0727 葺き上げ/茅20〆

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/A.S邸

屋根裏から搬出した茅は、美山の〆である「2間縄締め」で20〆にもなりましたが、葺き始めるとあっという間にぺろっと平らげてしまい、追加の茅が運ばれて来ました。
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ところで、この茅の流通単位である「〆(シメ)」が、地域によって全然違うので苦労しています。
美山の2間〆は、神戸などで使われている5尺〆だと7〆〜9〆になります。ばらつきがあるのは5尺〆と言っても実は色々あるためで、流通単位がこんな有様では、これから私達の生活圏の拡大に相応の範囲で茅を流通させようとすれば、とんだ足枷となりかねない懸念があります。

ここまで屋根を葺くのに結構な量の茅が必要だったことがお解り頂けるかと思います。
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やはり茅葺き屋根は一度に葺き替えるものではなく、少しずつ刈り貯めた茅で、傷んだところを治しながら暮らして行くものだと思います。今回の工事範囲がマキシマムかと。
住人の方にそのローテーションの管理に習熟して頂ければ、茅葺きの維持管理をそれほどの負担でもないと考えて頂くことも出来ると思うのですが・・・

070726 土台

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

基礎の上に土台が回されました。
土台にはヒバを使っています。
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北東北や北陸では建材として重宝されるヒバですが、削ったときの独特の匂いが強いせいか、大工さんのお話しでは京都では材の品目として流通しておらず、立米売りのヒノキの山に、天然生えのものが混じっているくらいだそうです。
シラス干しに混じっている小さなタコとかカニみたいな感じでしょうか。

ヒバはヒノキの異物扱いなので、ヒバが多く混じっているヒノキのひと山は安くなるのだとか。
大工さんには早い時期からなるべくヒバ混じりのヒノキを買うようにしてもらって、土台用のヒバを貯めておいてもらいました。相対的にどこかのお宅に使われたヒノキも安く買えた訳ですから、結果的に上手く収まったと勝手に喜んでいます。
大工さんの刻み場にはヒバを貯め込む事になって、迷惑をかけてしまいましたが・・・
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土台の上に置いてある板は、茅葺きの棟収めに使うウマノリを作った際の端材をスライスしたものです。

茅葺き屋根のてっぺんで風雨に曝されるウマノリは、堅く水に強いクリの木で作ります。
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水廻りとなっている北側下屋部分の土台で、基礎とのあいだに挟んで土台を浮かせるパッキンとして使いました。

刻み場では大工さんたちが部材の仕上げにかかっておられます。
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スギ、ヒノキ、アカマツ・・・適所に使い分けられた材が、ノミとカンナを使う大工さんの手によって柱や梁に姿を変えて行くのは、何度見ても不思議な風景です。

0725 棟の解体

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/A.S邸

お施主さんのご夫婦による手入れの行き届いた現場の周辺には、たくさんの小さな生き物たちが暮らしています。
谷川の堤で仲良く昼寝中のシマヘビとアオダイショウ。
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近づいても体を触られるまで起きない程のんびりした様子は、普段から人にいじめられることなど無いからでしょうか。

葺き上げが捗ったので、続きを葺くために早くも上半分の古屋根を解体しなければならなくなりました。
まず、棟を解体します。
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棟飾りの「ウマノリ」は、昔はその重さで棟を押さえていただけあって、こうして近くに寄るとかなりの大きさ。栗の木で造られているので重さも相当です。

今は針金で引っ張りウマノリで棟を挟んで止めているので、ここまで大きな材を使う必要は無いのですけれども、棟は地域性をもっとも良く現す茅葺き屋根の顔ですから。お施主さんの気持ちとしても、「美山の屋根」にはやはりこれが無いと、ということですね。
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急に現場の人数が減ったので、でっかいウマノリを下ろすのは大変でしたが。

古茅も下ろしてから下地の竹を結わえている縄をかけ直し、下地の補修が済みました。
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あとは棟までひたすら葺いて行くのみです。

0723 斜め軒付け/メガヤ

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/A.S邸

お施主さんが用意されて屋根裏に保管されていた茅の中に、3束だけメガヤが混じっていました。
手前の束がそれで、奥のススキと比べてみて下さい。
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美山で茅屋根を葺くようになって10年以上過ぎましたが、古茅でないメガヤを見たのは初めてでした。
かつてメガヤを育てていた標高の高い尾根筋の茅場は、美山ではもう絶えてしまったと思っていました。

断面を見ると穴が開いていて水切れが良く、合掌集落で有名な五箇山でかつて主流であった「コガヤ」のように、耐久性があると言われています。
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3束だけでしたからまとまった茅場があるという訳では無いのでしょうか、生えている姿を一度是非見ておきたいものです。

さて、屋根の方は今日までの3日間、「きたむら茅葺き屋根工事」改め「美山茅葺き株式会社」から、応援に来てくれていたので随分捗りました。
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屋根の大きさは決まっていますから、やたら屋根屋の人数を増やせば良いというものではありませんし、「テッタイ」さんの人数とのバランスも考える必要もありますが、美山サイズの屋根だと両角を付ける2人+真ん中に2人というのはなかなか恵まれた編成でした。

先方の現場の合間の、忙しい時間を割いて手を貸してくれました。ありがたい。
おかげで手間のかかる「斜め軒」の部分が仕上がりました。
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まあ、もっといてくれても良かったのですけれど w

0721 軒付け/理想の現場

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/A.S邸

現場の周りには夢に思い描くような農村の風景が広がっています。
田んぼも石垣も畔も畑も、こちらにお住まいのお年寄りのご夫婦による、日々の営みの中で繰り返される手入れが行き届いています。
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屋根裏から出した茅が積んである田んぼが一枚、田植えをせずに休んでいるのは、茅葺きの際の作業場とするのを見越して、田植えを控えて下さっていたからです。田んぼには再使用できない古茅やゴモクが積まれ、葺き替えのあとには堆肥がつくられます。一部はそのまま畑のカボチャのマクラにもなります。
家の脇にはきれいな谷川の水を田んぼに引き込むための水路が流れ、汚れた手や顔を思う存分洗うことが出来ます。そこには家の裏手の横井戸の水も流れ落ちていて、これからの季節どんなに暑い日でも冷たい水でのどを潤すことも出来ます。

適切に造林され様々な樹齢の木が混じる針葉樹林と、椎茸栽培のホダキにするために適度に伐り出された雑木林が混じる山裾には、茅葺き屋根のための茅場が広がる、茅葺き民家に素晴らしく似合う風景です。
逆に言えば茅葺き民家を維持していくことが、この風景を守る一助となっているとも言えます。
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茅葺きに暮らすということが、周りの自然環境に対して責任あるライフスタイルを実践していることの、宣言だと見なされるような世の中にして行きたいものです。

おじいさんとおばあさんは、ロハスとか言葉とは関係なくすごいことを、さりげなく実践されておられますけれど。
などと考えながら、軒を付けました。