1019 壁塗り その2

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

塗ってから3週間待って、壁はかちかちに乾きました。
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ちなみに裏側はこんな感じです。
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段々それらしくなっていく我家を、少し嬉しがって遠くから眺めてみました。
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この谷での長い長い人の暮らしの積み重ねが、砂木の集落の景観をつくっています。
新たに建てた拙宅がそこに馴染んでいるかどうかは、とても気になるところです。自分のつくった物が風景の中で浮いてしまうようでは、自分の人生に先人への敬意と環境への意識が欠けていることになってしまいますが、さて、砂木の家はどうでしょうか?

1012 茅場つくり その2

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 淡河茅葺き保存会 くさかんむり

茅場へと復元予定の田んぼの畔に、あらためて植生調査にやって来ました。
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雨のため一週間順延となったのに、あらためて集まって下さった皆さん、ありがとうございました。

四角い区画を設置して、その中に生える植物の種類と量を定点観測して行く、コドラート法という調査を行います。
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しかし、長らく草刈りが行われておらず、クズとセイタカアワダチソウのジャングルとなっている畔では、コドラートを区切る杭を打つのも一苦労。
さらに地表まで掻き分けて、生えている草の種類を余さず確認して行くのは更に一苦労。

既に花が終わっていたり、クズに負けて矮小化していても、植物の専門家の方は次々と種類を同定して、雑草にも名前と個性があることを教えてくれます。
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個人的に心惹かれたのは、このアキノノゲシ。
薄いクリーム色の花の色が、何とも上品です。

背後には圃場整備によってつくられ、草刈りが滞って薮に覆われた高畔。手前の原っぱは洪水対策の河道修正工事で生じた残土が積み上げられもの。
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いずれも、人が自然との関わりを保って暮らして来たこの列島には、かつて存在したことの無い環境です。
ここで茅刈り始めることで、これらの環境と人が再び関わりを持つようになると、どのように自然が変化して行くのか楽しみです。

1011 刈込み仕上げ

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/N邸

軒付けから始めて下から順番に葺いて行き、差し茅で上半分の屋根と一体化させたら、今度は上から順番に仕上げのハサミを入れて刈り込んで行きます。
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ハサミを使いつつ見上げる空は、透明な秋の空。
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最後に軒を刈り落として、刈込みは終了。
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足場を解体して、掃除。

そして、完成です。
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1008 差し茅

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/N邸

上半分は葺き替えた下半分よりは新しいとはいえ、今回下げ葺きで真新しくした屋根よりは古くなった分だけ薄くなっています。
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そこで、新しい下半分とのあいだに段差が生じないように、差し茅をして馴染ませます。

雨上がりの空気に金木犀の香りが満ちていて、思わず深呼吸。
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美山町の茅場では、銀の波が秋の日差しに輝くようになりました。
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子供の頃には、夏休みが終わってしまうのが寂しくて秋は嫌いでした。
美山町で10年と少し過ごした今では、秋雨でぐずついても冷え込んでも、雪に閉ざされる前にはまだ心地よい乾いた風が吹くことを知っているので、秋も悪くないと思えるようになりました。

1005 茅場つくり その1

投稿日: カテゴリー: 淡河茅葺き保存会 くさかんむり

米作りの機械化を進めるために、田んぼの区画を大きくまとめる「圃場整備事業」が日本中で進められていますが、一枚の田んぼの面積が広くなった分、田んぼの畔はしばしば見上げるほど高く大きなものとなってしまいました。

田んぼの畔は崩れてしまわないように、刈り込むことでしっかり草の根を張らせておく必要がありますが、あまりに大きくなった畔では刈り払い機を使うのも危険で、草刈りが大変な労働となってしまっています。
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そのために手入れの行き届かなくなった田んぼの畔が、農村風景の中で次第に広がりつつあります。

淡河茅葺き保存会「くさかんむり」は、草刈りの代わりに茅刈りによって、これらの畔を草の生え揃った原っぱへと戻して行くことを目指して、活動を開始しました。

刈り取ることで、放置して自然に任せているよりも生態系も豊かになるはず。
それを確認するために、茅刈りをする前後の植生調査を行います。
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の、予定だったのですが、あいにくの雨。
本格的な調査は無理ですが、参加者で生えている草を集めて来て、森林植物園の先生に解説してもらいました。
こうして説明してもらうと、「雑草」も実に豊かな個性をもっていることに感心させられます。

兵庫県下では姿が見られなくなりつつあるオオバクサフジ(大葉草藤)が、小さな群落をつくっていました。
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日当りの良い草原を好むこの花は、草刈りが行われずクズやセイタカアワダチソウに鬱蒼と覆われた畔では肩身が狭そうです。
茅刈りによってススキの原っぱへと遷移させることができれば、かつては当たり前でありながら今や貴重になってしまったこの花を、再び身近なものに出来るかもしれません。

カヤネズミの古巣も、わずかながら見付かりました。
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草刈りをしないと枯れ草だらけになって、春になっても新しい芽も生えて来ませんから、今のままでは彼等にとっても暮らしにくい場所になってしまっていると思います。

田んぼの畔を守ったり、茅葺きの材料を集めたり、そんな人の営みとともに紡がれて行く、命の営みもあるのです。