1227 葺き上げ工程

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

最後に残っていた古屋根も全て取り払い、あとは棟まで葺き上がって行くばかりです。
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日々ひと針ずつヨシを並べては止める作業を繰り返して、ここまで葺き上がって来ました。
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ヨシの葺き上げ工程は藍那里山公園の交流館の現場で詳しくご紹介していますが、あらためてざっとした流れを。

ヨシは滑りやすい素材なので、滑り止めに板を立ててから並べます。
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真っすぐに並べられるように捌かなければいけないのはもちろんですが、ヨシを屋根に置く勾配が立ちすぎたり寝すぎたりせず適切な勾配を保つように、長さや太さの微妙に異なるヨシを使い分けていくのが難しいところです。
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丸太で仮止めしてから板を外し、叩き揃えて屋根のかたちに整えます。
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押さえの竹を屋根裏に入った人と共同作業で、下地の垂木に縫い止めて茅を固定します。
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この作業を繰り返して葺き上がって行きます。

本日で年内の作業はひとまず終了です。
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しっかりと雨養生して現場の掃除をしてから、お正月の準備に関西に帰りました。

1224 軒のかたちを変える

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

今回の葺き替えでは隣接棟の2階増築によって、一部の軒に改修が必要となっていました。
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増築された2階の壁が茅葺き屋根の軒に接してしまっているため、雨仕舞いが不自然なことになってしまっています。

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また、このように軒先に体を入れて作業するスペースが全くないと、そもそも葺き換えること自体ができません。

屋根の形状を変更するためには、それに合わせて下地を作り直す必要があります。
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破断したスミレンの補修に合わせて、問題の部分の軒下地にも手を入れます。

隣接棟に接する部分の軒を切り上げて、空いたスペースに雨水を受ける樋を設置します。
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簡単な下地補修なら我々屋根屋で済ませますが、このような作業には大工さんの手を借ります。

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茅葺きの軒下地も樋の高さに合わせて変更します。

さらに板金屋さんに仕上げてもらって、新しい軒を付け直します。
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これで茅葺き屋根からの軒垂れが、手前の下野庇に速やかに排出されるようになりました。

隣接棟とのあいだに充分な隙間を設けて、新しい軒が取り付けれれました。
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茅葺屋根は時間が経つとその形状が変わって行きますので、それを見越して後々問題が生じることの無いようなデザインにしておかなければなりません。

1221 棟の解体

投稿日: 6件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

歪んだ現状の棟は、屋根を葺いて行くにあたっての目標を過たすので、撤去してしまうことにしました。
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正しい下地の棟木とスミレンの位置を確認しておかないと、最後になってとんでもないことにもなりかねませんので。

今年になってから鎌倉や茨城で何回も見て来た、瓦で収めたタイプの関東の棟です。
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何故か最近この棟に縁があります。

でも、何となく感じが違うな、と思っていたら、瓦の下の養生に引かれたガルバリウム板を剥がすと、潰したヨシが積まれていました。
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おそらく琵琶湖産のヨシで、屋根全体に差し茅されていたヨシと同じものです。
つまり差し茅の際に棟も傷んでいたので、どうやら滋賀の職人さんによって、関東風に似せて積み直されていたようです。

正しい葺き止めの位置を確認して、あらためて安心して屋根葺きに専念できるようになりました。
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武相荘もそろそろ冬枯れの景色となりつつあります。
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それでもなお、毎日尽きることなく落ち葉が舞い落ちて来ます。

葺きかけの屋根にもすぐに積もってしまいます。
乾いているから良いようなものの、大量の濡れ落ち葉が張り付いたいりすれば、もちろん屋根の寿命に良いことはありません。
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まあ、でも、葺いて行くあいだに関しては、雪が積もるよりはずっとましですけれど。
美山なら例年この時期になると、雪かきしながらの屋根葺きを覚悟しなければならなくなりますので。
今年はまだ一度も屋根に霜も下りていないし、暖かいなあ。

1218 骨折・脱臼(屋根が)

投稿日: 3件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

今日は朝から快晴でした。
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晴れた朝の冷え込みは堪えますが、じめじめして変に生暖かいよりも、やはり冬はパキッと冷たく乾いた朝が、らしくて良いです。

東側の小間は全ての古茅を取り除きました。
と、いうのもスミレン(隅垂木)が折れてしまっていて修理が必要だったからです。
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このスミレンは折れたままで何回も葺き替えが繰り返されていたようです。
茅屋根の仕上がりを揃えるために、折れてへこんだ下地の上だけとてつもない量の茅が葺き重ねられていました。

折れたままで何十年も台風や地震をやり過ごして来た訳で、屋根屋の言葉で「総持ち」と言いますが、茅葺き屋根が屋根全体で荷重を分散して受ける構造であることが、はからずしも証明されています。
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とはいえやはり下地が揃っていなければきちんとした屋根は葺けません。
養生シートのなかった頃には、大きく屋根をめくるリスクを避けるために、あえて修理をなおざりにして来ていたのかもしれませんけれども。

折れたスミレンを新しいものに交換し、外れてずり下がった継手を、今回はジャッキもチェーンブロックも使えない場所だったので、「人力」で担ぎ上げて嵌め込みました。
ヤレヤレ。
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新しいヤナカ(母屋)を入れて補強し、横竹を整えて下地の完成です。
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これで、最後まで手をつけていなかった東側の小間にも軒を付け始めることが出来ました。
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軒が付いたら気持ちの上では半分済んだようなもの。
ひとつ目の大きな山は越えたので、あとはどんどん葺いて行きます。
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1215 続・軒付け

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@武相荘

冬の雑木林と言えば、落ち葉を踏んで歩く楽しさ。
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美山に住むようになってから忘れていましたよ。
日本海側では落ち葉は常に湿っていて、踏んでもかさかさと鳴ってはくれませんから。

先に軒を付けた表側はそろそろ葺き上がりの工程に入りました。
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土手のようだった裏側にも軒が付きつつあります。
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軒を解体する際に、四隅に「つくりかや」が取り付けられているのを見付けました。
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関東の職人さんはあまりされないと思うのですが、前回の葺き替えも西国から来られた方がされたのでしょうか。

こちらは拙作のつくりかやを取り付けた新しい軒です。古いものとはかたちが少し異なります。
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僕の目から見ると取り外したつくりかやは、軒を付けて葺き上がって行くにあたって、どうにも使いずらそうなのですが、これを取り付けた職人さんにとっては、そのキャリアの中で磨かれたベストのかたちだったはずです。
どのように屋根を収めていたのか、ぜひお話を聞いてみたかったものです。

今年は東京でも冬型の気候配置が安定してくれず、12月なのに季節の変わり目のような天候不順な毎日が続いています。
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それに加えて、宿舎がノロウィルスの洗礼を受けてしまいました。こういうとき共同生活は脆いです。
今は回復しつつありますが、ここ何日かはなかなか前線に人数が揃えられませんでした。

皆さんも、時節柄うがい手洗い励行して下さい。