0606 屋根めくり(3回目)

投稿日: 7件のコメントカテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

最後の屋根めくりです。
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棟収めは地域による違いの顕著な箇所なので、棟の解体に際しては前回のやり方を参考にできるように、検証しながら行います。

僕が現場入りした時点で雨養生の瓦は既に取り外されていましたが、休憩に縁側をお借りしている、境内に移築された旧内海家住宅の棟と同じように、瓦が重ねられた棟だったそうです。
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これ、最近どこかで見たなと思ったら、ナショナルトラストのシンポジウムで茨城の八郷を訪ねた折、当地で見たものと同じ収め方でした。

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これが常陸風土記の丘公園にあったものです。基本的に同じ手法ですね。

屋根をめくって行くと、葺き方にも関西では見られない特徴がありました。
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角の部分を独立してつくるのではなく、平面を押さえた竹をそのままコーナーに沿って曲げて、同じように押さえています。また、角の両脇を足場を吊る縄で仮押さえして、その痕跡が残っています。

こちらは常陸風土記の丘公園で見学させて頂いた現場の写真。びっくりするくらい、全く同じ手法です。
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つまり、鎌倉もいわゆる「筑波茅手」の活躍の舞台だったのか・・・いや、地元相模の屋根屋さんがいなくなってから、呼ぶようになったと考えた方が自然かな・・・

参考までに、これは美山での角付けの様子。
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コーナーの部分を先につくってから葺くので、押さえの竹は角の部分は押さえません。

これは藍那の交流民家。
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角のエッジを立てれば、コーナーまでしっかりと固めて葺くのは難しくなります。
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関西では面や角をきっちりと出すことに気を配ります。

関東の屋根は素晴らしい装飾に注力し、面や角のバランスや仕上げには、ある程度おおらかです。
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コーナーも押さえ竹でまわり込むようにして仕上げれば、角のエッジを立てるのはちょっと無理です。
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ちなみにイギリス南部の伝統的な茅屋根の葺き方や仕上げも、筑波流と同じような考え方をしています。
つくづく日本は多文化国家だなあ。

下地の上には屋根を葺く前に、10㎝ほどの厚さに茅が敷き詰められていました。
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主に葺き材の先が下地の下に入り込むのを防ぐためですが、特に下地も傷んではいないのでそのままにしておきました。

0610 庭石菖・小バコのライブ

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

境内に多くはない日当りの良い場所に、ニワゼキショウが咲き始めました。
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地味ですが好きな花です。これ、美山の我が家の小さな庭にも夏中咲き続けてくれます。もう、そんな季節になったのか。
不在の間に自宅の周りは造成工事でユンボが走り回っているので、帰宅してももう当分は見れないかも知れません。毎年一輪だけ咲いていたササユリや、一叢のミズヒキソウも絶えてしまったかも。

ところで、平均年齢が60歳を下回らない宿舎は消灯時刻が夜8時半なので、毎晩のように鎌倉の街で家出少年になっていますが、あまり他人と話さずにただぼんやりと過ごしたり、溜まっているデスクワークを片付けたり本を読んだりしたいときによくお世話になっているcafe Goatee で、今夜はエリック・バックマンのソロライブがありました。
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P.A.無し、小バコでのライブは、そこにいる全員で雰囲気を作り出して行く一体感が楽しいです。

鎌倉は小さな街なのに(しかも夜が早いのに)週末毎にどこかでライブが行われていて、神戸にいた学生の頃以来の、音楽漬けな日々を送らせてもらっています。
梅雨が明けて海の家が開くと、そこでもライブが行われるとか。楽しみです。

0615 三和土

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

屋根の形が寄せ棟なので、葺き上がるに従ってペースが上がります。
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とは言うものの、残り少なくなったように見えて、まだなかなか。

ここ数日は、本堂の犬走りの三和土(たたき)を左官屋さんが直しに来られているので、足場の下からパンパン、と賑やかな音が一日中響いて来ます。
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名前通りに叩いておられますが、なかなか大変そうです。

0618 茅葺きに雨

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

雨ですねえ。
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現場に入っても、養生シートの上げ下げに時間を費やして、半日待機という日が続いています。
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仕事ははかどらないし体も休まりません。

さて、降った雨は茅葺き屋根に染み込むこと無く、屋根表面だけを流れ落ちるという理屈を、色々な機会に解説させて頂いていますが、実際に雨の日に見てみれば良く判るかと思います。
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軒裏を見上げれば濡れているのは先端だけです。
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万一葺き方に問題があったり茅材が悪かったりして、何らかの不具合により水が染み込んでしまうとこんなことに。
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一旦水が染み込むようになると、雨が止んでも容易には乾かなくなってしまいます。

屋根がそれほど減っていなくても、雨が染み込むような事が酷くなれば、やがて軒が落ちてしまうこともあります。
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これが軒近くではなく屋根の中程であれば雨漏りが始まる事に。

もちろん、通常ではこのような事にはならないはずなのですが・・・周りに木が茂っている事等も関係しているのかもしれません。葺き替えている本堂は大丈夫だと信じてはいますけれども。

0623 棟の下ごしらえ

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@鎌倉覚園寺

昨日の段階でここまで葺き上がっていました。
葺いた茅の先端が棟木を隠してしまう前にやることがあります。
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下地の横竹は基本的には葺いた茅材が屋根裏にこぼれないように支えているだけのものです。が、棟や軒のように高さを揃えることに気を遣うときには、横竹を水平と高さを揃えて据えておいて、押さえの竹をそこに縫い付けるということをします。
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棟の大きさに合わせて高さを決めて、棟が傾いてしまうことが無いように表と裏の高さを揃えます。茅を締め付けても緩まないように太い竹を使い、しっかりと結わえ付けておくことも大切です。
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棟の下ごしらえをこなしたら後は棟まで茅を葺き上げていきます。もう少し。
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