0801 風景

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

真夏とはいえ夜明けの山里の空気はひんやりと肌寒い程です。
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茅バイトのアサヤンさんの入れてくれる、本格チャイでからだを目覚めさせて屋根に上がります。

ようやく棟近くまで上がって来ました。水平が保たれているかどうか、離れたところから見て確認します。
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新築なので、ご近所の家並に馴染んでいるかどうかも気になるところです。

人と自然の共生する、先人の営みの積み重ねよって生まれた里山の風景。
そこに相応しい1ページを重ねることが出来るかどうか。
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家の向きなどもご近所の建て方に倣っています。集落の人たちの体験話を聞いていると、やはりなるほどと思わせられることが多々ありますので。

そうした試行錯誤も繰り返しながら、まもなく棟を積むところまで葺き上がります。
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まあ、なかなか竣工しないのは、屋根屋の仕事が進まないからなのですけれども。

0808 棟を積む

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

やっとこさ、棟を積む日が来ました。
棟積みの工程も何度かご紹介していますが、何度でも繰り返します。よろしければご覧下さい。
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一番上まで葺き上がった茅を押さえる竹は、屋根裏のあらかじめ高さと水平を揃えた下地竹(セメダケと呼びます)に縫い止めます。棟の基礎となるこの竹の、前後左右の高さが揃っていることが安定した棟にするために肝要です。

棟と水平方向に茅を積み上げ、押さえ竹から取った針金で束ねて固定します。
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さらに親亀の上に子亀が乗るように、順に小さな束を積んで行きます。
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こうして屋根勾配なりの棟を積むのですが、美山の茅屋根は勾配そのものが急なので尖った棟になります。

基礎となっている押さえ竹を養生する意味で、半分に切った茅の穂先の方を並べて止めます。
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棟には杉皮を被せて雨から養生するので、ここに用いるのは軒裏同様に稲ワラを使っていました。
最近では屋根の耐久性を増すために、我々の仕事では雨のかかるところには茅の穂先も使わない傾向にあるので、ワラに代わって穂先はこういう箇所に活用しています。

0813 棟上げ/壁小舞

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

棟が上がりました。
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小さい家なのに、棟飾りが7つも載ってしまいました。屋根の勾配が急過ぎて、棟が長くなってしまったからです。
(大工さんの)棟上げの時慌ただしかったとはいえ・・・まあ、屋根屋でも新築に携わる機会は貴重だし、お施主さんの家ではなく自宅で失敗を経験できて良かったと思います。

棟飾りのウマノリはトタンを被せて必要なくなったお宅から安く譲って頂いたり、形が悪くお施主さんのところでは使えないものなど、寄せ集めを切ったり削ったりして形を揃えて使っています。
半端物だけれども、安全のためにも栗材にはこだわります。

かつてはその重さで棟を押さえていたウマノリですが、現在では針金で屋根裏の下地丸太に綴じて締め上げています。
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水を吸うワラ縄で屋根を貫通して綴じては雨が漏ってしまいます。雨の伝わり難い針金が登場したことで、意匠は同じでも機能としては、ただ置いてあるだけから挟んで固定するかたちに劇的な進化が隠されています。

棟が上がり雨漏りの心配が完全に無くなったので、内装の工事も本格的に始まりました。
左官屋さんが来られて壁の下地小舞をかいて行かれました。
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本当は小舞かきも我々でやりたかったのですが、結局時間を作ることが出来ませんでした。ただし、小舞にした割竹は、昨年自分たちで伐り出して割って用意していたものです。
すかすかの小舞とはいえ壁が出来ると、柱だけだったときより屋内に風が流れるようになりました。ちょっと不思議な気もしますが、適切な入り口と出口を用意してやった方が、吹きさらしよりも空気が動くということでしょう。

0820 集合住宅

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

お盆が明けて作業再開。いよいよ仕上げの刈込みが始まります。
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屋根を葺きはじめて丸一年。長かったです。仕事の合間に作業を進めることが、これほど手間取ることになるとは。本業の傍らで自宅をセルフビルドされている方々の偉大さを思い知らされました。

ストロー状のヨシの並ぶ茅葺き屋根は、穴の中に巣を作るハチたちにいつも大好評。狩人蜂(種類不詳)が幼虫のエサにするバッタをせっせと運び込んでいます。
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ただ彼等は有視界飛行で飛んでいるらしいので、これから仕上げのハサミをかけて屋根表面の地形が変わってしまうと、つくりかけの自分の巣の位置が判らなくなってしまうようです。
ハサミ仕上げの最中にエサを抱えたままうろうろしているハチを見かけると、いつも申し訳ない気持ちになりますが、ハチのお母さんたちのためにも、茅葺き屋根は葺いたらさっさと仕上げてしまわなければならないようです。

家の裏庭にミョウガが顔を出す季節になりました。採るのは鹿と競争です。
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クボ料理長は美山より更に山奥へと旅立って行ってしまいましたが、丁稚サガラが天婦羅にしてくれました。茅葺屋のスタッフはみんな料理上手でありがたいです。摘みたては香りも歯触りも最高!

0821 藁スサ

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

お盆が明けたばかりだというのに、秋雨のような冷たい雨に度々降られます。
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雨漏りの心配は無いとはいえ、雨の日の刈込み作業は捗らない上に仕上がりも悪くなるので、できれば避けたいところです。
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そこで雨のかからない軒裏の刈込みを進めておきます。
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軒裏には茅を屋根に置く角度を稼ぐために稲ワラが使われています。この稲ワラの刈りくずはとっておいて、壁土に練り込むスサに使います。
ススキやヨシといった他の茅材の刈りくずは堆肥の原料に。茅葺き屋根はゴミを出さないゼロエミッションを、とっくに実現してる建築技術です。