2008年11月15日

●お知らせ 茅葺きシンポ@神戸

「人のいとなみと田園景観〜茅葺き民家が『ゆたかさ』のシンボルに」というタイトルで、神戸市北区において茅葺きシンポジウムが開催されますので、お知らせいたします。
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港町の印象の強い神戸ですが、この建設年代が明らかな日本最古の民家「箱木千年家」も神戸にあります。明治以降の急速な街の発展を支えたのは、六甲山の北側に広がる豊かな北摂の農村地帯でした。

そして茅葺きのある農村での営みが、このススキ野原に巣をかけて暮らすカヤネズミ等、多くの生き物の命も支えていました。
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自然との共生が日々の暮らしに求められる現在、茅葺きの現代的な再評価を進めて来た齊木崇人、安藤邦廣、両先生の対談からは、新たな茅葺きの可能性を導き出してくれるのではないかと、個人的にもとても楽しみにしています。
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平成20年12月4日(木)10:00〜12:30
すずらんホール 大ホール (神戸市北区役所前)

【基調講演】「茅と民家と神戸の田園景観」
齊木崇人(神戸芸術工科大学学長)
/対談:安藤邦廣(筑波大学教授)

【パネルディスカッション】「なぜ今茅葺きなのか〜茅葺きの魅力について」
コーディネーター:齊木崇人(神戸芸術工科大学学長)
パネリスト:
上野弥智代(全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会事務局)
岡田孝久(八多町自治協議会副会長)
磨家孝昭(神戸市教育委員会文化財課主査)
塩澤実(茅葺き職人/茅葺屋代表)

【内田家イベント】「茅葺き屋根の補修の見学や体験イベント」

※ハガキ、FAX、Eメールのいずれかで、件名「茅葺きシンポシンポジウム」とし、住所、氏名、電話番号、参加人数を記入して、下記まで申込の上当日直接お越し下さい。

{問合せ}
〒651-1114 神戸市北区鈴蘭台西町1-25-1 北区まちづくり推進課「茅葺き」係
TEL:(078)593-1111(代) FAX:(078)593-1166
Eメール:kitaku@office.city.kobe.jp

フライヤーのpdfはこちら
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2008年08月09日

●0809 ため池と竪穴住居

兵庫県立考古博物館ボランティアにより取り組まれている弥生時代の住居の復元に、ちょこっと顔を出して来ました。
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博物館のある東播地域は、日本有数の40,000 ! を超えるため池が独特の景観と自然を育んできました。
博物館のエントランスも今や希少種になってしまったオニバスが大きな葉を広げる池で、たくさんのトンボが飛び交っていました。

竪穴式住居の復元はボランティアの市民や学生等によって、全く業者の手を借りずに進められています。
材料の丸太や竹は近くの雑木林から伐り出して来たもの。葺く茅はため池に生えるヨシ。
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約2000年前、稲作が行われるようになった弥生時代には、すでにため池が造られていたといわれています。
ため池をめぐる人の営みと自然との関わりが、茅葺きの竪穴住居を介して甦って行けば素晴らしいことだと思います。

2008年07月20日

●0720 男鬼での葺き屋根

今年も滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、廃村「男鬼(おおり)」での茅葺き民家保全のお手伝いにやって来ました。
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昨年差し茅で補修した反対側の屋根を、今度はめくって葺き替えます。

山城萱葺き屋根工事のヤマダさんの指導で、学生達自身が足場に上って屋根を葺いて行きます。
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適切な職人の助力が得られれば、素人でも建築工事に参加できるのも、茅葺きの大きな魅力のひとつです。

屋根裏では針受けも学生達がこなします。
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屋根裏で地面の上で、テッタイ仕事を率いるのはヤマダさんの新しいお弟子さん、ナカヤマさん。

今回葺き替えに用いた茅は、トタンを被せて葺き替え用の茅がいらなくなった、ご近所の茅葺き民家からの頂き物だそうですが、男鬼楽座では自ら茅場の再生にも取り組んでいます。
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こうして実際に自分で葺いてみると、「良い茅」とはどういうものか良くわかるようになります。茅を刈るモチベーションもきっと高まるとことでしょう。

里山での営みの再興を試みる、地に足の着いた取り組みに触れて楽しい一日だったのですが、帰り道で目にする雑木林は昨年以上にナラ枯れの被害が広がっていて、気持ちが暗くなってしまいました。
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地球温暖化とか酸性雨とか様々な要因が重なっているのでしょうが、本来生態系の中で木を伐る役割を与えられているはずの人間が、化石燃料に過度に依存して薪や炭として木を伐らなくなってしまい、森が年老いた木ばかりになってしまったことも、大きな要因の一つに思えます。
屋根を葺くために身近な草を刈ると、豊かな草原が生まれる茅葺きという仕組みを通すと、人の営みと他の生き物たちとの関わりがとても良く見えて来ます。
男鬼に蒔かれた種が、自然と人の暮らしが織り成す里山全体の再生へと育って行ってくれることを願いながら、帰路につきました。

2007年12月08日

●071208 丹後の笹葺き

「笹葺きパートナーズ」によって進められていた丹後での笹屋根の葺き替えが、4年越しで仕上がったということで納会にお呼ばれして来ました。
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山が生業の場で無くなった時代に、最も合理的な材料としてトタンが被せられた丹後の茅葺き民家ですが、里山の再生を地域の活性化に繋げる途を拓くことで、こうしてまた笹で葺くことが合理的だという社会の在り方を、選択肢の一つとして掲げることも充分可能になります。

アリゴシから下はまだ仕上げの刈込みが入っていないので、逆葺きで笹の葉を外に出して葺かれた笹屋根の特徴を見ることができます。
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水はけは良く無いかもしれませんが、このままの雰囲気も捨て難い気もします・・・
金属製の刃物が無い時代には、ヨシやススキを効率よく刈り集めることは無理だったと思うので、縄文、弥生の復元住居には、笹葺きを積極的に活用してもらいたいものです。

夜は一緒に笹葺きに携わって来た地元NPOの皆さんが、旬のブリでもてなして下さいました。
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刺身もブリしゃぶも絶品です!

お酒が進むと、始まる音楽。
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音楽に乗って、やがて踊り出す人たち。

2007年11月04日

●071104 笹葺きワークショップ

丹後半島の上世屋という集落で笹葺きの屋根を葺くのを、ヤマダさんや丁稚サガラとお手伝いしに行ってきました。
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作業の中心となっているのは、立命館大学経営学部の学生が中心となる「丹後村おこし開発チーム」の面々。
葺いているのは、丹後の里山で彼等が刈り貯めたクマザサ。
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笹葺きに携わるようになってすでに5年。笹を葺く手元はすっかり頼もしく、習得した技術は先輩から後輩へと伝えられて、しっかりと根付いています。
笹葺きの工程は、
長短の笹を捌きながら葺き重ねて、適切な角度を保ちながら厚みを出して行きます。

ひと針分の厚みを葺いたところで、押さえの竹を屋根裏に入った人と協力しながら縫い止めて行きます。
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屋根を縫い止める大きな針の扱いも手慣れたもの。

皆で並んで竹を踏んで締めつけ、縄の端は男結びで緊結します。習熟に時間のかかる男結びを、かなりのメンバーが完全にマスターしていることに驚かされました。
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縫い止めた縄の部分には、針目覆いに稲藁をかきつけていきます。
この上にまた笹を葺き並べて行きます。

笹葺きは京都北部では一般的な茅葺きでしたが、ほとんどの屋根にトタンが被せられたため、葺き替えの機会が無くなってしまっていましたから、彼等を手伝うことで、僕もとても勉強させてもらっています。
やはり、実際に葺いてみないと、技術は理解できませんので。

ここの活動で感心させられるのは、単なる笹葺き民家の再生にとどまっていないことです。
日本の自然環境は、そこで人の生業が営まれることで維持されてきました。この上世屋でも人と自然の共生する暮らしの中で、笹葺きの屋根が当たり前に葺き替えられて来た訳です。
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葺き替えのための笹刈りが、周りの里山の環境を劇的に好転させていく様を、自ら体験した彼等の視線は、「村おこし」のために「開発(継承)」するべき文化の本質まで届いていることを、今回確かに感じることができました。

上世屋の集落では稲を干し終わったハサ木に、蕎麦やキビ、大豆、小豆などが干されていました。
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素晴らしい棚田や、そこで多様な穀物を育てるこの地に根差した百姓の百の技も、笹葺き屋根と同じ大切な暮らしの文化として、やがて体験を通じて吸収していってくれることでしょう。

丹後の別の集落にある、今でも笹葺きのままのお宅も拝見させてもらってきました。
昭和10年に水害の被害を避けてこの地に移築してから、ご当主が自ら笹の差し茅を続けながら、今日まで暮らして来られたそうです。
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しかし、ご当主がご高齢になったこともあり、ここ数年は手入れが行き届いていないとのこと。確かに早急な葺き替えが必要となって来ているようです。
上世屋で腕を磨いた若い力が、ここでまた一肌脱ぐということになりそうですが、そうなれば、こちらも傍観している訳にはいかないですね。
丹後では笹が繋ぐ人の輪が広がりつつあるようです。

2007年10月23日

●071023 岩手花巻研修行

某団体の主催する、茅葺き職人を対象とした研修会に参加するため、岩手県の花巻市まで行ってきました。
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まず、同団体が技術研修の会場として運営中の、文化財指定民家の小屋を葺き替えている現場を見学しました。

見学の目玉は「芝棟」と呼ばれる、この棟の収まり。茅葺き屋根の棟に土を乗せて草を植え付け、それで雨仕舞いとしています。
北東北では広く見られる棟で、茅葺きの上に土を乗せるのは、縄文時代の竪穴式住居でも行われていた事が確認されている、根源的で基本的な茅葺きの技術のひとつです。
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とはいえ、関西では全く見る事の出来ない棟ですので、知識としては知っていても、あらためて目にすると何とも新鮮です。とても、かわいらしいと思います。
色々な植物を植えるパターンがあるようですが、今回は土ごと切り取って来た野芝を張り付けてありました。ディティールの説明はあったものの、頻繁に踏まれる場所でなければ良く育たない野芝が、屋根の上で他の雑草に負けずに根を張れるのか、竣工後の「付き合い方」の部分がいまひとつわからなかったのが、少々心残りでした。

続いて、日本最大規模の茅葺き屋根を持つ正法寺を参詣。
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何度訪れてもその大きさには圧倒されますが、昨年「平成の大改修」が終了して、真新しくなった屋根は一段と立派です。
境内もきれいに整えられたので、葺き替え前のような、苔むした茅葺きの巨大な古屋根が、杉の古木に囲まれてたたずむモノノケ的な魅力は削がれてしまいましたが、それは物見遊山に訪れた者の勝手な言い分というものでしょう。

裏山に登って近くで見ると、その巨大さにあらためて驚かされます。
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そして、この大きな屋根を揃えて葺き上げた、宮城の屋根屋さんたちの技術の素晴らしさにも。

バスに揺られて眺めた範囲では、一般の住宅はトタンを被せられたものが多かったのですが、トタンにもやはり地域性が滲み出ておもしろいです。この写真は瓦型のプレス板金による面白みの無いものですが・・・乗り合いの交通機関は、面白そうなものがあっても、ちょっと止めて見る訳にはいかないのがつらいです。
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茅葺きからの改変では、マンサード(腰折れ屋根)の納屋に興味を惹かれました。おそらく茅葺き屋根を下ろして代わりに乗っけたものだと思いますが、現代ではこれがスタンダードになっているようでした。
屋根裏にワラや干し草を保管しようとすれば、茅屋根よりもずっと効率的なので、普及したものなのでしょう。なだらかな丘陵地に放牧地や草刈り場の広がる、北上山地の「牧の風景」にとても良く似合っていました。

最後に東北新幹線を下りたときから気になっていた、新花巻駅の正面に建つ立派な茅葺き民家に立ち寄りました。つい最近までおばあさんがひとりお住まいだったのが、花巻市の管理になったところだということでした。
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磨き上げられたダイドコの床や、手入れの行き届いた障子にまだ人の暮らしのぬくもりが残る建物でした。
花巻市には、新幹線の駅の正面に茅葺き、というロケーションを大切にしながら、ぜひとも深みのある活用を期待したいです。

それにしても新幹線を乗り継いでの一泊二日は、やはりせわしなく疲れました。東北は大好きな土地なので、次回は時間の余裕を見て訪れたいものです。

2007年07月29日

●070729 男鬼での差し屋根

山城茅葺屋根工房ヤマダさんに声をかけてもらい、滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、廃村「男鬼(おおり)」再興の取り組みの一環としての、集落の茅葺き民家の屋根の差し茅をお手伝いしに行って来ました。
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名神高速の彦根I.C.を下りて山間に分け入って行くと、男鬼方面から流れ出してくる川の水が、まるでガラスのように透明なことに驚かされました。
玄武岩質の美山では川底の石が黒く泥っぽいので、川の水質が良くてもこれほどの透明度は得られません。
水が青く見える感じは鍾乳洞の地下水みたいだと思っていたら、近辺はやはりカルスト台地で、川底に敷きつめられた玉砂利も石灰石でした。

山口県の秋吉台などと同様に、ここでもカルスト台地の緩やかな尾根筋はかつては茅場として利用されていたそうです。
茅刈りの行われなくなって久しい現在では、それらの尾根も雑木の林に遷移してしまっていますが、男鬼楽座の活動として再び茅場に戻そうという取り組みもなされていました。
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ハードウェアとしての茅葺き民家の保存に止まらず、周辺環境の整備に繋がる営みを取り戻そうとしていることが素晴らしいと思います。
茅葺屋の目指すソフトとしての茅葺きの再興と通じるものも多く感じていて、今後の活動からは目が離せませんし、もちろんお手伝いできることがあれば微力ながら力になれっていければと思っています。