0623 Ridge

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@UK London

10年ほど前に美山町の茅葺き民家が、イギリスから招かれたロジャーさんという職人によって葺き替えられたことがありました。
img098.jpg
母国では茅葺きの学校で若い職人を指導している彼を少し手伝ったことが縁となり、その学校で半年間の研修に参加する機会に恵まれました。

ロジャーさんの家に下宿しながらのイギリス滞在は、技術の習得のみならず職人としての視野を大きく広げてくれました。
img228.jpg
そのロジャーさんから「Japanese Templeの屋根を葺くから」と呼び出されたので、慌ただしくイギリスまで出かけて来ました。

茅葺きといえどもその工法などに合理化の進む西欧圏において、イギリスの茅葺き屋根は地域毎に異なる葺き材や華麗な装飾の棟収めなどに、古来の豊かな地域性を残す点で特徴があります。
P6253219.jpg
ロジャーさんの葺き替えたイギリスの茅葺き古民家。

例えばオランダでは、エコロジカルな高級仕上げ材として茅葺きは人気があり新築も盛んですが、その棟収めは専用に作られたタイルによる簡便なものにほぼ統一されています。
uk 18hellevoetsluis.jpg
新築の茅葺き住宅が建ち並ぶオランダのニュータウン。

今回の現場は日系の仏教センター。ロンドン郊外の住宅地に建つ戸建て住宅の裏庭に、枯山水のお庭とそれを眺める茅葺きの四阿がありました。
P7103683.jpg
これは竣工写真です。
昔ながらの工法によるイギリスの茅葺き屋根の棟は、屋根そのものに比べて耐久性に劣るので、葺き替えを待たずに棟だけ積み直す必要があります。
京北に続き9000km離れたところでまた棟替えという訳です。

0619 棟上げ

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@京北/M邸

杉皮を被せて「カラミ」と呼ぶ角材で押さえ、カラミをウマノリで挟むようにして棟の養生とします。
P6193190.jpg
最後に「ユキワリ」と呼ぶ丸太を、ウマノリの上に意匠的なバランスを取るために載せます。

足場を外して刈り揃えたら完成です。
P6193197.jpg
棟やケラバは良く目につくところだけに、機能的的な低下がそれほど進んでいなくても、今回のようにお施主さんの意向で手直しすることもあります。
屋根全体の印象がすっきりしたのではないでしょうか。

0615 棟の段取り

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@京北/M邸

反対側の屋根のケラバも差し茅で手直しし、棟もあるべき高さにまで積み増しました。
P6153176.jpg
棟の高さは減ったというより、元々少し低めだったようです。

杉皮の下には「ひしゃいだ」(潰した)ヨシが敷かれていました。低めの棟とともに近江の茅葺き屋根に見られる特徴です。
P6153241.jpg
屋根を葺いている茅材も全て琵琶湖のヨシのようですし、前回は滋賀県の職人さんが京北のスタイルに合わせて葺かれたのではないでしょうか。

棟飾りの材料を段取りします。ウマノリを刻むのも屋根屋がやります。
P6153188.jpg
雨風に曝されるウマノリには栗の木が最適です。
栗は傷んで細くなっても最後まで芯は残ります。輸入木材など用いると見た目はしっかりしているようでも内部から腐って空洞化し、突然落ちて来ることもあり注意が必要です。

0611 棟替え

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@京北/M邸

美山に戻って来て、隣町の京北(京都市右京区旧京北町)のお宅の屋根修理に伺います。
P6113210.jpg
棟が傷んでいるので積み直し、ついでにケラバもエッジが立つように直してほしいとのことです。

ハシゴをかけて屋根を間近に見てみると、ケラバの近くでは屋根表面に銅線がたくさん表れています。
「捨て縄」と呼ばれる技法で、押さえ竹より外側、屋根の表面から浅い位置で、針金や銅線、麻縄などでかきつけてあります。
P6113219.jpg
こうすることで屋根表面は目の込んだ仕上がりになりますが、茅葺き屋根は隙間があるからこそ細い茅材一本一本の表面張力が釣り合い雨が漏らないので、強くかきつけて隙間が無くなると雨の染み込みやすい屋根になる懸念もあります。

棟の雨養生の杉皮も厚みが充分ではなかったのか、穴の開いた箇所から棟の中にも雨が入り込んでいます。
P6113225.jpg
ウマノリはその重量で杉皮を押さえています。
最近の美山ではウマノリで棟を挟むようにして止めているので、載せているだけのこの屋根の収め方は、形は同じでも美山の屋根とは工法としては全く異なることになります。

重くて耐久性のある栗の木で作られたウマノリを、高い屋根の上から上げ下ろしするのは危険な作業。
P6113232.jpg
焦らず慎重に行います。

棟飾り(単なる飾りではありませんが)の材料は全て撤去しました。
P6113235.jpg
手前側の屋根のケラバは、始めに差し茅で直してあります。

0605 竣工

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@小松旧米谷家

雨上がりの池に睡蓮の花が咲きました。
6053189.jpg
富山の現場からスギヤマさん達にも応援に駆けつけてもらって仕上げに入ります。

差し茅で棟に馴染ませたら一気に刈り落として完成です。
6053190.jpg
後半雨にたたられたりしましたが、おかげさまで何とか工期内に仕上げることができました。
泊まりの仕事は経費の計算など胃の痛くなることも多いのですが、知らない土地に縁が出来るのは楽しいことでもあります。今回も新たな人や屋根との出会いに恵まれました。