0604 鎌倉の現代住宅とか

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

捗らないと思いつつも、いつのまにか結構進んでいます。
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文字通り日々の積み重ねでここまで来ました。

まだ、葺き上げ残り3分の1、棟収め、刈込み仕上げが残っていますが、何とか折り返し点は過ぎましたね。
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明日あたりいよいよ最後の屋根めくりをしなければ。

ところで骨太なのに繊細で、桟瓦と下見板張りの外観が特徴的な、大正昭和初期の鎌倉の木造住宅を誉めたたえておりますが、新築の住宅でも何となく鎌倉っぽい雰囲気を持つものを多く見かけます。
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何が鎌倉風かと問われると困るのですが、杉板とモルタルが外観のデザインコードになっているような気もします。
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そういうのが流行なのだと言えばそれまでですが、良いデザインが流行ることが美しい街並を育んで行く訳ですから。
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そんな鎌倉でも、マンション開発は盛んなようで。
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集合住宅の高さ規制が5階までというのはさすがと思いますが(最近まで3階だったとか!)、マンションが増えると景観だけではなく、コミュニティの在り方も変わって来ますから、街の性格がどんな風に変わるのか変わらないのか。

0602 Corazon/Rihito Masuyama

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

鎌倉に来た頃は、境内の木陰は射干(シャガ)の咲き初めだったのに、いつのまにやら紫欄(シラン)が満開に。
屋根は仕上がらないのに、季節は移り変わって行きます。
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ところで、由比ケ浜のジュルネに晩ご飯を食べに行ったら、増山リヒトさんの写真展 corazon が始まっていました。
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壁にかけられているのはラテンアメリカの、明らかに貧困層の子供達の写真。彼らの置かれている環境に反して写真の雰囲気が明るいのは、原色に彩られた街と何より子供達が笑顔であること。

良い写真というのはピントがどうとかというよりも、まず被写体が良い表情をしているかどうかだなあ、などと思いながらひととおり写真を眺めて、リヒトさん本人は他のお客さんの応対をされてるし、ご飯が出来るまでの時間つぶしのつもりで「corazon journal」なるレポートを読み始めたのですが、すぐに引き込まれて2年間に渡る活動の記録を一息に読んでしまいました。

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リヒトさんはニカラグアに青年海外協力隊員として、孤児院での情操教育に携わるために赴任したものの、受け入れサイドのいかにもラテンアメリカらしいトラブルに巻き込まれて、スラムでのストレートチルドレンの救済にあたるNGOに派遣されてしまいます。
畑違いの業務内容、想像を絶するヘヴィな環境、やる気の無い派遣先。リヒトさんは任期の間を週末のサーフィンを息抜きとしながら、与えられた仕事の無意味さにただ耐えてやり過ごしてしまうことも出来たのだろうと思います。
でも、彼は誰に頼まれることもなく毎日スラムの一角で、学校へ行けない子供達を集めて読み書きアートを教え始めました。
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彼は笑顔の子供達を写真に撮ったのではなく、彼の助けを借りて笑顔を取り戻していく子供達が写った写真だったということを知って、随分と感動してしまいした。30過ぎてから涙腺が緩くなったかなあ。
レポートの内容をお伝えできないのが残念ですが、近くサイトを立ち上げるらしいので、その時をお楽しみに。

060528 茅葺きシンポ2日目

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: ミーティング屋根からの眺め

ナショナルトラストの茅シンポ、2日目は会場周辺で茅葺き屋根の見学会です。

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ここは軒と棟の装飾にとことんこだわる職人集団、「筑波茅手(かやて)」の本場だけあって、案内して頂いた屋根には、いずれも見事な意匠が施されていました。

しかし、町内に車を走らせていて、それらの立派な茅葺き屋根以上に目を引いたのが、門。やたらとお寺の多い土地かと思いきや、全て普通の住宅の門でした。
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筑波茅手による見事な装飾は、雪の無い土地柄故に、冬場に磐越各地から出稼ぎに来た職人たちが腕を競った結果だという解説がなされましたが、腕を振るうにもまず、華美を求める施主の意向があればこそだったはずです。

「手間がかかっても、長持ちしなくても、とにかく立派な棟を!」という住人の気概に追われて職人も腕を磨いたのでしょうが、その我が家にかける情熱が茅葺きの少なくなった現在、門に向かって噴き出しているのでしょうか。
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門とバランスを取るためか、住宅の方もこのとおり。
ここまで来ると、立派にパンクしてますねえ。既存のモラルなど超越して突き進む!
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まあ、脇町のうだつもサンジミジャーノの石塔も、かなりの程度まで勢いで突っ走った結果生み出された景観な訳で、茨城の農村で弾けるデコラティブ和風木造住宅群が、後年どのように評価されるようになるのか、なかなかに興味をそそられるところではありますが・・・

話を茅葺きに戻します。
「霞ヶ浦のしまがや」なる茅材がどのようなものなのか、かねてから気になっていたのですが、常陸風土記の丘公園の茅葺き建築修復工事を見学した際に、実物を見せて頂くことができました。
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関西で「あやめ茅」と呼んでいるものと同じだという事が解りましたが、あやめ茅はとても使いやすいものの、まとまった数が採れないため難しい場所にだけ使う貴重品であるのに対して、風土記の丘公園に建つ大量の茅葺き建築群の、ほぼ全てがしまがやだけで葺かれるほどの収穫があるという話に驚かされてました。

しまがやで実際に葺くところも見学させて頂きました。写真を撮っている僕も含めて、わらわらと群がる若造職人たち。
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おまけ。風土記の丘公園にありました。
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小さな屋根を葺くのは本当に難しく、これなど正しくしまがやがあればこそというところでしょう。
「やり過ぎ」という声もありましたが、高度な職人技を遊び心に包んで置いてあるようで、僕は楽しいと思いました。

060527 茅葺きシンポ初日・男鬼のこと

投稿日: カテゴリー: ミーティング屋根からの眺め

茨城県石岡市(旧八郷町)で開催された、(財)日本ナショナルトラストが運営する「全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会」のシンポジウムに参加して来ました。

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あいにくの天気(仕事を休むには良いタイミングですけれども)ではありますが、筑波山の麓にはのんびりとした空気がひろがり、分蘗のすすむ早苗田からはカエルの声が。

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パネルディスカッションが各パネラーの報告で時間切れになり、ディスカスにまで至らないのはいつものお約束ですが、個々の報告の内容はそれぞれ興味深いものでした。

しかし、それ以上に興味を引かれたのが、滋賀県から参加されていたカメヤマさんが手渡してくれた「よみがえる ふるさと 男鬼」というパンフレットで、思わず会場で読みふけっていました。

男鬼(おおり)とは滋賀県彦根市にある山村集落で、人が住まなくなって30年以上経つ現在でも、旧住人等による営みが続けられて来た事もあり、良好な集落環境を保っているそうです。
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パンフレットは滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による調査報告を元として、男鬼の魅力を紹介することで、これからを考える活動への関心を高めていく内容となっています。

集落をそれをとりまく地理的風土、自然環境、景観要素、建造物とフォーカスしていく調査手法は、自分も環境デザイン学科在学中に繰り返していたので懐かしく思い返したりしましたが、さらに人の暮らしの詳細をそこでの一生、一年、一日、日々の作業の内容と解きほぐしていく解説は新鮮でした。

人々の営みの積み重ねが景観となるのであり、美しい景観に対してはそれを支えて来た暮らしの在り方を理解しようとするアプローチは、茅葺きを文化財として祭り上げるのではなく、日常の延長上に留め置くための生活スタイルを模索する自分のスタンスと、重なるところが多く共感を覚えます。

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廃村の再生活動はいくつかの事例を見て来ましたが、ハードとしての建造物の保存に偏ってしまったり、人を集めるためのイベントを用意しても、周辺の自然の活用にまで気が回らず景観の維持に至らなかったりして、残念ながらあまり上手く行っている例にはこれまで出会えませんでした。
日々の生活を支える経済活動として繰り返されて来た自然と共存する農山村での暮らしを、ボランティアや公共事業というかたちだけで引き継いでいくのは難しいということもあるのでしょう。
それだけに、そこでの人の暮らしと集落を取り巻く環境を俯瞰する視点を合わせ持つ男鬼楽座の活動が、今後どのような展開を見せるのか大変興味深いところです。

実は、滋賀県東北の岐阜との県境の山中には、豪雪地帯のため早めにトタンが被せられたせいなのか、茅葺きの占める割合が今でもとても高い集落が多く見られますが、過疎化の進むそれらの集落を蘇らせるようなモデルにまでなれば、湖北山村独自の新しい茅葺きスタイルが確立されるかも・・・

0526 続・葺き上げ工程

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

必要な量の茅を並べ終えたら、竹で仮に押さえて固定し、叩いて屋根の形を粗く出しておきます。
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仮押さえの竹は、茅を束ねていたサンバイコウと呼ばれる縄を再利用して、先に中押さえに張った縄に綴じて固定しています。
ところで、モノを束ねるために用意する短い紐のことを、サンバイコウと呼ぶのですが、語源もどのような漢字を当てるのかもさっぱりわかりません。どなたかご存知でしたらぜひ教えて下さい。

茅がしっかりと押さえられる適切な位置を選んで、本番の押さえの竹を配置して、屋根裏に「針受け」に入ってもらった人と協力しながら、大きな針を使って屋根下地の垂木に針金で縫い止めて行きます。
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表面から少しずつ風雨にさらされた屋根が減って行き、この竹が表れてしまったときが屋根の寿命となります。ですから、竹から奥に敷き並べる捨て茅は文字通り捨てているようにも見えますが、それによって茅の角度を適切に保てるように調節する事が、強く美しい屋根を葺くために一番必要な条件です。

押さえ竹を縫い止めるときに、足場の丸太を吊るための紐も、屋根下地の母屋からとっておいて、仮押さえの竹を外して足場丸太を吊ります。
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足場丸太に乗って、押さえの竹を足で踏みながら針金を八分の力で締めておきます。
それから、屋根表面を叩き揃えて形を整えます。

あらためて、数人並んで呼吸を合わせながら押さえの竹を足で踏みつけ、針金を締め上げてしっかりと固定します。
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最後にもう一度叩いて揃えてから、足場丸太を屋根の表面になる位置まで下げて止めます。

今回は屋根全面の葺き替えをしているため、以上の作業を東西南北の四面で繰り返しながら上がって行きます。
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フリダシに戻る。

ところで、鎌倉にいながら何となく観光スポット特有の気配が感じられて、これまで海の方へ行くのを避けて来てしまったのですが、今日は由比ケ浜の住宅地の中を散歩していたら、ある地点から風に潮の香りが混じるようになって、もともと神戸の海のそばで育った人間なのでとても懐かしい気持ちになって、誘われるままに海岸まで足を延ばしてしまいました。
やっぱり、海を眺めると心が落ち着いて気持ちが良いです。
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でも、今日は風が冷たくてTシャツでは少々つらかったので、海岸道路に面した店に逃げ込んだら、小柄なバーニーズマウンテンドッグが出迎えてくれたお店が、Daisy's Cafeでした。

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僕の偏見など見事に裏切ってくれて、鎌倉の海には楽しい人達(と犬)が集まっています。