080106 茅葺き現場体験会@里山公園

投稿日: カテゴリー: 茅葺き体験会「カヤマル」

あいな亭の屋根葺き現場を会場に、国営明石海峡公園事務所主催による茅葺き現場体験会が開催されました。
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茅葺屋はカヤマルのノウハウを活かして、当日の進行を預かりました。

講師役としてはあいな亭を一緒に葺いている「山城萱工房」のヤマダさん、「飛騨かやぶき」のスギヤマさんに加えて、「美山茅葺き株式会社」のナカノさんもそれぞれ、ひとりずつのお弟子さんを連れてやって来て下さいました。
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集まったのは明石高専で建築を学ぶ学生20余名。
参加者5人に職人2人という豪華な布陣。さらには茅バイトのメンバーにもサポートしてもらいながら、いつもの如く実践主義で茅にまみれてもらいました。

体を動かしながら垣間見た茅葺きの秘密、並んで作業しながら耳にした職人の言葉、始めて触れる茅の重さや匂い・・・
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今日一日の体験はやがて彼等が巣立って行く社会へと、ゆっくりと時間をかけて還元されて行くことでしょう。

公園事務所では屋根葺きに続いて茅刈りの体験会も開催されます。
興味のある方は上記HPにて詳細をご覧下さい。

080101 謹賀新年

投稿日: 5件のコメントカテゴリー: 屋根からの眺め

明けまして、おめでとうございます。
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年末には毎年、いつもより念入りに鋏を研いで道具の手入れをし、1年を恙無く過ごせた感謝と新しい仕事の無事を祈念して、お供えを上げます。
神前に刃物というのも何ですが、まあ、仕事の道具なので仕方なし。

昨年は時間をかけて結婚したり、本格的に家を建て始めたり、個人的に色々と大きな動きがありました。
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今年は元日が予定日だった長男を迎えて始まるかと期待していましたが、いまのところまだ出て来てはくれないようです。
妻の体調も安定していますし、焦っても仕方の無いことですので、しばし穏やかなお正月を楽しませて頂いております。
ブログの更新も、年末休暇でようやく現実の日付に追いついて、やれやれです。

皆様、本年も宜しくお願いいたします。

1227 里山公園の植栽

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@藍那あいな亭

茅葺屋で屋根葺きを任せて頂いて、「カヤマル'06」として多くの方々に、材料の茅刈りから屋根の仕上げまで関わって頂いた「藍那かやぶき交流民家」。
丸2年経って良い感じに馴染んできました。
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早く来園者やカヤマルに参加して下さった皆さんに使って頂いて、末永く愛して頂けるように開園が待ち遠しいです。

ストローベイルハウスの現場からあいな亭の現場に向かう園路沿いには、造成前の雑木林から移植された木々の周りの除草作業で、ススキだけが選択して刈り残されています。
「里山公園には自然と協調する里山の暮らしのシンボルである茅葺き民家が不可欠で、里山公園であれば茅葺き民家の屋根には園内で刈り取られたススキが使われるべき」と、言い続けて活動して来たことも少しは汲んで頂けているのかな、と、勝手に喜んでみたりしています。
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こうして成長期にススキを刈り残して、冬に尾花を落としてから茅として刈り取ることを続ければ、やがて一面のススキ野原となることも期待できます。
そうなれば年に一度の茅刈りだけで、美しい原っぱの景観を維持できるようになりますから、公園の管理費用の節減にも繋がるはずです。

藍那に来てから大人数のシフトを組んだり、現場を移ったりと慌ただしく過ごして来ましたが、今年はこれでひとまず仕事納めとなりました。
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年が明ければ茅葺き体験会や、茅刈りも平行して始まりますます忙しくなりそうですが、しっかり充電して乗り切りたいと思います。

1226 ヤマダさんのヨシ

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@藍那あいな亭

ヤマダさんは、かつて巨椋池から大阪湾まで広がっていた淀川水系の広大なヨシ原で代々ヨシを刈り取り、主にヨシズの材料として卸すことを生業として来られた家系の方です。
中国産に押されたヨシズに代わり、茅葺き屋根の材料として使われることが増えていたヨシですが、安定した需要とするには茅葺き職人の高齢化と後継者不足が問題でしたので、自ら茅葺きの修行もこなし職人としても活躍されています。
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そんなヤマダさんの山城萱工房で刈り取るヨシは大きく分けて2つ。
ひとつは上流の宇治川から琵琶湖にかけて見られる大きく育つヨシ。僕等は「伏見ヨシ」と呼んでいます。

もうひとつは河口に近い気水域の干潟に生えるヨシで、伏見ヨシに比べて長さも太さも半分にも至りません。
僕等は「大阪ヨシ」と呼んでいます。
伏見ヨシも大阪ヨシも、植物としては同一の種だそうです。しかし、茅材としてはもちろん全く別物です
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成長する期間は同じですから大きく育たない大阪ヨシの方が緻密で、細い分だけ屋根としても目の込んだものが葺けますから、角や軒といった細かい部分に重宝します。
伏見ヨシは太い分だけ粗くなりますが、それが幸いして水はけが良いのかこれはこれで長持ちする屋根になります。丈夫で屋根をしっかりと固めてくれるので、広い面積を葺いたりするのに向いています。

同じヨシが生えている場所でどうしてこれほどまで違った姿になるのでしょうか?
大阪ヨシは中にカニが入っていたりするくらいに、満潮時に海水に浸かる気水域に生えているので塩分のせいなのか?
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伏見ヨシは琵琶湖の富栄養化の影響を受けて育ち過ぎでしまっているのか?
常々疑問に思っているのですが、どうも元々特徴を異にする遺伝子群なのだという話しを耳にしました。
このあたり、詳しい方がおられたらぜひ教えて頂けないでしょうか。

そんな伏見ヨシと大阪ヨシを適所に使い分けながら、日々葺き上がっています。
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屋根も大きいですが、屋根屋も腕利きの職人とやる気のある手伝いさんを、集中して人数を揃えています。
おかげで今のところ、かなり良いペースで工程をこなすことができています。

1222 破風の取り付け

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@藍那あいな亭

傷みの激しかった破風板を、大工さんが作り直して届けて下さいました。
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この破風板のつくりの細部にも、茅屋根を上手く葺き収めるための工夫が凝らしてあるのですが、古材を参考にして具合良く作って頂いていました。

破風板の取り付け方で、屋根の顔とも言える破風から棟にかけての形が決まってしまいます。
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寄せ棟の屋根下地に破風板を取り付けて、入母屋の形に据えるために付け足す下地を「コムネ(小棟)」と呼んでいます。
茅を葺いてしまえばやり直しはききませんから、慎重に位置を決めて抜かり無く固定して小棟を据えます。