)積んでくれました。
ユンボが通れるくらい、結構しっかりしています。
組み立てを待つ柱のほぞ穴。
金物を用いない在来技法の継手を見るにつけ、あらためて大工さんの技能に感心させられます。
建前が終わるまでのひとときだけしか見れませんが、トーテムポールのようでかわいらしい表情だと思います。
070731 建前
美山では随分と久し振りに目にする快晴の青空の下、大工さんたちが息を合わせて振るうカケヤの音が響いています。
施主の普段の行いはあまり感心されない筈なのですが、大工さんたちの心がけが良かったおかげでしょう。
皆さんありがとうございます。お世話様でした。
僕は現場のお盆前進行が押しているので、ちょっと覗きに来ただけでしたが。もっとも施主なんか居ても、うろうろするだけだったでしょうけれども。
夕方には棟札、墨壷、差金にお神酒、ご洗米、盛塩を供えて、大工さんに上棟式を取り仕切って頂きました。
とは言っても餅撒きは無し。近所に子供も少ないし、すぐ横が谷川で危ないですし。
でもご近所の方が次々とお祝いを持って来て下さり、夜にお礼のご挨拶にまわった際には「木槌の音が良かった、良えもんやなあ」とも言って下さいました。
基本的に金物は使わず、大工さんの手刻みによる材を組み合わせて建てられています。
僕が大工さんに示したのは図面と模型、そして予算だけでなのですが、要所には手間のかかる車知(シャチ)栓継ぎで、松材の長物(チョウモン/差物)が組まれています。
贅を尽くした旦那仕事ではなく、はっきり言ってしまうとローコスト住宅なのですが、押さえて置くべきところからは一切手を抜かないという大工さんの姿勢を示して頂いていると思っています。
まあ、予算は限られているのでその分抜くところは抜きますが。
一般的なローコスト住宅とは、多分そのあたりのバランスが随分違うのではないかと思います。
さて、いよいよ屋根を葺かないことには、大工さんも左官屋さんも仕事を進められなくなりました。
屋根屋の段取りが悪くて申し訳ないです。胃が痛い・・・
あと、この現場を使っての「カヤマル'07」企画中です。
こちらも実施の詰めが遅れて、未だにきちんと告知できずにいますが。
詳細が決まり次第に本ブログでも参加を募りますので、よろしくお願い致します。