060405 八幡めぐり

投稿日: カテゴリー: 屋根からの眺め

春の雨にしては少々肌寒い一日。
現場は動かせないので、ヤマダさんが八幡界隈を案内してくれました。くるまで。

八幡にある重文の茅葺き民家、I家住宅。公開はされていませんが、ヤマダさんのお供ということで特別に見せて頂きました。
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このブ厚い軒はこの家の見所なのですが、これって軒を残して葺き替えを繰り返しているうちに、こんな風に「なってしまった」のかもしれませんね。

たわんでいるし。
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当初は麦わらとかススキの軽めの茅材で葺かれていて、軒が厚くなっても気にされなかったのが、重量のあるヨシで葺き換えられてしんどくなってしまったのかも。

こちらはさらに驚きました。何と、裏に回ってみると総2階。
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増築に次ぐ増築の結果なのでしょうが、ここまで来たら茅葺きでなくても良いのでは?と思う程です。それでも表側を茅葺きにしているのが気概ってものなのでしょう。

こちらのお宅で、個人的に心惹かれたのがこの外蔵。
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軒下の垂木隠しがナミナミしていて、何ともかわいらしいというか、洋風な雰囲気も漂います。

八幡と言えば「流れ橋」。
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堤防沿いにすばらしい自転車道が整備されているし、やはり天気の良い日にチャリンコで再訪したいと思います。
余談ですが、この流れ橋周辺の土手の草刈りも、ヤマダさんの「山城萱葺屋根工事」で行っています。代々、巨椋池周辺のヨシ原の入会権を持ち、冬に刈り取ったヨシをスダレに加工して販売していたヤマダ家ですが、輸入品に押されてスダレの販路を失うと、ヨシは主に材料として出荷し、春夏は草刈りのノウハウを活かして堤防の管理をされています。
最近ではヨシの需要を広めるために、自らも修行して屋根屋となってヨシ葺きに忙しくされているという訳です。
何百年も欠かすこと無く毎年のヨシ刈りで手入れされて来たヨシ場を、時代が移ろっても柔軟な対応と人生をかけた覚悟で、次の世代に引き渡すべく守り続ける。
良い話。

最後に解体修理中の、田辺のこれも茅葺きの重文、S家住宅。
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これは・・・難しそうだぞ。
2棟がLの字につながっているのですが、それぞれの面がきちんと通っている訳ではないし。下地を組むだけで一苦労だろうなあ。
それだけにやりがいはありそうですが、残念ながらこの現場の茅屋根葺きが始まるのと入れ違いに、別の現場へ応援に行くことが決まってしまっているので、あくまでも見学のみ。後ろ髪引かれつつ後にしました。

今日はあまりものを考えないようにして、観光気分に浸っていました。
sh@

0404 差し茅工程

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@禅定寺

差し茅を始める前に、まず屋根表面の風化して土に変わってしまった茅を、苔ごと取り除きます。
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この苔は畑に入れると地力が衰えてしまうために、肥料にはならないそうです。
いかにも堆肥になりそうなのですが、何故だめなのか具体的にご存知の方がいれば、ぜひ教えて頂けませんでしょうか。

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屋根表面を雨水が流れることで、茅葺屋根は表面から分解して少しずつ薄くなっていきます。
押さえの竹から屋根表面までの厚みは茅葺き屋根の寿命を示す事になりますので、痩せた分だけ茅を引っ張りだして元の厚みにもどします。

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傷んだ先端部分はハサミで切り取って取り除きます。

茅を引っ張りだしたことで押さえの竹は緩んでいますから、緩んだ分だけ新たに茅を差し込みます。
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このとき、どこに、どんな茅を、どのように差すのかが、差し茅で肝心なところです。

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sh@

0401 差し茅

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@禅定寺

茅葺き屋根に降った雨は、茅材の表面張力と重力とのバランスにより、中に染み込むこと無く屋根の表面を流れていきます。従って、茅は雨に濡れる外側から風化していきますが、中は傷むことはありません。
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ちょっと一本引っ張りだしてみれば、良くわかります。
変色しているのは外側の数センチだけです。

差し茅というのは簡単に言うと、表面が風化した屋根の痩せた分だけ茅を引っ張りだして、傷んだ茅の先端部分を取り除き、引っ張りだして押さえの竹が緩んだ分だけ新たに茅を差し込む。というものです。(他のやり方もあります。あくまでも今回の場合)

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実際には茅葺き屋根は、かたちや長さが様々な茅を上手く使いこなすために、一様には葺かれていませんし、その様子は外観からではよく解りません。
引っ張ってみた手応えや感触で判断して、短くなったりしていて使えない茅は取り除き、差した茅が緩んで抜けたり、詰めすぎて茅の勾配がおかしくなったりしないように調整しながら、屋根全体を均一に新しくしていくのは、それなりに気を遣う作業です。

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sh@

0331 足場組み

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@禅定寺

あいな交流民家にも応援に来て下さった、「山城萱葺屋根工事」のヤマダさんの現場にお手伝いに来ています。

宇治田原市の禅定寺というお寺の本堂です。
今回の工事は葺き替えではなくて、「差し茅」と呼ばれる補修です。茅葺き屋根を長持ちさせるためには、適切なタイミングで差し茅を行う事が大切です。

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まずは、足場組みから。
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足場主任者講習を受けに行っても、「最近では行われていませんから」といって該当する内容を飛ばされてしまう丸太足場ですが、茅葺きの現場では今でもこれが幅を利かせています。

昔は屋根屋はハサミ一本担いで現場に行けば、材料の茅も手伝いさんの手配も、お施主さんに用意してもらうのが普通でした。別に屋根屋の怠慢ではなくて、集落共同体での農業生産の中で、そのようなものが自然と賄えた訳です。足場も、どこの家にでもあった刈り取った稲を干すための「ハサ木(稲木)」を借りて、足りなければ裏山の竹を伐って来たりして縄で組んでいた名残です。
話が逸れますが、現在そのようなかつての伝統的な生産システムに変わるような、「茅葺きと暮らすためのソフト」が構築されないまま、全てが現金決済に置き換わってしまっているのが、「茅葺きは高価」である、主たる要因でしょう。

では、今でも丸太足場にこだわるのは単なる因習かというと、そうでもありません。茅葺き屋根では軒周りの造作に手間がかかるのですが、足場の高さが絶妙な位置にないと、作業に支障が出るばかりでなく、場合によっては仕事ができなくなってしまう事すらありますが、杉丸太を番線で組み上げる足場丸太ならば、足場面の高さを屋根に合わせて自由に設定できます。また、深い軒の下まで回り込んだ足場は、柱材が短すぎるのはもちろん、長過ぎても上部先端が屋根に刺さってしまい使えません。杉丸太なら場合によっては簡単に切断して長さを調節することもできます。

足場を組んでいる途中の様子。
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足場の上にはかさばる茅材をストックするスペースも必要です。今回はあくまでも補修のために、どちらかと言うと狭め。葺き替えだと出来ればもう少し広い方がありがたいです。
sh@

060330 飛行神社

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 屋根からの眺め

屋根屋の仕事は雨が降った日が休日です。
あまり予定を立てた生活はできません。

桜の季節を目前にして、雪まじりの冷たい雨に降られたので今日は休み。

京都の八幡市に泊まり込みできています。今まで車で通過するだけだと、八幡はスクラップ工場のイメージしかありませんでしたが(失礼)、歩き回ってみると当然ながら色々と楽しいものが見えてきます。

雨宿りしたのは「飛行神社」
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ライト兄弟の初飛行に先駆けて、自力で開発したゴム動力の模型飛行機を飛ばした二宮忠八が、晩年神職をつとめた由緒正しい神社だそうです。パイロットやフライトアテンダントの試験を受ける方の合格祈願や、空の安全祈願の絵馬がたくさんかかっていました。

出稼ぎの出張が多い仕事で、しかもものすごく辺鄙なところへもしばしば滞在する事になりますが、短いあいだでもその土地で「暮らす」ことで、旅行者として訪れるのとはまた違った町の顔を垣間見ることができたりします。
それが、結構楽しいです。
sh@