0612 下地拵え-小棟-

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@神戸/赤井家住宅

カヤマル済んで、今まで手を付けていなかった、上の方の下地を仕上げにかかります。
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養生シートは面積が大きくなる程に風を孕んで危険になるので、今回のように屋根全面を葺き替える際でも、一度に全てのシートをめくって作業することは避けるようにします。

軒まわりの茅屋根が葺きあがってから、一旦シートを外して上の方の下地を仕上げ棟まで葺いて上がれるように段取りし、軒がついた分だけ一回り小さなシートを使って養生します。
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この屋根は美山と同じく、寄せ棟の構造に小棟と呼ばれる、破風(煙出し)の部分が載ったつくりになっています。
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入母屋の破風まわりは茅の収まりもややこしくなるのでそれに対応できるように下地にも細やかな心配りが必要になります。

0620 葺き上がり

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@神戸/赤井家住宅

葺き並べた茅の穂先が棟に届くようになると、表と裏で並べた茅が押し合い邪魔をするので、まず道路に面した側だけを棟まで葺き上げました。
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棟を越えてはみ出して来た茅を切り揃えてから、庭に面した側の屋根も葺いて行きます。
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はみ出していた茅は棟の材料の一部となります。

屋根が下地に対して起き過ぎれば並べた茅は固まらず傷みやすく、寝過ぎれば薄く寿命の短い屋根になってしまいます。
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適切な勾配に気を配って葺いて来ましたが、念には念を入れて最後の確認。
表と裏で葺き勾配が違えば、棟が傾いてしまいますから。

無事に葺き上がり、いよいよ明日からは棟積みです。
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0624 棟収め

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棟を積んで行く手順は美山の屋根と同じです。
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棟に横積みした茅を止める一番最後のオシボコを、覆って養生するのに短い藁や茅のシン(穂先)では無く、長いままのススキを用いるのが少し違います。
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養生する材料が棟の端からこぼれ落ちないように塞き止めるのに、杉皮で巻いたワラ束ではなく、板材を組んだ木製のものを使っているので、それに合わせて形を整えるためです。
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この木製の端止めは、棟の仕上げにトタン板を使った場合とても具合が良さそうでした。

今回は杉皮を使ったのであまりメリットは感じず、むしろワラ束の方が馴染みが良さそうに思います。
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最後に美山と同じような木を組んだ所謂「千木」を棟飾りに据えますが、実はひとつひとつのサイズは美山のウマノリの半分もありません。
美山のウマノリが杉皮を押さえる角材を重さで固定していたのに対して、神戸の棟は杉皮の隙間から針金で縫い止めてしまっていて、ウマノリは文字通り棟の「飾り」以上の機能を持たないので、大きく重い必要が無いからです。

神戸の茅葺き屋根は入母屋で千木の棟で、美山の屋根と見た目はそっくりですが、実際に葺いてみるとやはり細かいところは少しずつ違います
例えば棟は、針金やトタン板のような金属材料をより活用するように配慮されている印象を持ちました。

0628 刈込み

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無事に棟も収まって、仕上げにハサミで刈込みます。
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見ているさくさくと子気味良く刈って行くようですが、大きな屋根鋏は重くて疲れるし、仕上げた屋根の照り返しはきついし、なかなか厳しい作業です。
それでもやはり、個人的に刈込みは「屋根屋の花道」だと思います。
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ハサミが切れないと疲れるだけではなく、仕上がりにも響いてしまうので日に何度も研ぎ直します。
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たとえどんなにハサミが切れても、葺いて上がる段階で正しく葺かれていない屋根は、刈込んでもきれいに輝いてはくれません。
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長い工期のあいだ毎日積み重ねて来たことが誰の目にも明らかになるので、刈込みは怖くもあり誇らしくもあるのです。

0704 軒刈り/竣工

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棟から順に刈込んでは足場を外して来て、軒まで下りて来たら軒裏を刈り落とします。
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葺き替える度に屋根は新しく甦りますが、全く真新しくなるのではなく、葺き替えを重ねた趣きを匂わせてくれるというか、何とも言えない味わいを備えていると思います。
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葺き替える前の姿と比べてみると、新しくなったことで機能的な頼もしさを取り戻しながら、新品のいやらしさををまとわないのは、自然素材と手仕事による茅葺きという建築ならではでしょう。
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足場が外れて、道路側と庭側とで大きく異なるこの屋根の表情を楽しめるようになりました。
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間もなく大工さんと左官屋さんによって屋根の下もレストアされて、あかい工房オフィス兼、上津茅葺き保存会の拠点として、多くの方々を繋ぐ場となり、末永く愛されて行くのでしょう。
そんな屋根に茅葺屋として携わらせて頂けて、本当に幸せでした。