2007年09月19日

●0919 葺き上げ/ナラ枯れ

葺き上げが続いています。
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屋根は上へと葺き進めるに従って小さくなるので、後半はどんどんペースが上がります。

今年はいつまでも残暑が続いていますが、それでも季節の方は確かに移ろっているようです。
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休耕田を利用した茅場にも、一面の銀波がうねるようになりました。
本来なら痩せた土地に生えるススキですから、肥えた田んぼの土では育ち過ぎて、やたら大きいばかりでの柔らかく弱い茅に育ちがちだったのですが、10年以上刈り取りを繰り返しているとだいぶ落ち着いてきました。

しかし、今はススキよりもその向こうの山が心配です。葉の赤くなっている木が目につきますが、さすがにまだ紅葉が始まったのではありません。
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ナラ枯れといって、松枯れと同じように、ある種のキクイムシが運ぶ菌に感染した木が枯れているのです。
日本海側の広い地域で問題が深刻化しているようですが、数年前から美山町でも芦生の原生林で、見事なミズナラの大木が次々と枯れていました。ミズナラに特有の病気と言われていましたが、この夏、里山の雑木林の中心を成す、コナラまで枯れ始めてしまいました。ナラやシイの仲間は、どれも感染する可能性があるようで、京都の東山でも立ち枯れた木が目立つようになったとニュースで言っていました。
僕がそのニュースに驚かされたのは、清水寺や銀閣の背景である東山に枯れ木が増えるのは好ましくないと、景観問題として取り上げられていことです。ツキノワグマからアカネズミまで、山に生きるほとんどの生き物の暮らしを支える、ドングリをつけるナラやシイやカシが枯れてしまえば、山では飢饉がはじまろうとしているはずだというのに。

カエルツボカビ病のニュースでも思ったのですが、「カエルがいなくなると生態系に深刻な影響があるかもしれません」という説明を、いちいち加えているのを聞いて怖くなりました。「カエルがいなくなるかもしれない」ということそのものを、問題だと受け止める人がそんなに少ないのだろうかと。
古都の景観も大切ですが、「日本の山には自然に木が生える」というのが、昔話となりかねないことを想像して、怖くならないのでしょうか。

そもそも、忘れられてしまいがちですが、日本の山は放っておかれると、豊かな自然では無くなってしまいますし。それこそ問題の本質だと思うのですが、報道されるような機会は少ないように感じます。
茅刈りを続けることで荒れ果てた休耕田が、安定した茅場という生態系に推移しているように、山もそこが人の暮らしの場として使われて来なくなってしまったので、松もナラも枯れ始めてしまったのでしょうか。