2007年03月01日

●0301 刈込み/竣工

棟を収めたら仕上げの刈込みに入ります。
0301P1070202.jpg
足場の丸太を外しながら、屋根の上から下へと鋏を入れて仕上げて行き、軒まで来たらまず軒の裏を刈り落とします。

それから軒の厚みが揃うように屋根の上側も刈り揃えて、軒の水切りが決まります。
0301P1070207.jpg

お寺からの要望で、棟から軒にカラス除けのテグスを張り巡らすことになりました。
0301P1070219.jpg
ただ、カラスが本気で屋根に止まろうと思えば、たとえかやぶき音楽堂のようなステンレスワイヤー を張っていても止まるでしょう。

まあ、カラスがどんな動機で「本気になって止まろう」と思うのか、カラスの気持ちが判らないことには、なかなか効果的な対処法を見付けるのは難しそうです。
0301P1070253.jpg
どなたかカラスの茅葺きへの興味の持ち方について、観察してみようと思われましたらぜひご連絡下さい。

ともかく屋根の葺き替えは完成です。
0301P1070221.jpg
足場の解体は今回は元請けさんの仕事なのですが、足場の上の掃除が終わったところで飛散防止ネットを外させてもらいました。

もともと衣笠山を借景として建てられた清蓮亭でしたが、現在では背後に立命館大学の校舎が建っています。
0301P1070227.jpg
校舎を隠すために竹や高木を密に植えてあるので、茶室の周りだけ混み合ってバランスが悪いように思われるのが惜しまれます。

もっとも、山が無くなった訳ではありませんし、庭園は六百年の歴史を誇るそうですから、これからも新しい歴史を重ねて守って行けば、六百年後までにはまた往事の眺めを取り戻していることでしょう。

2007年02月25日

●0225 棟収め

寄せ棟の清蓮亭は下地だと武相荘のミニチュアみたいでしたが、棟を上げれば京都の庭園にふさわしい表情となるはずです。
0225P1070180.jpg
茅葺き屋根の地域性がもっとも顕著に現れるのはやはり棟です。

昨年たくさん積んだ関東の屋根は、どれも断面が半円のカマボコ型でしたが、関西の茅葺き屋根の棟は断面が三角になります。
0225P1070185.jpg
棟は一番最後の押さえ竹から縄(現在は多く針金ですが)を取って固めます。一度に高く積み上げると固まらないので何回かに分けて固めるのですが、その際に関西では押さえ竹から針金を取るのは1回目だけで、2回目は1回目に固めた針金から、3回目は2回目の針金からと、上に上にと鏡餅のように積み上げていきます。

最後の押さえ竹から屋根表面までのギャップを埋めるために、半分に切ったススキの穂先の方を、棟の根元に段が付くようにして並べて止めます。
0225P1070193.jpg
両端には並べたススキがこぼれないように、杉皮でススキを巻いたものを固定しておきます。

雨養生に杉皮を被せて竹で押さえます。
0225P1070197.jpg
竹を押さえる縄(今回は針金ですが)は杉皮を割って棟の中から取らなければなりませんが、その位置は次の工程で棟飾りが乗る位置に揃えておきます。

茅束を杉皮で巻いた棟飾りは単なる飾りではなく、杉皮を押さえた竹を縫い止める縄を、雨から養生する働きがあるので「針目覆い」と呼ぶ地方もあります。
美山では捻りなく「マキワラ」と呼んでいますが。
針金だと雨が伝って漏る心配もあまりないので、単なる飾りにしてしまってもよいのですが、せっかくなのでマキワラが隠してくれる位置で、押さえ竹を止める針金を取っておきます。
0225P1070200.jpg
杉皮の端を揃えてはみ出した茅を切り揃えれば棟は完成です。

2007年02月21日

●0221 葺き上げ/手針

手入れの行き届いていない茅場で刈り取ったススキには、このように根元がえげつない曲がり方をしているものがあります。
0221P1070175.jpg
ただ、ヨシだと毎年刈り取っているヨシ原でも、このように曲がったものがちらほら混じります。
環境だけではなく遺伝子などの先天的な原因があるのかもしれません。

イギリスの茅葺き職人は、このように曲がったヨシのことを Dog Legs と呼んでいました。
犬の後ろ足みたいな曲がり方だと思いませんか?

さて、屋根に手を突っ込んで竹押さえの針金をとっていると書きましたが、具体的な方法について。
0221P1070160.jpg
分厚い茅の中にいきなり手を突っ込むのは大変(というより無理)なので、このような道具を使います。

「テバリ(手針)」とか「カイ(櫂)」とか呼ぶようですが、美山ではもともと使わない道具なので、ウチの現場ではまだ呼び名が安定していません。
0221P1070161.jpg
そのカイを屋根に差し込みます。

感触を頼りに垂木の位置を探し出し、
0221P1070162.jpg
90度捻って茅に隙間をつくります。

そこに手を突っ込んで垂木に針金をかけます。
0221P1070163.jpg
今回の現場では天井が張ってあり屋根裏に入れないので、仕方なくこのような方法をとっていますが、地域によっては日常的にこの方法を用いられる職人さん達もおられます。

捻ったカイを戻して引き抜けば、茅に開けられた隙間は塞がります。
0221P1070164.jpg
とはいえ一旦きれいに並べた茅を開くのがためらわれるのと、1カ所の隙間から通した針金や縄で押さえの竹を締めれば、垂木の太さの分だけ茅は割れてしまいます。
垂木の左右に分けて差した針の縄なり針金を、屋根裏に入ってもらった人にかけかえてもらえればそのようなことはおきないので、やはり僕は出来れば手針は避けたいのですが。

ちなみにカイは普通木製です。
0221P1070098.jpg
カイに適した板材がなかなか手に入らないので、金属製のものを色々試作して試しているところです。

手間のかかる手針を繰り返してようやく葺き上がりました。
0221P1070173.jpg
次は棟収めです。

2007年02月17日

●0216 葺き上げ/蕎麦打ち

清漣亭の現場では禅定寺かやぶき音楽堂をお手伝いしたヤマダさんに、今度は応援に来て頂いています。
ヤマダさんは最近蕎麦打ちに凝っているらしくて、手打ち蕎麦で飲み会となりました。
0216P1070073.jpg
蕎麦を打つ親方の脇でこねる弟子のナカモリ君。何の師弟?

素人の蕎麦でも打ち立ては格別です。
0216P1070083.jpg
食べる方はまかせて下さい。

さて屋根の方も、もちろん日々進行しています。
茶室のような小さな屋根は、軒を付けた茅の穂先がもう棟に届きそうになります。
0216P1070086.jpg
それではすぐに葺けてしまうかというと、茅葺きは茅を固定するために竹で押さえるところが屋根表面から深いところにありますし、さらに竹より奥の茅も「余った」部分ではなく、そこをしならせたり押さえたりして、それらが全て表面の仕上がりに関係して来ます。
つまり軒から棟までが短いと、屋根の深いところで表面を具合良く収めるための工夫をする余地が少ないということであり、難しいコーナーの数も屋根の大きさに関係なく4つある訳ですから、小さな屋根ほど茅葺きは手間がかかり難しくなります。

加えて茶室のように天井が張ってあると、竹を押さえる針金を垂木にかけるために屋根裏に上がることが出来ませんから、外側から茅を割って手を屋根に突っ込み垂木を探ることになります。
0216P1070089.jpg
これがまた結構な手間なので、美山で民家の屋根を葺くようには作業が進みません。

2007年02月13日

●0213 続・軒付け

武相荘の雑木の庭も感じの良いお庭でしたが、何百年と箒で掃き続けられて苔むした、古都の庭園の風格もやはりさすがのものです。
0210P1070050.jpg
我々は裏側から観ることになる訳ですが、それはそれでなかなか。

軒先は一番多くの雨水に曝されて傷みやすい部分です。
0212P1070059.jpg
ヨシの束を針金でかきつけて丈夫につくります。

さらに竹で押さえて軒のラインを整えれば、一息つける軒の完成です。
0213P1070062.jpg
ここで上手く軒がついていなければ、後で誤摩化そうとしても良い屋根にはなりません。

逆に軒が上手くついていれば、葺いて上がって行くのもはかどります。
0213P1070065.jpg
明日は荒れ模様の天気予報ですから、念入りに雨養生して帰りましょう。

2007年02月11日

●0211 軒付け

今朝の美山はうっすら雪化粧。
雪が積もっても霜が降りても、くるまの窓ガラスは未だ凍ることも無く、この冬は霜取りスティックの出番が一度もありません。
0211P1070053.jpg
やはり美山も暖かなようです。
とはいえ、ここのところ毎日5℃ずつ最高気温が下がるという非常識な天候で、せっかく香港帰りは無事乗り切ったのに、何だか風邪っぽくなってしまいました。

解体前の屋根はヨシで葺いてありましたが、元請けさんがススキをたくさん用意されていたので、ススキも混ぜて葺くことになりました。
0210P1070045.jpg
稲ワラの代わりにふたつに切ったススキの穂先の方を使って軒付けを始めます。

さらに選り分けた古茅のヨシを並べ、軒の水切りの一番強度がほしいところは新しいヨシを使います。
0210P1070047.jpg
軒裏はまともに葺いた屋根であれば雨水のかからないところですから、耐久性に劣る柔らかいススキの穂先や古茅のような材料を使っても問題はありません。

軒の裏側が出来ました。
0211P1070057.jpg
構造的に華奢な茶室や門は、重量のバランスを取るために全ての面の屋根を同時に葺いて行きます。

2007年02月08日

●0208 屋根下地

個人的に茶室は「建築」ではなく「工芸品」だと認識しています。
構造的に屋根に人が上がる事も危ういほど華奢なので、冗談ではなく葺き替えの際にうっかり壊してしまわないように、細心の注意が必要です。
0207P1070032.jpg
それにしてもこの下地は寂しすぎます。

軒先の広小舞も大きく下がってしまっています。
0207P1070034.jpg
どうやら跳ね木が効かずに垂木が曲がってしまっているようです。

跳ね木を替えるとなると大工さんを呼んで大事になってしまうので、補強し枕木を追加することで軒を支えておきます。
0208P1070039.jpg
下地の竹も虫の入ったものは交換し、さらに軒の負担を軽くするために垂木の本数を増やします。

相変わらず「工芸品」であることは変わりませんが、それでもはじめに比べればしっかりしたと思います。
0208P1070043.jpg
茶室には天井が張ってあるのが普通なので、屋根裏に上がっての針取りができません。
葺き始めたら下地を目にする事はもうできないので、ひとまず見納めです。