070927 壁土が来ました

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

夏のあいだに頼まれていた仕事を片付けて、自宅の屋根葺きに戻ってきました。
屋根を葺き出す前に、下地に使った縄を濡らさ無いように屋根の養生をして、ようやく雨ざらしの状態を脱しました。
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本格的な作業開始に先立って、まず足場を組みます。
茅葺きの足場は、軒の高さに合わせて微妙な調整が必要なため、昔ながらの丸太と番線の足場が具合が良いのです。

足場を組んでいると、左官屋さんが壁に塗る土を持って来られました。
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2tダンプ一杯の土・・・小さいながらも家一軒の壁を塗るのに、多いと言えば多いような、少ないと言えば少ないような。素人には判りませんね。

壁土は左官屋さんが土手に積んだ上に水を貯めて、シートで包んで寝かせておきます。
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途中に何度か切り返す必要があり、その際に藁スサを足す事になるのですが、それは茅屋根を刈り揃えた切り屑で賄えたらと面白いかな、と思っています。

070928 下地組み

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足場が組まれると、「大工さんの建て方モード」から、「屋根葺きモード」へ現場が切り替わったような気がします。
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この現場では体験会「カヤマル」も開催することですし、安全面に配慮した広めの足場を組んでおきました。

足場が出来れば、下地の竹を組んで行きます。
緩まないようにしっかりと結わえて行くと、屋根カゴと呼ばれる下地はいかにも丈夫そうになりますが、この横竹は構造材としては最終的にはあまり機能していません。
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茅を並べてから茅を止めるホコダケ(茅押さえの竹)をレン(垂木)に締めつければ、あいだに挟まれた下地の横竹は緩んでしまうことも少なく無く、また、挟まれた茅全体の摩擦係数とホコダケで「総持ち」になっている茅屋根の構造上、緩んでも特に問題は無いのです。
下地の横竹をしっかりと結わえるのは、シートの上げ下げや下地工事の期間中、足場として使う際の安全性と、屋根裏から見た時の美しさに対する配慮です。
純粋な機能としては、横竹は並べた茅が屋根裏にこぼれ落ちて来ないように、そこに「ただあれば」良いものなので。

下地ができれば、軒を一番下で支える「編み付け」
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軒を支えるために丈夫で、かつ縁側から見上げた時に目に入る場所なので、化粧の意味もあり真っ直ぐできれいな材を使います。今回はヨシを使っています。
麻を栽培していた頃には、麻殻(オガラ)を有効利用していたりもしたようですが、ヨシのように光沢のある材料を用いた方が、縁先は明るくなります。

071003 軒付け

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自宅の前には川から引き込まれた水が流れています。田んぼに入れるための水路ですが、谷に沿って伸びる砂木の集落の家々の前を通る際に、野菜を洗ったり生活用水としても使われているので、稲刈りが終わったあとも水が止められることはありません。
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茅葺きはとにかく汚れる仕事なので、現場に手や顔を洗えるきれいな水が流れていると助かります。
今朝は、水路に咲くミゾソバの花びらが浮いていました。

さて、編み付けの上には稲ワラを並べて、下地に対して角度を稼いで行きます。
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藁の上には古茅の「シン」を並べて、さらに角度を稼ぎます。
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砂木の家は新築なので古屋根を解体した古茅は無いのですが、茅葺き屋根の軒裏に材料の違いで生じる縞模様が好きなので、他所の現場で畑に還されようとしていた古茅を頂いて来ておいて、縁側の前に持ってきてみました。

角度を稼ぐために並べた短い切り茅の上に、長く丈夫な茅を選んで並べて、竹で押さえます。
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カヤマル当日までに、ぐるりと軒を付けておいてしまいたいので頑張っています。
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カヤマルでは参加者の方に「葺く」体験もしていただくのですが、屋根の要となる軒付けは難し過ぎて手を出してもらえる工程がありません。あらかじめ現場をカヤマル仕様にしつらえておくことで、カヤマルの時に参加者の方々に積極的に関わって頂けるようになるのです。

カヤマルは、当日はもちろん事前の準備から事後のケアまで、仲間の職人たちが支えてくれているからこそ、中身の濃い体験会として続けて来ることができました。

071107 風破の仮付け/ある牡鹿の死

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カヤマルの応対やら何やら色々あって後回しになっていた、「コムネ」と呼ばれる入母屋屋根の風破の部分の下地を組みました。
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2本1組にレンを組んだ上に、「ネズミ」と呼ばれる細い丸太を乗せます。風破板の天辺をこのネズミの端に釘打ちしてぶら下げるので、スミレンの上に丸太を立てて支え、ネズミの端の高さを調整して破風板の大きさを決定します。

破風を設置した時に小間の下地とのあいだに、茅を葺き詰めるすきまがちょうど残るように、棟木とネズミの長さを決めて切断します。
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先日解体した茅葺き屋根に取り付けられていた破風板を、屋根全体のバランスを見るために仮に取り付けてみました。
もう少し小さくても良いかなあ・・・

ところで、今朝仕事を始めようと足場に上がると、裏山で大きな生き物が暴れていました。栗畑に張られた防獣ネットに、若い牡鹿が角を絡ませて身動きとれなくなっていたのです。
ニホンジカは美山では有害鳥獣駆除の対象となっています。こういう時狩猟免許を持っている人ならば家に猟銃を取りに帰り、持ってない僕は役場に電話したところ、担当の方が来られて回収されて行きました。
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あとに残ったのは切断されたネットだけ。
大型の生き物の死に立ち会うことに慣れてはいないので、牡鹿の断末魔の声を耳にして、正直動揺がなかったわけではありません。しかし、ここで鹿がかわいそうだと考えてしまうのは、あまりに安直でとても無責任だとも思っています。

鹿が人里まで頻繁に下りて来ることに問題があります。
よく金儲けに走って杉を植え過ぎたせいだとか言われますが、雑木林であっても人の手が入らず放置された、鬱蒼とした山にはやはり鹿の食べ物になるようなものは少なく、茅場のような草原が無くなってしまったことも併せて、山が人の生業の場として成り立たないような社会の仕組みそのものに、原因があると感じています。

私たちは全員がそのような社会の中で暮らしていて、道路建設や宅地開発でさらに鹿の生活圏を狭めています。その結果たくさんの鹿が餓死したり、交配の機会を妨げられて病気にかかりやすくなったりしているはずで、私たちは普段何気なく暮らしているだけで、無意識のうちに鹿の大量殺戮に加担してしまっているのです。死体の見えない死に対しては無関心でいながら、目前での死に対して感情に委ねた対応をすることは、社会全体で根本的な解決を考えるべき問題を、農山村の責任に転嫁することであり、あまりに無責任なのではないかという気がするのです。

自然と共生するということは、生き物を愛玩することとは違います。人の社会も生態系の環の中に参加するとき、生きて行くために他の生き物の命を奪う罪を、受け入れる覚悟も必要になるはずです。
そのうえで、無駄に殺すことのないように一人ひとりが社会の在り方に心を配らなければならないし、奪った命は無駄なく大切に扱うことをこころがけなければなりません。

そんな訳で、美山町では只今「美山鹿肉キャンペーン」を開催中です。
「森の恵み- ヘルシーな鹿肉料理をどうぞ」

071108 籾殻で薫炭つくり

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土間と居間のあいだに紙を貼りました。
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こうして壁のように仕立てるとイメージがわかりやすく、完成した姿を思い浮かべてにやにやしてしまったりしています。

もちろん、そうやって遊ぶために紙を貼った訳では無くて、土間でこんなことをするので煙除けです。
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籾殻を蒸し焼きにして、薫炭を作っています。土壌改良材や種まきのときに一緒に蒔いたりして、農業の現場ではおなじみの素材ですが、砂木の家では床下断熱材として使ってみようと思っています。

ただ、毎日燻しているので、屋根の上で作業する人は大変ですが・・・
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かつては日々の生活の中で家の中で火を焚いていて、それは屋根の葺き替えをしているときも変わらなかった訳ですから、昔の屋根屋さんの苦労が偲ばれます。

そんなことをしながら、砂木の家の屋根葺きも少しずつ進んでいます。
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晴れた日には晩秋の日差しにススキの穂が輝いて、外で働くのが気持ちの良い季節ですが、日が落ちるとたちまち冷え込んできます。