070818 続・レン(垂木)を流す

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

茅葺きの家は基本的に2重梁になっていて、上の梁は桁の上に「渡りあご」を噛んで乗せてあります。合掌組みの場合は、必ずこの上に合掌材の根元を置きます。レンを縄で固定する草桁もこの梁の上に固定します。
070818P1080749.jpg
棟木から下屋桁まで渡したレンを受ける位置に調整して、草桁を梁にダボ栓で固定します。
こうして丸太の草桁は建物の壁面から離れて隙間が出来るので、縄をまわして固定することができるようになります。

2本1組にしたスミレンを棟木に架ける位置が決まり、大間(平)側の草桁が固定されると、その上に小間(妻)側の草桁をスミレンを受ける位置に調整して固定します。
070818P1080752.jpg
垂木を受ける枠を、垂木に合わせてあとから設置するところが、茅葺き屋根の下地組みの変わっているところです。

枠となる草桁を受ける梁は、垂木であるレンに合わせて調整できるように、余裕を見ておく必要があります。
070819P1080748.jpg

草桁の位置が決まればはみ出した部分は、竹の下地を組んで行く際に邪魔になりますから切ってしまいます。
070819P1080774.jpg

070813 レン(垂木)を流す

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

棟の上がった家にはなるべく早く垂木を流して屋根のかたちをつくり、雨から養生できるようにしておかなければなりません。
ベテランの大工さんたちも、茅葺きの屋根下地を新しく組むのは初めてなので、一緒に作業しながら説明させてもらいます。茅葺きの小屋組は現場合わせで組んで行くので、順番を間違えないようにすることが肝心です。
070813P1080700.jpg
まず、スミレン(隅垂木)の位置を決めます。屋根全体のかたちがここで決まってしまいます。

茅葺き屋根の垂木は丸太のモト(根元)を上にしたものと、スエ(梢)を上にしたものを組み合わせて使います。
モトを上にしたものはホゾを切って栓を打ち、2本1組にしてあります。
070813P1080780.jpg
それを棟木に引っ掛けて、軒の方は下屋の桁に乗っけてあるだけです。
2本1組にしたレンを両側のスミレンを含めて何組か放射状に並べて行くことで、屋根のかたちをつくっていきます。

棟木から下屋桁に渡したレンを縄をかけて固定するために、ちょうどレンを受ける位置に草桁(丸太の桁)を配置しなければなりません。
草桁を乗せる梁の鼻は長めに出しておいて、草桁の位置を微調整できるゆとりを持たせてあります。
070813P1080701.jpg
ところが、そのゆとりをはみ出しての調整が必要なことが判明してしまいました。
棟が上がった瞬間から、何だか低いような気がして胃が痛かったのですが・・・大工さんと何度も打ち合わせしながら進めて来ましたが、実際に建ててみて現物を前に説明しなければ、伝えきれないことが残ってしまうことに歯痒さを感じます。

とにかく、棟の高さを上げないことにはどうにもなりません。ただちに棟木の上に束を立てて小棟が乗せられました。
070813P1080706.jpg
緻密な仕口を刻み細かい寸法を合わせる大工さんと、現場で豪快な解決策を採用する大工さんと、その割り切りの良さには驚かされますが、とても面白いと思います。
まあ、茅葺きの屋根下地はそもそもが、屋根屋や近所の人達が現場合わせで組んでいますから、柔軟な気持ちで臨機応変に対応して行けば良いと思います。

とにかく屋根下時の勾配も、大間の側は美山の茅葺き民家の標準に近づいて、棟上げから続いていた懸念もすっきり解消しました。
070813P1080714.jpg
スミレンの頭の位置で小間の勾配も決まって来ます。
そちらはお盆明けに。

070813P1080712.jpg

0812 葺き上げ/夏の水2つ

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/A.S邸

中干しを済ませた田んぼに、出穂期を迎えて水があてられています。
0809P1080657.jpg
落差があっても畔が傷まないように、必要な量の水だけ田んぼへ引き入れられるように、石がさりげなく上手に使われていて感心させられます。

毎日あまりの暑さに葺き上げのペースもやや鈍ってしまいましたが、ここまで葺くと雨漏りの心配はまずなくなります。
0812P1080685.jpg
お盆までに棟を上げることができなかったのは残念ですが。

さすがにこの暑さでは無理も出来ませんし。
0812P1080691.jpg
家の裏の横井戸からは、猛暑続きでも変わらず冷たい水が湧き出しています。
この水で入れて、この水で冷やした麦茶が猛暑を乗り切る支えとなってくれました。

0809 古屋根解体(棟返し)

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/A.S邸

裏側が棟近くまで葺き上がったので、表側の古屋根の解体に取りかかります。
0807P1080628.jpg
この屋根の表側は、アリゴシから下半分を何年か前にこぜあげて葺き替えてあります。

そこで今回は上半分だけを葺き替えます。
0807P1080633.jpg
美山のやり方では屋根の傷み具合に合わせて屋根を上下に分割して葺くことができますが、上半分を葺き替える際には棟も積み直す事になるので、表裏両方を必ず同時に葺き替えます。
これを「棟を返す」と表現しています。
ひっくり返す訳ではありません。

下半分は葺き替え済みとはいえ、数年経ってその分減っていますから、それに合わせて新しい屋根を葺くと薄くなってしまいます。
0809P1080649.jpg
それを避けるためにまず古い屋根を整えて、段を付けてから葺き始めるようにします。

段を付けるとはこんな感じです。
0809P1080650.jpg
減った屋根につられないようにして、正しいかたちを出せるようにしておく訳です。

070806 床組、貫

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

床組の部材は家が完成してしまうと人の目につく事はなく、しかし、湿気や虫害には最も曝されるところですから、昔から見た目は悪くとも乾燥し切った丈夫な古材が、転用されることの多いところです。
070806P1080623.jpg
砂木の家でも、何かに使えると思って集めていたヒノキやクリの柱などが、大引として用いられました。

束は茅葺き屋根の棟飾りに使う、ウマノリの端材です。
070806P1090248.jpg
自宅として暮らしていた小屋のまわりが散らかるのを気にかけながらも、いつか役に立つ事を信じて後生大事に抱え込んでいた木切れたちが、立派な仕事に就いてくれて何とも言えず嬉しいです。

砂木の家の耐力壁となる壁は、土塗りの荒壁とするので、柱のあいだに筋交いではなく貫が渡されました。
070806P1080626.jpg
構造用コンパネや筋交いでひたすら固めていく方法だと、限界を超えた途端に一気に破壊されることがあり得ますが、伝統的な貫構造は、小舞竹、壁土と一体となることで、丈夫なうえに粘り強い壁をつくります。