0529 下地組み・軒付け

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

今週は山城萱葺き屋根工事のヤマダさんとサガラが来てくれたので、「何となく差し込んであった」軒の部分の下地を直してもらいます。
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茅葺きの下地は墨を打って直角を出す訳でも、ミリ単位でボルト穴の位置を決めてもありません。大雑把なものです。
でもアバウトだからこそ、局部に無理のかからない構造にするために、経験を重ねた感覚が必要です。
いいかげんは、良い加減。その加減がなかなか難しい。

職人が下地を直している間、参加者は宇治川からやって来たとてつもなく長いヨシを、用途に即して3つに切り分けます。
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と、言ってもヨシは堅いですから。「押し切り」を使いこなさなければ切れずに刃が欠けるだけ。

宇治川のヨシに加えて、自分たちであちこちで刈り集めたススキも使います。
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茅葺きのために「茅を集めなければならない」と考えるか、「身近に自分たちで集めたものが使える」と考えるかで、茅葺き屋根との付き合い方は変わってくると思います。

下地が整ったところで、軒を付けはじめます。
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まずはきれいめのススキを選んで、ひと掴みずつ丁寧にかきつけて行きます。
屋根の基礎になるところだし、軒裏から見上げたときの化粧にもなるから、焦らずに。

一服の準備をする流しには、昨年被せた苫葺きの屋根がまだまだ頑張っています。
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軽い、薄い、苫葺きですが、風が吹けばなびき、雨が降れば受け流し、なかなかしたたかに屋根としての務めを果たしてくれています。

やたらと散らかる茅葺きだからこそ、まめな掃除は大切です。
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でも茅葺きのゴミは、決して廃棄物にはなりません。僕たちが暮らし方を間違えなければ、畑が求めてくれますから。

0516 続・古屋根解体

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

今回葺き替える部分の古茅と、軒を養生していたベニヤ板を取り除きました。
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かつて瓦の庇がついていた軒の部分には、既に茅葺き用の下地が用意されていますが、残念ながらこれは後ほど一部やり直し。
古屋根を残したまま下地の面を正しく出すのは、職人でもなかなか難しいですから。致し方無し。

古屋根を剥ぐったところは、横竹もしっかりしていてそのまま行けそうですから、下地の縄をかけ直しておきます。
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度々練習して来た、男結びの腕前の見せ所。

再利用するために分別しておいた古茅。カブ(根本)を揃えて傷んだところを切り落として、束ね直しておきます。
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直接雨のかからない軒の裏とか、葺く茅の勾配を調整する「延べ茅」とか、使い道は色々あって重宝します。

きれいに整えた古茅は、足場の上に戻して積み上げ、シートで養生しておきます。
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地面からの湿気が来ないし、人の手も届かない足場の上は茅の保管に具合が良いです。
もちろん、あまり足場の上に積み上げていると作業の邪魔になりますが、古茅は最初の軒付け工程であらかた使ってしまう予定なので大丈夫。

昨年は「茅葺き週間」を設けて集中して葺きましたが、平日だと参加できない人も多いので今年は隔週の週末開催に。
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2週間空けるのでシート養生も念入りに。
ま、念入りにしたつもりでも、雨が降れば水は思わぬところから入り込んで来るものです。たかがシートをかけるのにも、経験と技術が必要。
せっかくなので経験しておいて下さい。

0515 古屋根解体

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

昨春、古民家族の面々とともに茅屋根の葺き替えに着手した、六甲山中、船坂集落の旧坂口家に今年は暖かくなってからやって来ました。
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前回は土と化していた山側の屋根を葺き直しましたが、表側も傷みの酷い後補の瓦葺きの庇を解体した後は、ご覧のようにベニヤ板で凌いでいるような状況です。

まずは、前日から用意していた足場を仕上げます。
表側は公道に面しているので、敷地からはみ出さないように。
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丸太足場を組む機会も貴重な昨今、シノと番線の使い方を教わりながら。

足場が用意できたら、古屋根をめくります。
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上から下へと、再利用できる茅と、肥料にして土に還す茅を仕分けながらめくって行きます。

丁寧にめくることで、葺き方の勉強になります、が・・・どう?
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道路にこぼれた茅くずは、こまめに掃除。大事ですね。

掃除した茅くずと、再利用できない茅は、裏の畑に運んで土に還します。
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濡れると重くて運べなくなりますが、お天気で何より。

0327 神戸建築物語

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: ミーティング

ようやく春の息吹が感じられるようになっていた季節に開催されたイベントについてご報告します。
神戸市では建築文化の魅力を引き出し、発信する機会として、講演会と見学会を組み合わせ地域や建物にまつわる物語を紐解いて行く、神戸建築物語を継続的に開催しています。
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「神戸に生きる茅葺建築」と題され3月27日に開催された第9回において、神戸芸術工科大学大学院助手の鎌田誠史先生と共に講師役を仰せつかり、行って参りました。

茅葺きについて現場での四方山話を中心に、基本的にくだけた話しか出来ない僕と違って、かっちりとした構成で茅葺きについて講義してくれた鎌田先生は、実は学生時代の同期だったかまやんです。
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同じ大学で同じ時期に同じ先生の指導を受けても、ずいぶん違う種類の人間になるものですね w

僕たちが学生の頃には、1,200棟とも言われていた神戸の茅葺き民家ですが、今では750棟を割り込みました。
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半分近くに減ったと見るか、まだ良く残っていると見るか・・・

参加者の皆さんからは、見学会を通して活発にご質問を頂くことができました。
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人と自然の織り成す里山のシンボルとして、茅葺き民家のある風景が広く神戸市民の財産として愛されるように、これからも自分に出来ることを考えて行きたいと、あらためて思う機会になりました。

0311 竣工

投稿日: 3件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@勝坂遺跡

菜種梅雨の過ぎた青空を背景にコブシの花が咲いています。
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竣工に至って、勝坂遺跡にもようやく本格的な春が訪れたようです。

棟を無事に積んだら、手直しが必要な場所を仕上げつつ、足場の丸太を上から順番に外して下りて来ます。
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丹後で今も行われる笹葺きの葺き替えの際には、きちんとハサミで刈り込んで仕上げますが、今回は葺きっぱなし。縄文時代にはハサミは無かったでしょうから。

池に落ちた犬みたいに濡れそぼっていた笹葺きも、久々の陽射しを受けて毛並みがふさふさして来ました。
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実は以前から、逆葺きの笹葺きの風合いを活かすために、ハサミ仕上げ無しの屋根も見てみたいと思っていました。
風が吹くとさわさわ揺れてきれいです。同時に葉っぱがはらはら落ちて来るので掃除は大変かもしれませんが。

笹葺きと、
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土葺き。
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「使用前」「使用後」という感じ?
まるで違うのに、並んで建っていると仲が良さそうです。
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たくさんの人たちが手技を携えて集まってくれました。おかげで、縄文の人たちの気持ちに近づくことができたからでしょうか。

勝坂遺跡公園は2010年4月からオープンしています。事前に申し込めば笹葺き、土葺きの中にも入れるそうなので、お近くにお越しの際はぜひ訪ねてみて下さい。