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2007年03月15日

●070315 茅屋根の重さ

神戸の西にある実家に顔を出し、犬を連れて明石海峡を望む高台に登ると夕焼けがきれいに見えました。
毎日この夕焼けを見ながら育ったので、美山に移った当初は山に囲まれているせいで、夕焼けが見れないまま暗くなってしまうことに気が滅入ったものでした。
今ではすっかり慣れましたけれど。
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未だに馴染めないのはこの非常識に大きな橋。
小学生の時に造り始めたときから、冗談みたいに大きくて子供心に笑わずにはいられませんでした。
四国に行く時には便利でよく使っていますけれども。

さて、保管してある茅を養生するための単管の覆いも、ようやくトタンの屋根を張るところまでこぎ着けました。
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「屋根屋ですが茅葺きしか葺けません」ので、トタンを張るのも時間ばかりかかって、なかなかきれいには納まりまらないのです。

それでもとにかく雨露は凌げるようになったので、さっそく野積みにしてある茅を運び込もうとしたのですが、案の定ブルーシートをめくってみると雨水が入り込んでいて3分の1ほどの茅が濡れてしまっていました。
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夏だったら全滅の大損害だったところです。
幸い冬場だったので腐朽には至っていませんでしたから、できたばかりの屋根の下に立てかけて乾かします。こうして立てて風を通してやれば数日のうちに乾燥するはずですが、単管の覆いは物干し場となってしまったので、全ての茅を運び込めるのはまた先に延びてしまいました。

茅を運び込むついでに、乾いた分の茅の一束あたりの重さを量ってみました。
この茅は北上川産のヨシですが、38束量って平均が4.097キログラム。
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平方メートルあたりだいたい15束程度必要になるので、美山町サイズの屋根だと18トンくらいになる計算です。
これは茅だけの重さですから、さらに竹や縄の重量が加わります。茅葺きがとても重いということを説明しても、なかなか信じてもらえないことがあるのですが、こうして量ってみるとやはり相当なものです。

念のために申し添えておくと、金物を使わず木を組んで建てられる伝統的な日本建築は、上から荷重がかかってはじめて安定するものですから、重いということは別に悪いことではありません。
ただ、それに見合うだけのしっかりした構造が必要とされるということです。

野積みにしていた茅の山を崩して行くと、こんな可愛らしい借家人が出て来ました。
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茅とビニールひもを細く裂いて作った巣にくるまって冬を越していた、カヤネズミでしょうか?ヤチネズミでしょうか? 親指よりも小さな野ネズミが。

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コメント

茅の保管も一苦労ですね。
ヒアリングをした茅葺きのままの家でも、
納屋やアマにぎっしりとありました。
試しに1束抱えてみましたが、乾燥してこの重さ?と驚きました。

カヤネズミ、小さく愛らしい!
そういえば保管した茅の上に動物の糞があり、銀杏の実が消化されずに大量にありました。落とし主は誰でしょう・・・。

屋根屋さん、日本(風土)と一緒に生きていますね。
素敵です。

はじめまして。茅の保管庫立派に出来ましたね。この大きさで4間×3間くらいでしょうか。これで茅はどれ位の量が保管できるのですか。またかかった材料費はいくら位ですか。
素人質問ですみません。

きょとん!なまなざし?!
かわいい借家人(^v^)
親指に掛けられた手のちいサイズなことッ

道頓堀ちかくの店舗のわきを走る夜のネズミには
ふるえあがったけれど…
まったくちがう生き物に見えます^^;

「番ねずみのヤカちゃん」というおはなしを思い出しました!兄弟で一番下のヤカちゃんの声がずいぶん大きい・・というおはなしです。カヤネズミ?はこんなに小さくてかわいいのですね!
茅の重さを知りびっくりしました!大変な作業のくりかえしですね・・

すばらしい空ですね・・空を見て大きくなられたなんてすてき・・では、大きな虹も見られたのではないのですか?わたしも、どの虹も忘れたことがありません。

空は、ちいさな花と同じように、心をどきどきさせてくれますね。美山の空は神戸の空とはずいぶん違うでしょうね・・でも美山しか見れない空の良さがあるのでしょうね。

神戸には、ともだちがジャズのお店をしており、ライブのときには、受付と皿洗いをいつも手伝いに行くんですよ〜
もしジャズがお好きでしたら、いつでもお知らせしますよ〜

花がたみ さん、ceico さん、アリス さん、コメントありがとうございます。レス遅れてすみません。

>はながたみ さん、
かつては毎年少しずつ刈り貯めた茅がアマ(茅葺き屋根の天井裏)一杯になると、1回分の部分葺き替えにちょうど必要な量となっていたそうです。
屋内で火を使っていた頃は、アマは茅を乾燥させ煤でコーティングしながら保管できるますから、とても合理的にうまくできています。

囲炉裏を使わないと屋根に煤がつかないことより、茅葺きの天井裏が快適なあまり生き物が入り込んでしまうことの方が困りものです。アライグマがおしっこをしたりタヌキが貯め糞をしたりすれば、建物は傷むし衛生上も問題です。
だからといって動物が入れないほど隙間を塞いでしまうと、本来優れたベンチレーターであるはずの茅葺きの屋根裏の換気が行われなくなり、蒸れて屋根が傷みやすくなってしまいますから。

>ceico さん、
身に余るお褒めの言葉をありがとうございます。
職場の都合上、気候や土地柄に即した暮らし方しか出来ないという面もあるのですが w 
もちろん、そんな毎日に不満はありません!

>アリスさん、はじめまして。
この覆いの大きさは、平面5m×10mです。
今回は仮の覆いということでお金も時間もかけられないため、手持ちの足場用単管を流用して自分たちで建てましたから、実際にかかったお金は屋根のトタン板くらいでした。
ここに野積みにしていた茅の3分の2を収納し、さらにこの冬に自前の茅場で刈った茅も入れたいと思っているのですが、どのくらい収まるかは入れてみなければ・・・という感じです。
プロなのに素人並みの行き当たりばったりな計画ですみません。


にち さん、とまとん さん、コメントありがとうございます。レス遅くてすみません。重ね重ね。

>にち さん、
カヤネズミ・・だと、思うのです、多分。本当にかわいらしかったですよ。日常的に古巣ばかり見て来たので、一度本人に会ってみたいと思っていました。

日本にはたくさんの種類のネズミがいるそうですが、病原菌のキャリアとなって私達の暮らしを汚染してしまうのは、ドブネズミとクマネズミの2種類だけで、他は全て森や畑(や茅場)に暮らすいわゆる野ネズミだそうです。

>とまとん さん、
茅はその重さ故に風にも強いのですが、住人の方が高齢化されると刈り集めたりするのも難しくなってしまっています。
そのような場合には僕は麦ワラ葺きをお薦めします。麦ワラはススキやヨシより多少耐久性に劣りますが、大きな束でも軽々と持ち上げられるくらい軽量ですし、刈り集めるのも畑で栽培してバインダーで収穫できますので。

空を眺めるといつも、日本は美しい国だなあと感じます。水の豊富な土地故の様々な姿や色を見せてくれますから。
虹は昨年初夏、鎌倉に滞在中に見事なものを見ました。美山では特に夜の表情の豊かさを知りました。本当の漆黒の闇夜とか星影とか、夜の暗さも変化に富んでいることを、街灯の途切れる山暮らしで実感しています。

神戸はジャズの盛んな街ですよね。
ちょうど昨夜に丁稚サガラは北野坂のライブハウスに行っていたそうです。
我々はまもなく神戸を離れますが、また面白そうなライブ情報があれば、ぜひお知らせ下さい。

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