0316 下地組み

投稿日: カテゴリー: ワークショップ

先月傷みの酷かった部分の解体を済ませておいた屋根に戻って来ました。
今日から古民家族 茅葺き週間のはじまりです。
まずは下地の補修から。
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竹や丸太を縄で結わえただけの茅葺きの下地は、しなやかに揺れることで風や地震に強さを発揮しますが、時間が経てば緩んで来ますから、葺き替えの際に整えてやる必要があります。

古茅をめくって下地の横竹も外して、隙間の大きく空いた茅屋根からは、天井裏に保管されていた茅を出すのに良い具合。
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毎年冬に少しずつ刈り貯めた茅を保管するのには、広くて乾燥している茅葺き屋根の天井裏が最適です。

ずれたレン(垂木)を元の位置に戻して、ヤナカ(母屋)を補強して高さを揃えたら、横竹を配置して行きます。
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基本的に釘もコースレッドも使いません。縄だけです。その方が丈夫になるのですが、もちろん、縄がきちんと緊結されていることが前提条件。
さて、予習の成果を見せてもらいましょうか?

男結びが下手っぴだと横竹はぐにゃぐにゃに踊ってしまうのですが、なかなかきれいに並びましたね。
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下地も仕上がり、茅屋根を葺き始める準備がすっかり整いました。

0317 軒付け

投稿日: カテゴリー: ワークショップ茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

下地が出来たら、屋根の軒裏になる部分をつくります。
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手間のかかる地味な作業が続きますが、屋根の形の善し悪しを決める大切な工程なので、焦らずやりましょう。

丁寧に葺き並べた茅を押さえる竹は、でっかい針に縄を通して屋根裏に縫い止めて行きます。
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針先が屋根裏に出て来たら、中に待機している人がレン(垂木)に縄が巻き付くように、掛けかえてあげます。
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軒を止める縄は屋根の一番下に巻く事になりますから、屋根裏で針受けをする人も低いところに手を突っ込んでで大変です。

臨時の助っ人に駆けつけて下さった、山城萱葺屋根工事の職人さんたちを交えて。
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少しずつ出来て行く屋根を眺めながらのお弁当。

0319 葺き上げ

投稿日: カテゴリー: ワークショップ茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

軒がついたら、屋根の表面になる部分を葺き上げて行きます。
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茅が立ちすぎず寝すぎない最適な角度を保つように、短い茅や長い茅を交互に重ね合わせて調整しながら並べて行きます。
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色んな人が手伝いに来ていますね・・・古民家族はなかなかの大家族ですな。

40〜50㎝くらいの高さが出るだけの茅を並べたら、軒と同じように竹で押さえて下地に縫い止めて行きます。
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屋根の表面を叩き揃えて形を整えたら、息を合わせて竹を踏みしめ、縫い止めている縄を締め上げます。
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この工程を4回繰り返して、古茅をめくった分だけの新しい屋根が葺けました。
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0324 仕上げ

投稿日: カテゴリー: ワークショップ茅葺き現場日誌+古民家族@船坂/旧坂口家

屋根の上で葺く作業がスムーズに進むのは、裏山で茅の下拵えしたり運んだりする、テッタイさんの働きをする人がいればこそ。
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茅を切るのも手配するのも、段々上手になってきました。

新しく葺いた屋根と、葺き替えていない上半分の屋根の間を葺き詰めます。
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葺き詰め方が足りなければ、古い屋根が緩んで崩れますし、だからといって闇雲に詰め込んだら、茅が屋根の内部に向かって傾いてしまい、そこから雨漏りが始まります。

古い屋根は長年風雨に曝されて厚みが減っています。新しい屋根はそれにつられないように注意して、適正な厚みを保って葺き上がらなければなりません。
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だから、新旧の屋根のあいだには段差が出来るのがあたりまえ。

最後に仕上げのハサミかけ。
屋根の表面を上から順に仕上げて行ってから、軒の裏を刈り落とします。
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重いハサミを持ってのきつい姿勢での作業、「腕が笑った」のはだれでした?

そこらへんに生えている草と、みんなの力とを合わせるだけで、見違える程きれいな屋根になりました。
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来年以降も毎年刈り集めた茅の分だけ、屋根は新しく生まれ変わって行くことでしょう。
あるものを使って、必要な分だけ葺き替えながら、一緒に暮らして行くのが茅葺き民家のあるべき姿。つぎはぎの屋根は、この民家が「生きている」証拠です。

1122 茅葺きシンポ@神戸市北区

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インフルエンザ対策のために5月開催予定が延期されていた、全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会 第10回 シンポジウム「都市と農村の協働する茅葺き民家」が、11/21シンポジウム、/22見学会の日程で、神戸市北区にて開催されました。
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初日のシンポジウムは茅葺き民家を移築した八多ふれあいセンターで行われ、神戸における茅葺き再興への取り組みの他、全国各地での活動が紹介されたのに続いて、茅葺きと関わり合う活動を展開している学生たちを招いてのパネルディスカッションが行われました。

僕も自身が茅葺き職人となるきっかけをつくってくれた、母校の神戸芸術工科大学でのカヤテックコミュニティ」について紹介させて頂きましたが、

限界を超えて行こうとする集落での営みの模索を続ける、↓滋賀県立大学「男鬼楽座」、

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廃屋の再生プロジェクトから、むらづくりへ踏み込んで行こうとする、 ↓武庫川女子大学「古民家族」、

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さらに、工学院大学後藤研究室による、山梨県上条集落と福島県前沢集落での実践的な取り組みにについて発表され、活発な質疑応答が行われました。

2日目は地元の手により現役で使われている「下谷上の農村歌舞伎舞台」、再生され市民の集う場となっている「県指定重要文化財内田家住宅」、神戸最大の茅葺き民家である渕上さんのお宅を見学させて頂きました。
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今回特に印象に残ったのは、やはり元気な学生たちの活動報告で、いずれの活動も研究対象としてではなく、当事者として関わって行こうとする覚悟に満ちていたことに感心させられました。

茅葺きの魅力に触れた感動が、先輩から後輩へと生き生きと受け継がれていて、彼等の自主的な活動の継続が、茅葺きを支える人と自然の関わり合う生態系の環、人と人との営みの輪の一部として、既に欠かせない役割を果たしていました。
地道に積み重ねられる活動の様子は、まぶしく、頼もしく、元気を分けてもらう2日間でした。