070909 下地組み

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

大工さんが手際良く棟上げ、レン(垂木)を流すところまで進めてくれた「砂木の家」ですが、屋根屋が放ったらかしにしているあいだに、雨に打たれてカビが生えたりしてしまいました。
ようやく作業再開です。
と、行っても今日明日だけですが・・・仕事の合間を縫っての作業なので、屋根屋の自宅は後回しにせざるをえませんので。
0909P1090096.jpg
レンを固定するのは縄によってです。風や台風の力を柔らかく受け流す、茅葺き屋根の下地を組むのはやはり縄でなければなりません。
釘は抜けてしまいますし、ビスは折れてしまいます。ボルトで強力に組めばレンの方が折れてしまうでしょう。

しなやかで強い茅葺き屋根の構造を支えるのは、やはり縄が一番です。
0909P1090087.jpg
レンは2本1組で棟に股がらせたものの位置を決めて固定したら、それに吊るようにしてヤナカ(母屋)の丸太を設置し、間を埋めるようにやや細い丸太をモト(根本)とスエ(梢)を逆にして配置して行きます。

下屋のシコロ屋根は、既に瓦屋さんが仕上げて下さっています。
0909P1090089.jpg
カヤオイがついて軒の高さが決まり屋根のかたちが現れてきました。
ロフトの窓の雰囲気も、イメージして頂けるようになったのではないでしょうか。

070906 夏の終わり

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 里山

久し振りに神戸の里山にやってきました。夏のあいだに繁った、藍那の茅倉庫周りの草刈りをしておくためです。
070906P1090050.jpg
もともと田んぼだったところでぬかるんだ場所も多く、そういう場所では茅刈りを重ねていても、痩せて乾いた土地を好むススキはなかなか生えて来なかったのですが、代わりにミゾハギが群落を造るようになりました。
萩の花も秋の七草のひとつです。手入れされた茅場のなかで、地質や日当りによって色々な植物が棲み分けているようです。

一方で人の手が入らなければ日本の自然は実にワイルドです。
それらは一見緑豊かに見えても、実際にはクズがすべてを覆い尽くそうとしているこの茅場の周りの廃田のように、単調で貧弱な植生になってしまいます。
070906P1090073.jpg
変化に富みやさしい日本の自然とは、あくまでも日本人が生態系の輪の中において、その務めを果たすような暮らしをしていればこそ育まれて来たのでしょう。
おじいさんとおばあさんが、日々の暮らしの中で手入れされておられた先の現場の周りのように。

ところで造形としては、日本の自然もナチュラルなアースカラーだけに彩られている訳ではありません。
人間の勝手な思い込みを吹き飛ばすような、派手なデザインにしばしば出くわします。
070906P1090078.jpg
草刈りをしているとササの中から現れた、この岡本太郎のオブジェかと思うような作品は、狐の錫杖(ツチアケビ)。

このタマムシのめくるめくような輝きも、また。
070906P1090062.jpg
070906P1090058.jpg
アリがきれいに空っぽにしてしまった殻を、丁稚サガラが拾いました。
子供が拾えば宝物になりますね。大変な手間をかけて一枚ずつ厨子に貼った、天平人の気持ちもよくわかります。
生きているときはもっときれいな輝きを放つそうで、見てみたいものです。

神戸のアパートに戻ると、4階の窓の正面になる電信柱のてっぺんで、モズがキキキキ、ケケケケ、と高鳴きを始めました。
070906P1090070.jpg
見上げれば暮れて行く秋の空。
昼間は草刈りで大汗かいて来ましたが、もう既に次の季節が始まっています。

茅葺き現場体験会 参加者募集開始します

投稿日: カテゴリー: 茅葺き体験会「カヤマル」

w告知P1010461.jpg

茅葺き現場体験会 「カヤマル'07@美山」 参加者募集開始しました。

現代における茅葺き屋根での暮らしの在り方を模索した、 新しいコンセプトの茅葺き実験住宅として建築中の「砂木の家」にて、 茅葺き屋根の現場体験会「カヤマル'07@美山」が開催されます。「見学会」ではなく「体験会」です。
真面目で、しかし気さくな若手の茅葺き職人たちが丁寧に指導します。
良い季節を迎える「茅葺きの里・美山町」で共に屋根に上がり、
茅葺きの喜びも苦労もしっかり体験できる貴重な機会です。

地下足袋持参でぜひお越し下さい。

●茅葺き現場体験会「カヤマル’07@美山」

期日:2007年10月6日(土)〜10月8日 (祝) 2泊3日

会場:京都府南丹市美山町高野地区 「砂木の家」建設現場
(重要伝統的建造物群保存地区指定の茅葺き集落まで車で 30分)

詳細http://www.kayabuki-ya.net/plans.htm

問合せ:info@kayabuki-ya.net

[砂木の家建築記]↓
http://www.kayabuki-ya.net/notebook/cat21/

w告知P1010470.jpg

0902 竣工

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/A.S邸

竣工まであとわずかというところまで来て、秋の長雨のせいで足踏みしていました。
この現場の始まりの頃には梅雨前線に邪魔されていました。そしてお終いに来て今度は秋雨前線。思えば夏という季節は、前線が上がって行って下りて来るまでのほんの短い間でしか無いのですね。印象は強烈ですけれど。
0902P1090006.jpg
雨が上がったので裏側も軒まで刈り落として完成です。
シコロ屋根の上を掃除しながら足場を解体していきます。

この現場に来た頃には勢いのある青田だった稲も、色づきつつある稲穂をしならせるようになりました。
0902P1090008.jpg
一つの季節の始まりから終わりまでを、一つの現場で過ごしてしまいました。
まあ、最近では美山でも神戸でも、お盆を過ぎればいつ稲刈りが始まってもおかしくはないようになりましたけれども。

家の周りも掃除して、完成です。
0902P1090021.jpg
長いあいだお借りしていた縁側ともお別れです。お世話になりました。

070901 村の祭り

投稿日: 5件のコメントカテゴリー: 砂木の里

美山の僕の暮らす集落では、毎年9月1日に八朔のお祭りをします。
八朔は旧暦の8月1日ですが、なぜか古い時代から9月にしているそうです。
070901P1080879.jpg
この日は朝から集落総出で林道に繁った夏草を刈り取って整備し、夕方を待ってお堂に祀られているお地蔵さんにお経を上げてから皆で持ち寄った料理を頂き、夜には盆踊りです。

盆踊りのやぐらは、「村の若い衆」で協力して準備します。ですからこの日は毎年みんな仕事は休みをとります。
070901P1080863.jpg
同じ集落で暮らしていても、普段は皆さん朝早くから車で仕事に出かけられて、帰って来るのも(僕のような仕事のものを除けば)夜遅くになりますから、なかなか顔を合わす機会がありませんので、お祭りや日役のような村の行事はとても大切です。

「茅葺きの里」美山町ですが、茅葺きのままの地蔵堂を持つ集落は、わずか数カ所にまで減ってしまいました。
070901P1080904.jpg
ここ数年は、お年寄りの方々が暗くなってからお堂まで上がるのが大変だということで、盆踊りを国道沿いのゲートボール場横広場で行っていましたが、当のお年寄りの間から「やっぱりお堂でないと」という声が上がって、久々に自慢の茅葺きのお堂を前にしての盆踊りとなりました。

ちびっ子たちも、金魚すくいをしたりかき氷を食べたりしたのが、茅葺きのお堂に集まってのものだったかどうかというのは、将来想い出となったときの深みが全然違うと思います。
070901P1080894.jpg
街中の団地なんかでも地蔵堂を建てて盆踊りをしたりしていますが、小さな地蔵堂をみんなで集めた茅で葺いて、小さな茅葺きにしてしまったりするのはいかがでしょうか?