カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山.北/甚兵衛
0922 葺き上げ/ゴモクは畑に
北の伝建地区とは離れているのですが、美山の自宅の近所で、茅葺き屋根の金属板による被覆工事が始まっています。
家の前の田んぼの法面を、毎年茅場として手入れされて来たお宅だったのですが、合併後に茅葺き保存に関する施策が定まらないなか、また一軒茅葺き替えのローテーションを中断されてしまいました。
現場の方は秋晴れのもとキンモクセイの香りが漂うなか、順調に進んでいます。
お天気続きなのですが台風の気配がどうしても拭えない事もあり、少しずつ古屋根をめくっては下地を直し、順番に葺いて行っています。
古茅のうち再使用できない分は、畑に積んで堆肥やマルチに利用します。
これからは有機肥料としてより有効に使いこなしていくための方法についても、色々と試して行きたいと思っています。
有機農業に取り組まれている方で良いアイディアをお持ちの方は、お互いに協力できることがないか話し合ってみませんか?
かやくずは土に還るまでは乾燥した可燃物です。
「かやぶきの里」見学の際は、くれぐれもくわえ煙草はご遠慮願います。
0923 棟の解体(芸州屋根屋の手跡)
いよいよ棟の解体に取りかかりました。
棟養生の杉皮を止めている「カラミ」を棟の内部から直接針金で縫い止めていたり、杉皮の端を竹串で押さえたり、棟の「段」をススキで造っていたりして、かたちは同じでも美山のやり方とは明らかに異なります。
棟の「段」は美山だとワラで造るのが普通です。
針金が棟の内部へ貫通しているので、その部分では棟の内部まで少し雨水が染み込んでいましたが、「段」がススキで造られているせいか、たいした問題にはなっていないようでした。
美山のやり方だと杉皮を貫通して縫い止める必要は無いので、棟の中に雨が入る事はありません。
それぞれの技術はどちらかが良くてどちらかが悪いというものではなくて、要はつじつまが合っていることが大切なのだと思います。
とはいうものの、裏表の棟の材料をてっぺんで互いに編み止めたりしていて、美山とは異なる技術で収められた棟はなかなか丈夫そうで参考になります。
25年前に葺き換えた職人さんは滋賀県から来られた年配の方だったそうですが、葺き方は芸州屋根屋と呼ばれている広島出身の出稼ぎ職人さん達の流れを受けた系統のようです。
それが最も顕著に表れていたのは軒の角の部分の据え方。
「つくりかや」と呼ばれるパーツをあらかじめ造っておいてから、軒の角に載せて固定します。
丹波では見られないやり方です。
意匠的に目につく場所でありながらしっかりと固めるのが難しく、傷みやすい軒の角を丈夫に設えるための工夫で、僕は岡山の職人さんと一緒に仕事をさせて頂いた機会に始めて知りました。
地理的に岡山も芸州流の影響を受けているのではないかと思います。