070906 夏の終わり

投稿日: 4件のコメントカテゴリー: 里山

久し振りに神戸の里山にやってきました。夏のあいだに繁った、藍那の茅倉庫周りの草刈りをしておくためです。
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もともと田んぼだったところでぬかるんだ場所も多く、そういう場所では茅刈りを重ねていても、痩せて乾いた土地を好むススキはなかなか生えて来なかったのですが、代わりにミゾハギが群落を造るようになりました。
萩の花も秋の七草のひとつです。手入れされた茅場のなかで、地質や日当りによって色々な植物が棲み分けているようです。

一方で人の手が入らなければ日本の自然は実にワイルドです。
それらは一見緑豊かに見えても、実際にはクズがすべてを覆い尽くそうとしているこの茅場の周りの廃田のように、単調で貧弱な植生になってしまいます。
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変化に富みやさしい日本の自然とは、あくまでも日本人が生態系の輪の中において、その務めを果たすような暮らしをしていればこそ育まれて来たのでしょう。
おじいさんとおばあさんが、日々の暮らしの中で手入れされておられた先の現場の周りのように。

ところで造形としては、日本の自然もナチュラルなアースカラーだけに彩られている訳ではありません。
人間の勝手な思い込みを吹き飛ばすような、派手なデザインにしばしば出くわします。
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草刈りをしているとササの中から現れた、この岡本太郎のオブジェかと思うような作品は、狐の錫杖(ツチアケビ)。

このタマムシのめくるめくような輝きも、また。
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アリがきれいに空っぽにしてしまった殻を、丁稚サガラが拾いました。
子供が拾えば宝物になりますね。大変な手間をかけて一枚ずつ厨子に貼った、天平人の気持ちもよくわかります。
生きているときはもっときれいな輝きを放つそうで、見てみたいものです。

神戸のアパートに戻ると、4階の窓の正面になる電信柱のてっぺんで、モズがキキキキ、ケケケケ、と高鳴きを始めました。
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見上げれば暮れて行く秋の空。
昼間は草刈りで大汗かいて来ましたが、もう既に次の季節が始まっています。

071002 脱衣室

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 里山

神戸の里山でもススキの花が咲き出しています。
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砂木の家の屋根は、以前から少しずつ刈り貯めていたススキに、淀川や宇治川のヨシを混ぜて葺いて行きます。
ヨシを取りに茅倉庫へやってきました。

茅倉庫の容量に限りがあるので外に積んでいた茅がかなり傷んでいました。厳重にシートで養生し地面からも高く上げて積んでいたのですが、わずかな穴から雨水が入り込んでいたようです。
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細かな気配りが必要な上に、やたらとかさ張る頭痛の種です。
かつては秋に刈り冬中干して乾かした茅を春に葺いたり、村の各戸の屋根裏に分散して保管した茅を順番に使ったりしていた訳ですが、つくづく上手い仕組みが出来ていたものだと思います。

倉庫の茅を運び出していると、何やら変なものが出てきました。
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卵の殻を細かく砕いて固めたような・・・

どうやらこの皮の主が、食事の後に吐き戻したもののようです。
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ヘビは脱皮の際に石の角などを使って、古い皮を引っ掛けながら脱いで行くそうですが、積み上げて揃えた茅の根本が引っ掛けるのに具合が良いようで、実にたくさんの古川が脱ぎ捨てられていました。

さらに茅を運び出して行くと、皮の持ち主自身も現れました。
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左の細い皮の主のシマヘビ。

そして、右のごつい皮の主のアオダイショウ。でっかい!
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カヤネズミのことを思うと、ヘビ達に茅倉庫の住み心地を喜ばれるのは複雑な気分ですが、大きなヘビが何匹も暮らして行けるくらいに、ネズミやカエルや鳥の巣がたくさんある環境になっていることは、喜んでおこうと思います。

0321 早春の里山

投稿日: カテゴリー: 里山

茅刈りシーズンの締めに、里山の茅倉庫まわりを刈りに来ました。
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この場所を使わせてもらい始めた頃には絡み合うクズのツタに埋もれていましたが、クズの海を開墾した中から掘り起こした梅の木が、茅刈りによる手入れを続けて来たことで、かつて棚田を見守っていたのと同じきれいな花を咲かすようになっています。

茅倉庫の前ではやがて里山公園としてオープンする日に備えて、園路を整備する工事が始まりました。
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雑木林に春の訪れを知らせてくれたサツキの花に今年は会うことは適わなそうですが、園路が完成し雑木林の手入れが重ねられていけば、やがて誰もが足場の良い道から再びサツキを楽しめるようになることでしょう。

0422 芽吹き前の茅場

投稿日: カテゴリー: 茅刈り里山

一旦美山に帰るにあたり、資材を取りに里山の茅倉庫に立ち寄りました。
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先月は梅の香りだけが春の訪れを知らせていた周りの茅場は今や春の野花の盛りです。

ここがかつて長い時間田んぼであった記憶をとどめるレンゲの他に、スミレ、タンポポ、ハハコグサ・・・最近ではあまり見かけなくなった在来種の花も多く見かけます。
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毎年冬には茅刈りによって手入れされ、春先には地表に隈無く日光の降り注ぐ茅場は、春に花を咲かせる野花に取っては理想的な環境なのでしょう。
何千年ものあいだ人の営みに寄り添うようにして、多くの野草が花を咲かせて来たはずです。

そして日当りの良い草原を好む植物は、茅刈りによってススキが元気に繁っていればこそ、ススキとともに葉を伸ばして行くことができるのです。
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ワラビもそんな草のうちの一つ。ですから、手入れの良い茅場では春にはワラビ採りが存分に楽しめます。

積み上げていた茅束の中から飛び出して来た、この小さな小さな野ネズミも、やはり人の手が入ることでつくられる茅場の環境を棲処としています。
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おそらくカヤネズミかと思われます。
文字通り、茅とともに生きるネズミですからね。