0805 京都府下唯一の村へ

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@かやぶき音楽堂

南山城村にあるヤマダさんの茅倉庫まで、材料を取りに行って来ました。
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木津川の渓谷沿いの国道から、つづら折れの細い山道を辿って上った開けた高原の山中に、秘密基地のような茅倉庫があります。
茅葺きの材料はとにかくかさばるので、茅葺き職人としてはその保管場所の確保に悩まされます。かつては材料はお施主さんが用意されるものでしたので・・・

美山では川底の石は黒くて尖っているのですが、このあたりは地質が随分と異なるようで、谷川の底には真っ白な花崗岩の砂利が敷き詰められていて、高原の明るい空気と良く似合っていました。
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そんな谷川の水を引き込んで棚田がつくられていますが、水取口には用水を蛇行させ、太陽熱で暖めてから田んぼに引き入れる仕掛けがしてありました。
小学校の社会科で習ったなあ、これ。
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実際、谷川の水は冷たく澄んでいて、茅の積み込みでホコリと汗にまみれた顔を洗うには最高でした。

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高原の景色に見とれていた訳でもないと思いますが、帰りの山道でタイヤをガードレールに接触させて、バーストさせてしまいました。
幸いダブルタイヤの後輪だったので、谷底に茅もろとも転落という事も無く、巨大なタイヤの交換も駆けつけたJAFが3分で済ませてくれて事なきを得ましたが。
安全運転。

0801 かやぶき音楽堂

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@かやぶき音楽堂

鎌倉から戻ってから自宅の老朽化との戦いなど、こまごまとした用事に追われて来ましたが、今日から屋根に戻って来ました。
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となり町(といっても合併して同じ南丹市になりましたが)にある「かやぶき音楽堂」の差し茅をしている、「山城萱葺屋根工事」のヤマダさんのところへお手伝いにやって来ました。

お寺の本堂を移築した、とても大きな屋根です。
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いよいよ梅雨明けして屋根の上の「熱さ」も本格的に・・・

ハードな季節の現場となりましたが、健康管理に気を遣いながら良い仕事をさせて頂きたいと思います。
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060723 福井・千古の家

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 屋根からの眺め茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

美山に茅葺きの普通の家、「砂木の家」を建てる計画の相談で、建築士のヤナガワさんを訪ねて鎌倉からの帰りに 福井県の芦原に寄って来ました。
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ご実家では地元の食材をふんだんに用いた、おいしい食事を始めとするおもてなしを頂きました。ありがとうございます。
こちらのお宅のような、居心地の良い縁側のある家にしたいと思っています。

翌日はヤナガワさんの案内で福井見物。「千古の家」と呼ばれる重要文化財坪川家住宅では、ちょうど茅葺き屋根の葺き替えが仕上げの段階でした。
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日曜日のためか職人さんの姿は見えませんでしたが、きれいな仕上がりでした。
オリジナルはススキ葺きだったと思いましたが、今回はヨシに葺き換えてありました。主に費用の問題からかと思いますが、比較的長持ちし材料として流通している量も多いヨシで葺かれる事例が、文化財建造物でも増えているように感じます。

屋根の中程を突き破って顔を出している丸太は、白川郷の合掌屋根などと同じ「こうがい棟」という棟収めのためのものです。棟に横積みにした茅を、この丸太に掛けた剥き出しの縄で止めておくという、いかにも千古の家にふさわしい素朴というか豪快な棟収めです。
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もっとも今回の葺き替えでは、ご覧のように杉皮と針金を用いた棟収めがなされたので、この丸太はかざりになってしまっていますけれども。

文化庁(の外郭団体)の設計監理によるのでしょうが、重文で幾ばくかの補助金があるとはいえ、実際の維持管理は所有者(千古の家の場合はおそらく坪川さん個人)がなされているわけですから、少しでも安価で長持ちするような工法が選択されるのは、ある程度仕方の無い事です。

一方で文化財指定の意味を考えると、特に民家の場合は建物単体だけでは無く、それを支えていた地域の文化も継承して行く必要があります。
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例えば、日常的な草刈りの規模で維持できる小さなススキの茅場があるだけでも、それを使って棟はオリジナルのススキのこうがい棟で収める事が出来れます。傷みやすく頻繁に必要となるいこうがい棟の交換を、職人の手を借りず有志の近隣住民の手でこなしていけば、あまりお金をかけずに茅葺きを介して土地の文化を伝える機会にもなると思いますが、難しいですかねえ。

実は千古の家の近くにも、手入れされた茅場とおぼしき休耕田がありました。周辺には他に茅葺き民家も見当たらない事から、千古の家の葺き替えに備えていたものかもしれません。今回の葺き替えでここのススキは活用されたのかどうか・・・

こちらは千古の家の軒裏です。本来なら茅葺き屋根の場合、草桁(外壁の上の横木)の上に丸太の垂木が乗っているだけなので、垂木のあいだには隙間があり屋根裏への空気の取り入れ口になっています。
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しかし、現在では多くの茅葺き民家に庇がつけられたために軒裏の隙間は塞がれていていて、千古の家のように茅屋根の葺き下しでも、このように隙間は藁束を詰めてわざわざ塞がれています。
茅葺き屋根が長持ちしにくくなった原因として、囲炉裏で火を焚かなくなったからだと言われていますが、自分の実感としてはそれ以上に、軒裏を塞いだり天井を張ったりして屋根裏の換気が悪くなったからのように思われます。

美山に建てる家では、そのあたりを実際に色々と試してみたいと思っています。

0720 さようなら、鎌倉

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

覚園寺の屋根は「ほぼ」竣工しました。
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最後に来て雨が続いたせいで、少し作業が残ってしまったのが心残りではありますが、後はスミタさん父子にお任せして帰る事になりました。

鎌倉には予想を超える長逗留となりましたが、その間たくさんのお店を訪ねて、たくさんの人達と出会うことができました。

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無線LANを解放されている事に甘えて、Daisy's Cafe にはiBookを下げて通わせて頂きました。こちらのJazzmineさんと出会えなかったら、ネット接続のためだけにマクドナルドに美味しくもないハンバーグを、何度も食べにいかなければならないところでした。
もっとも、Daisyに行けばパソコンを触っているより、犬を触ったりお店に集う人達と話をする方が楽しくて、ブログの更新は滞りがちでしたけれど。すみません。

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酔っぱらいたい時にとりあえずお世話になっていたRAM 。だけではなく、
ラ・ジュルネでもソンベカフェでも、GoateeやTipitinaでも、その他の色々な場所で、美味しい料理やお酒と共にたくさんの楽しい話が出来たおかげで、過酷な滞在環境や捗らない現場にもかかわらず、最高に良い印象を抱いて鎌倉から帰ることができます。
僕のやや片寄った「かやぶき話」を聞いて下さったみなさん、ありがとうございました!

今後はなるべく関西に腰を据えて行きたい想いも強いのですが、鎌倉に立ち寄りたいがために関東の仕事を増やしてしまいそうです。

0718 あらためて鎌倉の路地

投稿日: 6件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

梅雨のあいだ、湿っぽく蒸し暑い日が続きながらも雨らしい雨は降らなかった分を、ここに来て取り返すかのごとくに連日よく降られてしまいました。

あとわずかのところで滞っていますが、「明日降るかも」といいつつ休まず働いて来たので、疲れも溜まっていましたし、まあ仕方ないですよ。鎌倉の路地へ散歩にでも出かけます。

扇が谷、二階堂、雪ノ下・・・
緑の豊かな鎌倉の中でも、山の手は一本一本の木が見分けられる程近くに山が迫ります。
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蓋のされていない水路には落っこちそうですけれども、おかげで石組みをふんだんに使った街並と、ゆっくり走る自動車がもたらされています。

生け垣の向こうに顔を覗かせる、近代和風の木造2階家。
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由比ケ浜、長谷・・・
風に潮の香りが混じる浜手の町は、のんびり走る江の電の音と同じリズムが流れているようです。
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道の際や時に真ん中にすっくと立つ松の木が、景観に海辺の町らしいアクセントを加えています。
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稲村ケ崎、極楽寺・・・
海に迫る山の中に自然の地形に沿って建てられた家々が、照葉樹の森に埋もれるような町並をつくっています。
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波に乗れる程の砂浜が広がる海と、緑に覆われた山が手の届くところにあり、古い建物が住む道具としてあたりまえに使われ続けている、鎌倉は歩く程に楽しい気分にさせてくれる街でした。