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2007年03月10日

●070310 啓蟄過ぎて

久し振りに神戸の里山に。
ウグイスはまだ少したどたどしいものの、日差しは既に春のもの。雑木林に時折キジの声も響きます。
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武相荘、清蓮亭と続いたせいで、今年は茅刈りを後回しにして来ましたから、ススキは充分に枯れています。
いやむしろ、そろそろ刈り取りを急がなければ、今にも新芽が出て来てしまいそうです。

しかし、小さな茅倉庫は既に満杯なので、刈り取った茅を収納する場所をまず確保する必要があります。
去年の秋から屋外に積みっぱなしの茅も何とかしなければなりません。
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材料も手伝いさんもお施主さんが用意されて、屋根屋はハサミとタタキを担いで行けば仕事ができた時代と異なり、現代では品質の良い充分な量の茅と、仕事のできる手伝いさんを手配できることが屋根屋の甲斐性です。

とはいえ、茅は湿気や雨漏りに致命的に弱い上にとてもかさばるので、茅倉庫の確保は正直大変です。
ブルーシートを被せて保管するのは、短期ならともかく湿気がこもるので茅を傷めかねません。きちんとした倉庫を用意するお金も時間もありませんが、暖かくなる前にとにかくシートを剥がしたいので、足場用の単管を組んで覆いとすることにしました。
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高所作業は慣れたものではありますが、普段の屋根葺きでは丸太の足場ばかり使っているので、なかなか段取り良くは行きません。

ラチェットを使うのも単管を高速切断機で切るのも「使いながら慣れろ」。
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しかし、組んでみてはやり直し、また組みかけては足りない部品に気付き買いに走り、という繰り返しで、ちっとも捗りません。
文化財工事などの際に、鳶さんが現場を覆う素屋根を組んでいるのを見ていると簡単そうなのですけれども。
難しいことをさも簡単そうにこなしてしまうのが職人技だったのだと、あらためて思い知る毎日です。

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コメント

わ〜そっか〜茅を保存する場所が必要なのですね〜最近、枯れたススキをよくみます。あのすすきが材料になるのですね。すごいことですね!
ビニールシートをかけていると、少し保存方法をまちがえると、中で蒸れたり、カビがはえたり、虫がわいたりすることがあるかもしれませんね。
大変なお仕事だけに、やり遂げたあとの充実感は格別ですね♪しかも、よろこんでくださる人がいる、ということは、なによりもの幸せですね♪
先日、伊丹の古い酒蔵を訪ねました。400年前の蔵の中を案内してもらったとき、屋根も見せてくださいました。表から見たとき、飾り屋根といって、「入」の形がかわらで表現されていて、昔の人の遊び心と技術にまいりました!屋根屋さんとの交流のおかげで、屋根のお話も、とても興味深く聴くことができ、感謝です!ありがとうございます!

>難しいことをさも簡単そうにこなしてしまうのが職人技だったのだと、あらためて思い知る毎日です。

思わず、にんまりしてしまいました。
本当におっしゃる通りですよね。
塗料を塗っても、左官工事を手伝っても、その都度違う場所が痛くなります・・・。

とまとん さん、ceico さん、コメントありがとうございます。

とまとん さん、
今日シートをめくりましたが、案の定大量の茅にカビを生やしてしまい、あらためて干すはめに・・・
横積みにしている茅のほんのちょっとした勾配で、雨水は小さな隙間から奥へ奥へと入り込んでしまうので。
やれやれです。

しかし、こんな苦労も確かにお施主さんが喜んで下されば報われます。

ceico さん、
他の職種の職人さんがされている仕事を傍で見ていると、いかにも簡単そうに楽しげに作業されているので、自分もちょっとやってみたくなってしまいます。

でも、見ているのとやってみるのとでは大違いなんですよね w

職人さんは熟達されているからこそ、軽やかにこなしてみせることができるわけで。

材料の手配や管理など、普段みられないお仕事も茅葺きやさんのお仕事なのですね。知りませんでした。私も、武相荘で、いかにも簡単そうに(本当は、大変で、熟練の技なんだろうと思っています。。見ている方は、リズムがあって、気持ちよくて、かっこよかったでしたよ〜)たたいているのをのをみていました。
前日の日記で、茅が重たいお話、骨組みのためには、必要だったなんて、建物も、自然といっしょで、バランスがとれているんだと思いました。
毎年、もものはなを見に山梨のほうに行くのですが、(ナガノさんから)山梨って茅葺きの家が多いとお聞きしました。
電車なので、遠いところはいけるかわかりませんが、お時間がありましたら、おすすめの茅葺きなどがあったら、教えていただけないでしょうか。。古い建物とか、自然の中のものというかんじのものが大好きなんです。。

k o k u b o さん、コメントありがとうございます。

仕事は何でも「段取り八分」ですよ w
仕込みが手間なんです。

職人の仕事は端で見ている分には簡単で楽しそうなんですけれどね。桶屋さんとか畳屋さんとか子供の頃に長い時間見とれていました。
武相荘の屋根も簡単そうに見えたということは、仕事が上手く行っていたということですから、そう言ってもらえると励みになります。

山梨についてはそれほど詳しいわけではありませんが、自然の中に建つ古民家が多く見学できる場所だと、忍野村の「忍野八海」はいかがでしょうか。豊かな湧水の地に富士山を背景にした茅葺き民家が絵になります。

また、昨夏オープンした「西湖いやしの里根場(ねんば)」も話題の場所です。
富士山を望む湖畔の斜面に十数棟の茅葺き民家が再建されて、様々な体験プログラムも用意されているようです。何でも「ごろ寝の間」というのもあるらしくて、茅葺きの縁側での昼寝が楽しめそうです。
建物は新築ですが、かつて土石流で消失した集落を忠実に再現しているそうですから、周辺の自然環境とは良く調和しているのではないでしょうか。
不確かな情報で申し訳ありませんが、河口湖駅からの送迎バスもあったように思います。

山梨行で良い風景と出会えましたら、ぜひまたその様子など知らせて下さい。

武相荘、本当に、リズミカルでしたよ!簡単にたたいているようにみえて、たたいた後、また美しくかわっているのが、みていても、楽しかったです。お返事ありがとうございました。両方とも、調べて、友人と相談してみます。楽しみになりました。

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