2006年11月15日

●1115 水海道点描

帰る前に3週間弱滞在した水海道(茨城県常総市)をご紹介します。
と、いっても僕も来てみるまで名前も知らなかったのですが。
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鬼怒川の水運で栄えた町だそうで、往時を偲ばせる立派な建物がたくさん残っています。
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引き込み線の残る大谷石の倉庫。
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水運から鉄道へのシフトは滑らかに進んだようで、先見性の高い土地柄だったのでしょうか。

街中には擬洋風の洋館やレンガ造りも目につきます。
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現在でも首都圏へのアクセスが良いせいか、古い街並を残しながら空き家は多くありません。
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何故か金物屋さんがたくさんあります。鍛冶屋さんが多かったのでしょうか。

市街を外れた家々は、立派なシラカシの垣を巡らしています。
筑波山がそびえる他はどこまでも平らで、冬には空っ風がきつそうです。
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でも、風の強い翌日に晴れると雪を頂いた日光の山並みから富士山まできれいに見えて、広々とした風景には地元の京都北山では考えられない爽快感がありました。

奥に繁るのが坂野家の屋敷森。
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それにしても、関東の畑には道路とのあいだに畦がないのが不思議。

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2006年11月14日

●1114 ハサミで刈込み - 竣工

研修なのでヘッジトリマーは封印して、屋根ハサミを使って刈込みます。
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茅屋根は棟から軒に向かって、足場の丸太を外しながら順に仕上げていきます。
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パワーツールが日常的に用いられる大工さんと違って屋根屋の現場は、葺いているあいだは茅を捌くガサガサという枯れ葉の擦れる音、仕上げに入るとシャキシャキとハサミを入れる音だけが響いていてとても静か。だったことを思い出しました。
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最近ではタワーリフトやインパクトドライバーやヘッジトリマーやブロワの音が賑やかになって来ているもので。
茅葺きの単価を下げるための努力は怠れませんが、美山が世間から取り残された井戸の中だった頃を、少し懐かしく思い出してしまいました。

茅葺きはどうしても茅くずの散らかる仕事なので、毎日の掃除も大切な仕事のうちです。最後にあらためて念入りに掃除。
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そして無事、竣工しました。
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筑波流の屋根に通常の仕事では許されないくらいに、じっくりと時間をかけて取り組むことが出来た今回の研修は、慣れないがための苦労も多かったとはいえ毎日が新しい発見の連続でした。

2006年11月09日

●1109 続・棟収め

マキワラの高さまで並べた茅を、横積みにした棟に巻き付けるようにして曲げます。
表側を並べて曲げたら、そこに重ねて裏側も。
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タナカさんの指導により膝で潰した茅は、濡らさなくてもきれいなカーブで曲げることが出来ました。
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その上に、これは充分濡らしておいた杉皮を被せて竹で押さえます。
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割竹を編み付けて、筑波の茅葺きの棟収めの特色であるスノコ状の棟をつくります。
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ひょっとしたら、あらかじめスノコを編んでおいてから被せるのかもしれませんが、古い屋根の解体過程からは判断することができませんでした。

竹と杉皮の端を切り揃えます。
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棟が収まりました。
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やはり美山の棟とは勝手が異なるので、「棟が上がった」という達成感にも何となくズレがあります。

2006年11月08日

●1108 棟収め/どんぐり注意報

茅葺きの地域性が最も豊かに現れる、棟を積む作業に入ります。
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職人なら仕事は手と目で覚えるものだとは思いますけれども、客観的な記録という点では写真や映像はやはり優れものです。
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実際の施工作業にかかると解体の過程では気付かなかった疑問点も出て来ますから、あらためて写真資料を見直せば新しい発見がいくつもあります。

並べた茅材を押さえた竹を、次の茅材を並べることで覆い隠すことを繰り返して葺き上がっていく茅葺き屋根。
最後の押さえ竹をどうやって隠すかの工夫が、様々な姿の棟収めを生み出して来ました。
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共通しているのは最後の押さえ竹が棟の基礎となること。
屋根の表裏で基礎の高さが揃っていなければ、どんなに丁寧に棟を積んでもやがて傾いてしまいます。表裏の押さえ竹に足を置き棟を跨いで立ってみることで、竹の高低を判断します。

茅材を横積みにして棟のかたちを整えます。
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丸い棟にするために、関西のように高く積み上げたりはしません。

両端を杉皮で押さえ、その杉皮をマキワラで押さえます。
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マキワラは竹串を差して固定します。

平行して、ケラバ(破風周りの軒)も刈り揃えたので、屋根のかたちがはっきりして来ました。
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ところで、ドングリの降り方は日に日に強くなってきていて、カーン!と音を立てて鋼管足場に落ちてくるそれは、頭に当たったりすると結構痛かったりします。
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2006年11月05日

●1105 葺き上げ

薬師門は大きなシラカシとムクノキに挟まれて建っているのですが、ここ数日カシの木からドングリが降るようになりました。
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11月にしては暖かすぎて気味が悪いものの、外で仕事をするには最適な気候の中で、葺き上げは順調に進んでいます。
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「マキワラ」も取り外したものを参考にして新しく作り直しました。丁稚サガラの力作です。
古いものはやはり稲ワラを芯にしていましたが、耐候性に配慮して今回はススキ100%としました。
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古い棟を解体したので、葺き上がって行くにあたって目安となるものが無くなりました。
新調したマキワラが上手く収まり、「蓑甲(ミノコ)」のかたちがきれいに四隅で揃うように、相談しながら葺いて行きます。
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慣れない関東風の屋根に挑戦しているので、四つの角をそれぞれ受け持っている職人同士で、息を合わせて葺いて行くことが殊更重要になっています。
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2006年10月30日

●1030 棟の解体

解体せず残しておいた上半分の屋根に、そろそろ葺いて行く茅材の穂先がつかえるようになりました。
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軒に続いて筑波流に特徴的な棟も解体する事にします。
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割竹を編んで作られた竹の簾、棟養生の杉皮、その下にはさらにトタン板。
それら棟に被せられた材料を外して行くと、カマボコ型に曲げられた茅が出て来ました。
こんな風にきれいに曲げるためにはススキを濡らしておかなければならなさそうですが、トタンや杉皮を被せてからどうやって乾かしたのか?
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外見は同じようなカマボコ型の棟でも、やはり鎌倉で奈良の職人さんであるスミタさんが葺かれたのとは、茅の積み方が随分異なります。

棟の端を俵状に束ねたマキワラで収めるのは関西と同じですが、その形態は当然ながら全然ちがっています。
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取り外すとこんな感じ。茅を束ねたにしては軽すぎるので、藁を芯にしているのかどうか。時間をあらためて調べることにします。
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軒を締め付ける針金を取るための、一番肝心な押さえ竹がどうなっているのか、屋根の傷み方が酷くてよく解りません。
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メンバー全員の観察力と推理力を動員して検討します。

古屋根は完全に取り除かれて下地が現れました。
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この門の屋根裏には化粧天井が貼ってあるので、下地の様子を目にするのも初めてです。

2006年10月28日

●1028 軒付け

筑波の屋根を特徴づけている、軒の部分の解体に取りかかります。
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水平に大きく張り出した軒を支えるために、鎌倉の覚園寺でも使った「力竹」が入っています。

軒が付いた状態でも茅材が随分急な勾配で屋根に置かれています。
関西では軒に先細りの材料を使って、軒が付け終わるまでに茅材を置く勾配をなるべく水平に近づけるように努めるので、これには驚かされました。
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軒を層状に積み重ねて美しい縞模様をつくる筑波流の茅葺き屋根。
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このシマシマはバウムクーヘンのように一枚ずつ剥がして行く事が出来ました。

水切りになる軒端の部分を取り去ると、そこから下はそれまでとは明らかに別の職人さんの手によって、より丁寧に収められていました。
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おそらく前回の葺き替えの際にもここより下の軒は傷んでいなかったために、取り替えることなく残されていたものと思われます。

軒を水平に張り出そうとすれば薄くなるので、丈夫に葺くためには難しい技術が必要ですが、上手に葺かれていて茅材の勾配もここでは不自然な程ではありません。
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今回も特に傷んだ箇所を除いてこの軒は残して、その上に重ねて屋根を葺いて行く事にしました。

軒のコーナーを押さえるための、平たい割竹を曲げるための目からウロコな工夫。
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どうなっているか判りますか?

押さえの竹に使われているのは割り竹だけではなく細めの丸竹も。
タナカさんが「マンダケ」と呼ばれたシノタケかネマガリタケと思われる竹は柔らかく、曲げても折れる事は無いようです。一方で固いマダケは折れないようにねじって曲げてあります。
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竹を茅葺きの材として使いこなす技術の発達を垣間見る事が出来ます。

関西流の葺き方だと、コーナーの部分に独立して「角付け」をして固めたくなりますが、筑波のやり方に習ってあらためて軒端の水切りを付け直して行きます。
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茅材の奥が起きて勾配がつきすぎないようにしながら、手前の軒の端になる部分をしっかり固めなければならないというのは、単純に考えると相反する条件を満たさなければなりません。
取り付ける場所を考えて一束ずつ茅を選び、束ごとのクセを活かしながら上手く収まるように気を遣って軒を付けて行きます。