0222 船坂旧坂口家再生 with 古民家族

投稿日: カテゴリー: ワークショップ茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

六甲山を越えて西宮市街と三田を結ぶ峠道と、宝塚と有馬温泉を結ぶ峠道が山中で交差するところに、船坂という集落があります。
そこで住む人がいなくなり朽ちて行こうとしていた廃屋を、武庫川女子大学生活環境学科有志を中心とした、古民家族というグループが再生に取り組んでいます。
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増築部分の撤去からはじまり、基礎のレベル出し、土壁の塗り直しと進んできて、いよいよ茅屋根の葺き替えに取りかかるということで、茅葺屋もお手伝いさせてもらうことになりました。

裏側の屋根は覆い被さった木が根を下ろし、完全に背後の山と一体化してしまっていました。今回はひとまず、こちらの屋根を葺き替えることにします。
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我々が到着する迄に絡まる枝や蔓は伐採していただいて、作業のための空間は確保されていましたが、土と化した屋根はご覧のように穴だらけです。

まずは足場組みから。
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大勢が乗って作業する足場ですから、安全を確認しながら組まなければならず、大勢で手分けしてという訳には行きません。

そのあいだ手の空いたメンバーに、ぼけっと待っていてもらうようなことはしません。
稲ワラを結んでサンバイコウつくり。
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たっくさん必要ですからね!頑張ってください!

立派な足場か出来ました。
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あまり近くに木があると屋根が傷むので、足場を利用して裏山の枝打ちも平行して進めてもらっています。

古屋根めくりの際は、再利用できる古茅と、畑の肥料にまわすゴモクとを、めくりながら判断して、分別しながら進めて行きます。
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古茅を手早く束ねるのに、稲ワラを結んでつくったサンバイコウが、とても具合がよろしいのです。

今回葺き替えるのは裏側の、さらに下半分だけ。
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予算も時間も限られた中で、とりあえず喫緊の雨漏り対策には充分対処できますから。
茅葺き屋根は、手元にある材料で、必要なところだけ順番に葺き替えながら、付き合っていくものです。

次回は竹下地の補修
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皆さん遅く迄、男結びの予習に余念がありません。
男結びが出来ないと、茅葺きの現場では男が立たないですからね。

0316 下地組み

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先月傷みの酷かった部分の解体を済ませておいた屋根に戻って来ました。
今日から古民家族 茅葺き週間のはじまりです。
まずは下地の補修から。
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竹や丸太を縄で結わえただけの茅葺きの下地は、しなやかに揺れることで風や地震に強さを発揮しますが、時間が経てば緩んで来ますから、葺き替えの際に整えてやる必要があります。

古茅をめくって下地の横竹も外して、隙間の大きく空いた茅屋根からは、天井裏に保管されていた茅を出すのに良い具合。
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毎年冬に少しずつ刈り貯めた茅を保管するのには、広くて乾燥している茅葺き屋根の天井裏が最適です。

ずれたレン(垂木)を元の位置に戻して、ヤナカ(母屋)を補強して高さを揃えたら、横竹を配置して行きます。
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基本的に釘もコースレッドも使いません。縄だけです。その方が丈夫になるのですが、もちろん、縄がきちんと緊結されていることが前提条件。
さて、予習の成果を見せてもらいましょうか?

男結びが下手っぴだと横竹はぐにゃぐにゃに踊ってしまうのですが、なかなかきれいに並びましたね。
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下地も仕上がり、茅屋根を葺き始める準備がすっかり整いました。

0317 軒付け

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下地が出来たら、屋根の軒裏になる部分をつくります。
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手間のかかる地味な作業が続きますが、屋根の形の善し悪しを決める大切な工程なので、焦らずやりましょう。

丁寧に葺き並べた茅を押さえる竹は、でっかい針に縄を通して屋根裏に縫い止めて行きます。
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針先が屋根裏に出て来たら、中に待機している人がレン(垂木)に縄が巻き付くように、掛けかえてあげます。
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軒を止める縄は屋根の一番下に巻く事になりますから、屋根裏で針受けをする人も低いところに手を突っ込んでで大変です。

臨時の助っ人に駆けつけて下さった、山城萱葺屋根工事の職人さんたちを交えて。
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少しずつ出来て行く屋根を眺めながらのお弁当。

0319 葺き上げ

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軒がついたら、屋根の表面になる部分を葺き上げて行きます。
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茅が立ちすぎず寝すぎない最適な角度を保つように、短い茅や長い茅を交互に重ね合わせて調整しながら並べて行きます。
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色んな人が手伝いに来ていますね・・・古民家族はなかなかの大家族ですな。

40〜50㎝くらいの高さが出るだけの茅を並べたら、軒と同じように竹で押さえて下地に縫い止めて行きます。
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屋根の表面を叩き揃えて形を整えたら、息を合わせて竹を踏みしめ、縫い止めている縄を締め上げます。
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この工程を4回繰り返して、古茅をめくった分だけの新しい屋根が葺けました。
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0324 仕上げ

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屋根の上で葺く作業がスムーズに進むのは、裏山で茅の下拵えしたり運んだりする、テッタイさんの働きをする人がいればこそ。
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茅を切るのも手配するのも、段々上手になってきました。

新しく葺いた屋根と、葺き替えていない上半分の屋根の間を葺き詰めます。
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葺き詰め方が足りなければ、古い屋根が緩んで崩れますし、だからといって闇雲に詰め込んだら、茅が屋根の内部に向かって傾いてしまい、そこから雨漏りが始まります。

古い屋根は長年風雨に曝されて厚みが減っています。新しい屋根はそれにつられないように注意して、適正な厚みを保って葺き上がらなければなりません。
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だから、新旧の屋根のあいだには段差が出来るのがあたりまえ。

最後に仕上げのハサミかけ。
屋根の表面を上から順に仕上げて行ってから、軒の裏を刈り落とします。
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重いハサミを持ってのきつい姿勢での作業、「腕が笑った」のはだれでした?

そこらへんに生えている草と、みんなの力とを合わせるだけで、見違える程きれいな屋根になりました。
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来年以降も毎年刈り集めた茅の分だけ、屋根は新しく生まれ変わって行くことでしょう。
あるものを使って、必要な分だけ葺き替えながら、一緒に暮らして行くのが茅葺き民家のあるべき姿。つぎはぎの屋根は、この民家が「生きている」証拠です。