0518 茅と囲炉裏の複雑な関係

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@小松旧米谷家

スギヤマさんの張ってくれた雨除けのシートは、実際に雨が降ったり風が吹いたりすると怖いことになりそうですが、とにかく日陰で涼しいので深く考えないことにします。
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傷みの酷かった軒先の表側の茅を取り除いたあと、軒裏になる茅を整えて新しい軒先を葺けるようにします。
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この家は屋根の軒に近い部分に化粧天井が貼ってあって、人が屋根裏に入って針受けすることができません。

屋根に外から手を突っ込んで押さえ竹を固定する針金をとるために、道具を屋根に差し込んだ途端、屋根の中から「□キ□▲ィ!!△☆▽▽キ■▽!!!」と、形容し難い叫び声と何かが走り回る音が。
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隙間を開けて覗き込んでみると・・・屋根用の縫い針の先に動物の顔が見えるのがおわかりでしょうか?

屋根裏に上がったヨネクラくんは、その動物と鉢合わせ。ばっちり写真に撮って来てくれました。
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茅葺き屋根と化粧天井の隙間にイタチの夫婦が住んでいたようです。

ところで、「囲炉裏を使わなくなって燻さないので、茅葺き屋根が昔ほど長持ちしない」と良く言われますが本当でしょうか? どんなに燻しても刈り旬の悪い竹は虫に喰われてしまい煤竹にはなりません。茅は違うと言うのも妙な気がします。
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しかし、統計はまとめていないものの、家の中で火を使っていた頃に比べて、茅葺き屋根の葺き替え周期が短くなっているのはどうやら事実のようです。
屋根屋がへたくそになってしまったのでなければ、僕は屋根裏の換気状態に原因があると感じています。

囲炉裏にせよクドにせよ、家の中で火を使うと煙たくて居られないので、昔の家は夏よりも何よりも排気を旨として建てられて隙間だらけでした。火を使わなくなれば冬の隙間風は避けたくなるのが当然です。アルミサッシを入れ、天井を吊り、クロスを張り巡らせれば暖房は多少効くようになりますが、吹き抜けの土間やダイドコだったころに比べれば、屋根裏の空気は澱みます。

さらに煙たくなくなると、屋根裏にイタチやタヌキが住み着きスズメバチが巣をかけるようになります。家の中を動物に歩き回られるのを嫌って隙間を塞ぐと、屋根裏の空気はますます澱んでしまいます。
いくら茅葺き屋根に通気性があると言っても、また破風や煙出がついていていも、新鮮な空気が下から入って来なければ、換気効率は悪くなることでしょう。その結果屋根が蒸れて早く傷むのではないかと思うのです。

ですから「囲炉裏を使わないから茅葺きが傷みやすい」というのは間違いではないでしょうが、「囲炉裏を使わず煤がつかないから傷みやすい」という単純なものではなく、「囲炉裏を使わなくなるような生活様式の変化」に伴う様々な要因に「茅葺き民家の使いこなし方が追いついていないので屋根が傷む」といったところではないでしょうか。

茅葺きの実験住宅「砂木の家」では、このあたりを色々と試してみようと思っています。

0517 開腹手術(屋根を)

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@小松旧米谷家

先に下見を済ませておいた、「癒しの森」という公園に移築された民家の屋根を修繕に、石川県小松市にやって来ました。
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元々は広い砂浜と飛砂防止のクロマツ林がどこまでも続く、石川県南部の海岸部に建てられていた農家だそうです。

限られた予算枠の中で、差し茅による修繕をとのことでしたが、下見に来た時から軒周りなどに不自然な傷み方をしている箇所があるのが気になっていました。
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茅葺き屋根は本来なら表面だけを雨水が転がるように流れ落ちて行くので、葺かれた茅は屋根表面に少しずつ出ている部分だけが順に朽ちて、屋根全体が均等に薄くなって行くのが理想です。
葺き方や材料にムラがあったりすると、そこだけ傷みが進んで溝になってしまったりします。この屋根には溝は無いのですが、茅材がススキのかたちもわかるほどあらわになっているのは不自然です。

差し茅は表面から減った分だけ葺き足すような工法なので、屋根の内部に異常のある疑いを抱えたままでは行えません。
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思い切って傷んだ箇所の古屋根を解体してみると、何と表面は茅の形を保っているのに、内部は完全に土のかたまりになってしまっていました。
雨が茅屋根の表面を流れずに、染み込んでしまっていたためです。
材料の茅材が悪かったり、葺き方に無理があったり、カブトムシの幼虫が屋根の茅を食べてしまったりすると、このようなことが起きることがあります。

傷んだ部分は全て撤去して、古屋根の材を活用しつつ新しい茅材で屋根表面を作り直す、「下げ葺き」という工法を採用することにしました。
差し茅のように材料を節約しながら、葺き替えのように新しい屋根をつくれるのが特徴です。
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これからの季節「弁当忘れても傘忘れるな」な越前の天気に配慮して、元請けのスギヤマさんがシートを張ってくれました。
おかげで屋根の上にもかかわらず、日陰で涼しい思いができます。

0513 テッタイ

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

茅葺屋のテッタイさんは、もちろん料理が上手なだけではありません。
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クボさんは茅の扱いにもすっかり慣れて、屋根屋の先手先手に段取りを整えてくれています。

そしてもうひとり、藍那以来ともに茅刈りかやぶき音楽堂と転戦して来たヨネクラくんも、鯉のぼりに見守られながら茅切りに励んでいます。
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ザクザクと良い音を立てて押し切りを扱い、茅を加工する姿も今では堂に入っています。

と、盛り上がって来たところなのですが、再びここで一旦休止。
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急ぎの仕事を頼まれたので、越前まで遠征して来なければなりません。
自分の家はどうしたってあとまわし。アリゴシまで葺けたし、もう一息ですけれどね。

0508 料理長'08

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

暑くも無く寒くも無く、天候も安定していて屋根を葺くには絶好の季節!
少ない人数ではありますが、仕事は捗ります。
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とは言うものの、夏日が多くなってくると、吹く風は爽やかでも屋根の上の日差しが堪えます。

そこで肉体労働者を支える、美味しくて栄養あるごはんを用意してくれているのは、藍那の現場でのアルバイト以来、テッタイを努めてくれているクボさん。
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今日のランチは「たっぷりキノコと庭のミツバ和えパスタ」

そして3時の一服にはおやつも!
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手造り豆乳プリン玄米フレークwithそこらへんに生えているアップルミント。
料理長のいる現場は、みんなのモチベーションが違います。

0506 薫風

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

雪に潰された足場の修理もすませました。
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2年越しとなってしまった屋根葺きを再開します。
どんな職人でも自分の家は後回しになってしまいますから。言い訳ですけれども。
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山笑う季節。
日々色濃さをまして行く山を眺めながらの仕事となりました。

初節句を迎える息子のために鯉のぼりもあげてみました。
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今年は屋根葺き用の足場があるから良いけれども、来年から「屋根より高く」あげるのは大変だなあ。茅葺きは棟が高いから。
来年もまだ足場があるかも・・・などという恐ろしいことは、もちろん考えてはいません!