0711 葺き上げ

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

軒がついたので茅を並べて屋根を葺いて行きます。
オシギリで切ってつくった短い材料を間に挟んで、葺き並べる茅が屋根の下地に対して一定の角度を保つように調整します。
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この屋根は勾配が緩いこともあり、短く切った茅の先の方を踏みつぶして、よりテーパーの効いた材料に加工して、葺いた時に角度を稼げるようにしておきます。
茅は適材適所に選り分けるだけではなく、時に必要に応じて加工することもあるのです。

長い茅を端から端まで薄く並べたら、その次は短い茅を同じように並べる・・・というのを繰り返し厚みを出します。何層にも重ねるレイヤーの材料を選ぶことで、勾配を調節しながら葺いて行きます。
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滑りやすいヨシを混ぜて葺くときは、このようにあらかじめ滑り止めの板を吊っておきます。

一定の厚みに茅を並べたら竹で押さえて止める訳ですが、押さえの竹を下地に縫い止める様子をあらためて。
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青い竹の垂木に縄をかけるために、写真で竹の上側の際から差し込まれた針から、「針受け」の役目の人が縄を抜きます。

今度は写真で竹のすぐ下側の際に出るように、針受けの人が声をかけ得て誘導してあげます。
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良い位置に出て来たら、最初の縄を針にかけてから引いてもらえば垂木に縄をかけることが出来ます。
さらに男結びで止めるために2重がけにする方法はこちら

竹を縫い止めて仮固定したら、ずれ止めの板を外してから叩いて形を整えます。
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叩いて伸ばした後で理想的なかたちに収まるように、板を当てているときから想定しながら並べておかなければなりません。

ひとつひとつの作業に意味があることを考えなければならないのは、もちろん葺き並べる時も同じですが、軒がきちんとつけてあれば、それを目安に葺いて行けるからずっと捗ります。
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どんどん葺いて行きましょう。

0818 続・葺き上げ

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

お盆が明けても暑さが和らぐ気配が見えませんが、古民家族による船坂での旧坂口家の屋根葺き替え再開しました。
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今回の目標は「誰も倒れないこと」。
暑い中無理は避けましょう。

雨養生のシートをめくると、いきなりこんなものが。
菌糸で真っ白になった茅屋根。梅雨で濡れた屋根にシートを被せて、夏場に一ヶ月放置でしたからね・・・
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倉庫保管中に濡らして菌糸まみれになった茅を葺いて、屋根にキノコを生やしてしまったことがありましたっけ。
ま、濡れていたのは表面だけなので、真夏の太陽に灼かれて絶えるでしょう。

平日開催ということもあり参加メンバーは常連組中心。さすがに作業の段取りも飲み込めて来て、職人の指導のもと手際良く葺き上がって行きます。
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それにしても陽射しから逃げ場の無い屋根の上は、照り返しもあってかなりの暑さになります。

屋根の上と同様、屋根の下での作業も手際良くなって来ました。
茅束を運んでいるだけでぱらぱらと茅くずが落ちる茅葺き。掃除は欠かせません。
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掃除していてもそもそも散らかる現場ですから、ご近所のご理解が無ければ茅葺きは続けられません。
古民家族の活動を温かく見守って下さる、船坂にお住まいの皆さんに感謝です。

2日間の作業でだいぶ屋根らしくなって来ました。
しかし、今シーズン葺けるのは、実質残り1日くらいです。
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残りの作業量を思うと余裕はありませんが、それよりも誰も熱中症で倒れることも無く、怪我も無く、酷暑の中無事にやりとげられたことに、今回は価値がありました。水分補給対策に気を配ってくれた、学生スタッフのおかげですね。

みなさん、おつかれさまでした。

0827 続々・葺き上げ

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

ようやく空には秋の気配が漂いはじめましたが、地上の暑さは全く衰えないなか、古民家族の旧坂口家の屋根葺き替えが続きます。
あ、↑ブログ始まっているみたいです。
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今回は傷みの酷い軒から3分の2の屋根を葺き替えて、棟の部分には手を付けません。
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ですから軒から葺き上がって来た屋根を、古い棟の下に潜り込ませてやらないと屋根として繋がりません。
丸太を突っ込んで古い屋根を持ち上げ、新しい屋根を差し込む隙間をつくっておきます。

今日も暑い暑い中、屋根の上でも下でもみんな働き者ですね。
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と、思ったら・・・電池切れですか?
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立ったまま寝ているし・・・
暑いからね。

まあ、アイスでも食べて。
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葺き上がりまでもう、あと僅か。頑張りましょう。
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0829 刈込み

投稿日: 6件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

今回葺き替え予定の分の屋根は無事葺き上がりました。
上から下へと順に足場に吊っていた丸太を外しながら、ハサミをかけて仕上げて行きます。
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大きな屋根鋏に初めて触れる人も、職人の指導を受けながらザクザクと。

葺く時に叩いて形を整えながら葺いては来ましたが、やはりきれいに面を揃えるためには仕上げのハサミかけは欠かせません。
叩いて折れたり潰れたりした茅の木口も、良く研いだハサミでシャープに刈り揃えることで、屋根の水はけも良くなります。
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新しく葺いた屋根と古い屋根の境目は、本来なら差し茅で調整して合わせるところなのですが、時間が押しているので、ひとまずブルーシートを挟んで対応しておきます。

ていねいに施工した軒まわりですが、最後にもう一度手を入れて整えます。
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傷みやすい箇所ですが、意匠的に目立つ場所でもあるので、長くきれいな状態を保ってもらわなければなりませんから。

手直しが済んだら軒裏を刈り落として、軒の端を刈り揃えて足場を外したら、今回の工事箇所は竣工です。
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です・・・が・・時間切れ。

「何としても仕上げる」などと大口叩いておりましたが・・・すみません、段取りが悪くて。手弁当で来てくれている職人さんのこだわりや、暑い中頑張ってくれている学生さんや一般参加者の皆さんのやる気を、時に空回りさせてしまいました。

我ながら現場まわすの下手で滅入ります。懲りずに来月にもう一度だけお付き合いください。

0905 こびと

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

その1:
茅葺きの下地は一番高い棟木から、一番下の草桁まで1本のレン(垂木)が通っています。
古民家族で再生に取り組んでいる旧坂口家では、後補の庇を解体したりしたこともあり、屋根全体を受け止めてバランスを取る大切な草桁が、建物の本屋から切り離されて独立柱だけで支えられていました。
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軒がついて屋根が重くなって行くに従い、不自然な揺れ方をするようになって危なくなっていましたが、ある日河原工房の大工さん、ユイさんがふらりとやってきて、梁で繋いで行ってくれました。

下屋の草桁が本屋の柱と梁で繋がり安定しました。
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これで安心して葺き進めることができるようになりました。

その2:
「今年最後の茅葺き3連日」と銘打ちながら、僕の段取り悪くて9月に作業が持ち越してしまった旧坂口家の屋根葺き。
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正直に言えば、9月あと1回の活動で本当終わるのかすら不安だったのですが、ある日山城萱葺屋根工事の茅葺き職人ヤマダさんがひょっこり訪ねて来て、軒を刈り落として行ってくれました。

愛車KTMアドベンチャーでのツーリング中に、偶然通りかかった山城萱葺き屋根工事の丁稚ワタナベ君も手伝ってくれました。
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これで残す作業内容は間違いなくラス1です!