1105 葺き上げ

投稿日: 5件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@坂野家薬師門

薬師門は大きなシラカシとムクノキに挟まれて建っているのですが、ここ数日カシの木からドングリが降るようになりました。
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11月にしては暖かすぎて気味が悪いものの、外で仕事をするには最適な気候の中で、葺き上げは順調に進んでいます。
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「マキワラ」も取り外したものを参考にして新しく作り直しました。丁稚サガラの力作です。
古いものはやはり稲ワラを芯にしていましたが、耐候性に配慮して今回はススキ100%としました。
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古い棟を解体したので、葺き上がって行くにあたって目安となるものが無くなりました。
新調したマキワラが上手く収まり、「蓑甲(ミノコ)」のかたちがきれいに四隅で揃うように、相談しながら葺いて行きます。
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慣れない関東風の屋根に挑戦しているので、四つの角をそれぞれ受け持っている職人同士で、息を合わせて葺いて行くことが殊更重要になっています。
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1030 棟の解体

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@坂野家薬師門

解体せず残しておいた上半分の屋根に、そろそろ葺いて行く茅材の穂先がつかえるようになりました。
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軒に続いて筑波流に特徴的な棟も解体する事にします。
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割竹を編んで作られた竹の簾、棟養生の杉皮、その下にはさらにトタン板。
それら棟に被せられた材料を外して行くと、カマボコ型に曲げられた茅が出て来ました。
こんな風にきれいに曲げるためにはススキを濡らしておかなければならなさそうですが、トタンや杉皮を被せてからどうやって乾かしたのか?
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外見は同じようなカマボコ型の棟でも、やはり鎌倉で奈良の職人さんであるスミタさんが葺かれたのとは、茅の積み方が随分異なります。

棟の端を俵状に束ねたマキワラで収めるのは関西と同じですが、その形態は当然ながら全然ちがっています。
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取り外すとこんな感じ。茅を束ねたにしては軽すぎるので、藁を芯にしているのかどうか。時間をあらためて調べることにします。
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軒を締め付ける針金を取るための、一番肝心な押さえ竹がどうなっているのか、屋根の傷み方が酷くてよく解りません。
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メンバー全員の観察力と推理力を動員して検討します。

古屋根は完全に取り除かれて下地が現れました。
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この門の屋根裏には化粧天井が貼ってあるので、下地の様子を目にするのも初めてです。

1028 軒付け

投稿日: 8件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@坂野家薬師門

筑波の屋根を特徴づけている、軒の部分の解体に取りかかります。
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水平に大きく張り出した軒を支えるために、鎌倉の覚園寺でも使った「力竹」が入っています。

軒が付いた状態でも茅材が随分急な勾配で屋根に置かれています。
関西では軒に先細りの材料を使って、軒が付け終わるまでに茅材を置く勾配をなるべく水平に近づけるように努めるので、これには驚かされました。
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軒を層状に積み重ねて美しい縞模様をつくる筑波流の茅葺き屋根。
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このシマシマはバウムクーヘンのように一枚ずつ剥がして行く事が出来ました。

水切りになる軒端の部分を取り去ると、そこから下はそれまでとは明らかに別の職人さんの手によって、より丁寧に収められていました。
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おそらく前回の葺き替えの際にもここより下の軒は傷んでいなかったために、取り替えることなく残されていたものと思われます。

軒を水平に張り出そうとすれば薄くなるので、丈夫に葺くためには難しい技術が必要ですが、上手に葺かれていて茅材の勾配もここでは不自然な程ではありません。
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今回も特に傷んだ箇所を除いてこの軒は残して、その上に重ねて屋根を葺いて行く事にしました。

軒のコーナーを押さえるための、平たい割竹を曲げるための目からウロコな工夫。
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どうなっているか判りますか?

押さえの竹に使われているのは割り竹だけではなく細めの丸竹も。
タナカさんが「マンダケ」と呼ばれたシノタケかネマガリタケと思われる竹は柔らかく、曲げても折れる事は無いようです。一方で固いマダケは折れないようにねじって曲げてあります。
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竹を茅葺きの材として使いこなす技術の発達を垣間見る事が出来ます。

関西流の葺き方だと、コーナーの部分に独立して「角付け」をして固めたくなりますが、筑波のやり方に習ってあらためて軒端の水切りを付け直して行きます。
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茅材の奥が起きて勾配がつきすぎないようにしながら、手前の軒の端になる部分をしっかり固めなければならないというのは、単純に考えると相反する条件を満たさなければなりません。
取り付ける場所を考えて一束ずつ茅を選び、束ごとのクセを活かしながら上手く収まるように気を遣って軒を付けて行きます。

1026 筑波山麓にて

投稿日: 8件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@坂野家薬師門

鎌倉滞在中に下見に来ていた、重要文化財 坂野家住宅の薬師門を葺き替えに茨城県にやって来ました。
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6月に予定していた通り、タナカさんが講師をされる社団法人全国社寺等屋根工事技術保存会の茅葺師技術現場研修会として葺き替えを行います。
研修生は僕の他に美山から2人、神戸から1人。
偶然、普段仕事をしている顔ぶれと同じになってしまい、今ひとつ新鮮みに欠けるのは致し方なし。その分互いに気心は知れています。

昨日は資材の搬入と、前もって鳶さんが組んでくれていた作業足場を、茅葺き作業に合わせてアレンジし直したりで暮れてしまいました。
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今朝はタナカさんの手配されたススキが奈良の曽爾高原から4トン車で届きました。
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門とはいえ結構大きいので、これに加えてさらに2トン車大盛り一杯の茅が必要です。

研修なので、地元の職人さんの葺き方を調べながら時間をかけて古屋根の解体にあたります。
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使っている材料はススキの他にシマガヤ、ヨシ、稲ワラ・・・ あれ、何でもあり? 葺いた時期も場所によって差があり、どうやら何度も補修を重ねて来た模様。

おまけに例のカブトムシ?の幼虫が大発生していて、屋根の傷みもかなりのもの。
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周りを立派な屋敷杜の高木に囲まれているせいもあると思います。

とにかく、傷みが予想以上に酷いのと改修によりかなり変更を受けているため、時間をかけてめくった割には得られた情報は多くはありませんでした。
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こちらの葺き換えられたばかりの主屋も参考にしつつ、これまでの経験と気心の知れたもの同士のチームワークで、良い屋根を葺いて行きたいと思います。
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・・・できることなら、こちらの屋根を解体してみたいなあ・・・
などと言っては叱られてしまいますけれども。

門の屋根を解体して行くと、カブトムシの幼虫に混じってこいつが何匹も出て来ました。
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晩秋にはアシナガバチが、乾いた茅屋根の中に潜り込んで冬眠しかけている事が良くありますが、スズメバチは初めて。勘弁してほしい。

茅葺き屋根の中は、本来なら極度に乾燥しているのであまり生き物は棲んでいません。
こんなに虫だらけの屋根はめずらしいです。
それだけ傷みやすい条件にあるという事かもしれないので、葺き替えにはいっそう気を遣います。

061020 早業

投稿日: 8件のコメントカテゴリー: 小さな仕事

この屋根、新築。4日で下地から葺き上げました。

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もちろん、新記録!!

ただし、裏側から見るとこの通り。
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時代劇の撮影用オープンセットだそうです。

まあ、お仕事ですから、こんな屋根を葺く事もありますわな。