1127 八多町の茅刈り

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全国茅葺き民家保存活用NWの シンポジウム会場ともなった、八多町の茅葺き公民館の葺き替えに備えた茅刈りが、今年も地元自治会と八多中学校の生徒たちによって行われました。
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茅葺屋も神戸市北区役所「茅葺き係」と、ちょこっとお手伝いに行ってきました。

農村の暮らしの技を伝えながら世代間交流を深めるこのイベント。こういうかたちでたくさんの人たちが、茅葺きに触れて下さっているのを見ると、とてもうれしくなります。
実施にあたってはご苦労も多いかと思いますが、ぜひとも続けて行って頂けたらな、と思います。
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この日の主役は地元のおじさんたちと、中学生・・・

それに、カヤネズミ(の古巣)!
昨年のイベントの際にこの茅場からは、僕が知る限り面積あたり最多の、この「茅ボール」が出て来ました。
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(写真は昨年秋の現地で見付けた、カヤネズミの巣)
さすがに、農村地域で絶えること無く刈り続けられて来た茅場は違うな、と感心したものなのですが・・・

今年は全然出て来ません!
何故?どうして?

「みんなが茅を刈るのは、人の住処と同時にカヤネズミの棲み処をつくることにもなるんだよ」とか、ちょっとイイ話しをして格好つけようと企んでいたのに。
困ったなあ。
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結局、昨年の倍近い面積を刈ったのに、全部合わせてやっと4つ・・・

大勢で刈るのが良くないのかな?・・・いや!まさか、それは昔から変わらないはず。
冷夏だったのとか影響したのかな?・・・そう言えば、ススキの生育も去年より良く無いな・・・

彼等は一体どこへいってしまったのでしょうか?
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(写真は今年の春現場に、御殿場産の茅に紛れて、富士山麓からやって来たカヤネズミ)

1212 茅刈りイベント in 花山中尾台

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第2回目の開催となる、神戸市北区役所主催の茅刈りイベント
昨日の雨は止んだもののまだ雲は厚く、時折日が差す程度では、午後からの茅刈りまでにススキが乾いてくれるかどうか気を揉む、昨年と似たような展開となってしまいました。
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そんな状況の中で、今回も朝から黙々と参加者のために鎌を研ぐ、丁稚サガラ。

午前中は神戸市の茅葺き民家保存への取り組みと、茅刈りについてのレクチャー。
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そうこうしているうちに弱いながらも陽も射して、アスファルトも乾いて来ました。茅場のススキも乾いている頃でしょう。

そこで、午後から茅場へ移動してみると、 茅が無い・・・
ように見えるくらいに、尾花(ススキの穂)のつきが良くありません。
と、いうかほとんどついていません。
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夏に様子を見にきた時には、勢い良くススキが伸びていたのですが・・・
昨年「みんなで刈っていけば、秋になるごとにススキの穂が輝くようになりますよ」とか、参加者の皆さんに話していた手前、八多町での茅刈りに続いて、なんだか格好のつかないことになってしまいました。

尾花がついていないと、ぱっと見てススキなんだか、雑草なんだか良くわかりません。
ススキの株を探しながらの茅刈りとなってしまいました。
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お米が不作の年には、同じイネ科のススキも生育が悪く、何年か前の冷夏の際には文化財修復のための茅材が、全国的に不足したことがありました。
今年も夏に雨続きだったせいでしょうか?
でも、近くの高速道路法面では一面の尾花が揺れているので、この茅場だけ不作なのが腑に落ちません。

もっとも、刈ってみれば穂は無いながらしっかりと棹は立っていて、束ねて茅に拵えることは問題なくできました。
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むしろ、細くて真っ直ぐで、茅としてはなかなかの品質です。

尾花のついていない棹の先をよく見てみると、一応穂はつくられているものの、開かないまま枯れてしまっているようです。
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さらにその穂の穂首の辺りを見てみると、ハカマに包まれた茎がえぐり取られたように切断されていました。
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何かの虫の食み跡のようにも見えますが・・・
それにしても近辺でこの茅場だけ?全部?

昨年に続いてナンバンギセルの花の跡が見付かりました。
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ススキの地下茎に寄生する植物ですが、こいつが爆発的に増えてススキの精気を吸い取ってしまった訳でも無さそうです。
数はそれほど多くも無くて、万葉集にオモイグサと詠まれた印象通り、控えめに咲いていた感じでした。

道の辺の 尾花がしたの 思ひ草 今さらさらに なにか思はん

来年こそ、一面のススキが秋の陽射しに輝くさまが見れると良いですね。

おまけ。
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文化財課の方が持って来て下さった、サヌカイトの石包丁。
実験!「縄文人は石器で茅刈りをしたのか?」の詳細と検証は、こちらに、いずれ、そのうち、UPされるかもしれません。

僕の個人的な感想としては、肥料喰いの米や麦の本格的な栽培が始まるまでは、葺き替えの度に出る大量の古茅の需要が無いので、分厚い茅葺き屋根を葺くために広い面積で茅刈りをするよりは、もっと他の方法で屋根を葺くと思いますけれども。

0606 土壁塗り体験会

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昨年の初夏に屋根を葺いていた赤井家住宅で開かれた、土壁塗りの体験ワークショップに参加させてもらいました。
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一年経って屋根も落ち着いた良い色になってきています。

下地の小舞は左官屋さんによってかかれていましたが、参加者にも少し体験させて下さいました。
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竹小舞を透かす光は何度見てもとても美しくて、施主ならぬ気楽さから、つい「このままでも良いのでは・・・」という言葉が出そうになります。
長い長い建物の生涯の中で、ほんの一瞬だけ見せてくれる涼やかな姿。

修理前の古壁の土や、解体された付属の蔵の土も混ぜられて、一年寝かせて熟成された土。建物の歴史や記憶もたくさん詰まっています。
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壁に塗るためには、まずこれを捏ねなければなりません。なかなか堪える作業です。塗る方は楽しいのですけれど、しっかりと土つくりが出来ていないと先には進めません。

土が出来たらさっそく壁に。子どもたちは素手でぺたぺた塗り込んで行きます。
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文字通り「自分の手で」家を造った体験は、彼等の中でどんな想い出として残るのでしょうか。

せっかくの機会なので、大人は鏝の使い方も勉強しましょう。
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見てると簡単そうでも、当然ながらやってみるとかなり難しい。でも、引き込まれる作業なんですよね。やり始めると止められない。

忙しい指導の合間を縫って、参加者の塗った壁をさりげなく仕上げてまわる左官屋さん。
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前に出過ぎす、突き放さず。絶妙な立ち位置でサポートして下さる職人さん。
自分が体験してから職人さんの仕事を見せて頂くと、あらためてそのすごさに感服してしまいます。

作業のあとには、あかい工房棟梁が変身した料理長による、豪快絶品料理の数々。
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素材を活かした味に舌鼓を打ちつつ、僕たちはおいしいごはんを食べるために、出会って、働いて、生きているのだということを噛み締めていました。

0719 男鬼の茅葺き2010

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今年も滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、男鬼での茅葺きに参加して来ました。
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崩壊寸前だった山手側の屋根を、軒から順に葺き替えはじめて3年目。とうとう棟にまで至りました。

棟に近づくと、葺き並べた茅の先が越えてはみ出てしまいます。はみ出た分が無駄にならないように、茅を切るのも屋根の残りにに合わせて長さを調整しながらとなります。
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茅切りしている地面から、バケツリレー式に茅を届ける葺いている場所までの距離も遠くなりますが、加工した茅の「仕掛品」が出ないように、葺く人と茅を切る人とで連絡を密にして、互いの作業内容を確かめ合いながら進めることが大切です。

毎年少しずつ茅を集めて、葺いて、積み重ねて山側の屋根はきれいに葺き替えられました。
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既に住む人がいなくなって久しい男鬼の集落ですが、人が関わり続けることで集落としての気配を保ち続けています。人の営みが重ねられた環境は、自然の中に適度なアクセントを加えて、原生の自然よりもはるかに多くの生き物たちに暮らしの場を与えています。
山村の佇まいを眺めていると、人の暮らしもまた自然の一部なのだと実感します。

自然に正直に、丁寧に暮らしたいと思う人は増えていますが、自然とともにある正しい人の暮らしとは、エコとかロハスとか外から持ち込むものではなくて、その場所が求めている声に耳を傾けて、ようやく教えてもらえるものだと思います。

長く営まれて来た集落の暮らしは、まさにそんな生き方のお手本でです。
男鬼に携わった学生たちは、そこでの営みを通しての様々な発見を、きっと少しずつ社会に還元して行ってくれることでしょう。