0109 カヤカル'10ヨシ編@淀川 十三干潟

投稿日: カテゴリー: 茅刈り体験会「カヤカル」

今年もやって来ました、淀川は十三干潟のヨシ原へ。
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この写真は合成ではありませんよ、念のため。
本当に梅田の目の前に、野鳥が飛び交うこんな草原が。

参加者にはいきなり、鎌と一緒に砥石が配られます。
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刃物は使う前にまず研がねば。
砥石を使ったことがなくても、研がねば。

ヨシ刈りと言えば、この方。
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山城萱葺屋根工事のヤマダさんから、刈り方の説明。

道具と方法を手に入れたら、早速ヨシを相手に挑みます。
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実践あるのみ。

ヨシが枯れきった真冬に刈るので、肌寒い曇りの日は避けたいところですが、お天気に恵まれても海に近い十三干潟では、日が差して地温が少し上がると冷たい海風が吹き込んで来るから、いつも寒かったようなイメージが残っています。
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でも今年は、うらうらと暖かい陽射しの中ほとんど風も吹かずに、のんびり気分で刈ることが出来ました。

動いていないと寒い!何てことがないからなのか、お昼ごはんのあとに何か始まりました。
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普通ヨシズを編むには、錘りを利用した道具が必要なのですが、「手」がいっぱいあれば道具無しでも編むことができそうです。
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あっという間に、ちょっとしたものができましたよ。
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温暖化防止のための壁面、開口部の遮熱には、ヨシズは素晴らしい性能を発揮します。
これからの最新トレンドは、ビルも住宅も屋根は茅葺き!壁面はヨシズ(国産)!

広い広いヨシ原。
でも、本当に茅葺きに適したヨシが生えるところは、限られています。もちろんそれとて相当な面積ではありますが。
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茅葺きに適さないヨシが生えた場所も含めて、ヨシ原全体を効率良く手入れするには、やはり火入れが欠かせないのですが・・・

刈り取ったあとにはゴミが目立ちますね。上流での暮らしの中から流れて来たものです。
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いくらヨシ原が川をきれいにしてくれるといっても、生活ゴミまでは処理してくれません。
「良い子は川にゴミを捨ててはいけません」

Knife Ridge (シリーズ 茅葺く風景)

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 屋根からの眺め

てっぺんで景色を楽しんでいる訳ではありません(多分)
棟の水平や密度を確認するには、上に立ってみた感覚で確認するのが一番なのです。
棟には杉皮や竹といったデリケートな素材を使っているため、ダメージを与えないように足場に出来るのが、てっぺんの角材(ヒ(樋)と呼びます)しかないという事情もあります。

1212 茅刈りイベント in 花山中尾台

投稿日: カテゴリー: ワークショップ

第2回目の開催となる、神戸市北区役所主催の茅刈りイベント
昨日の雨は止んだもののまだ雲は厚く、時折日が差す程度では、午後からの茅刈りまでにススキが乾いてくれるかどうか気を揉む、昨年と似たような展開となってしまいました。
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そんな状況の中で、今回も朝から黙々と参加者のために鎌を研ぐ、丁稚サガラ。

午前中は神戸市の茅葺き民家保存への取り組みと、茅刈りについてのレクチャー。
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そうこうしているうちに弱いながらも陽も射して、アスファルトも乾いて来ました。茅場のススキも乾いている頃でしょう。

そこで、午後から茅場へ移動してみると、 茅が無い・・・
ように見えるくらいに、尾花(ススキの穂)のつきが良くありません。
と、いうかほとんどついていません。
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夏に様子を見にきた時には、勢い良くススキが伸びていたのですが・・・
昨年「みんなで刈っていけば、秋になるごとにススキの穂が輝くようになりますよ」とか、参加者の皆さんに話していた手前、八多町での茅刈りに続いて、なんだか格好のつかないことになってしまいました。

尾花がついていないと、ぱっと見てススキなんだか、雑草なんだか良くわかりません。
ススキの株を探しながらの茅刈りとなってしまいました。
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お米が不作の年には、同じイネ科のススキも生育が悪く、何年か前の冷夏の際には文化財修復のための茅材が、全国的に不足したことがありました。
今年も夏に雨続きだったせいでしょうか?
でも、近くの高速道路法面では一面の尾花が揺れているので、この茅場だけ不作なのが腑に落ちません。

もっとも、刈ってみれば穂は無いながらしっかりと棹は立っていて、束ねて茅に拵えることは問題なくできました。
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むしろ、細くて真っ直ぐで、茅としてはなかなかの品質です。

尾花のついていない棹の先をよく見てみると、一応穂はつくられているものの、開かないまま枯れてしまっているようです。
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さらにその穂の穂首の辺りを見てみると、ハカマに包まれた茎がえぐり取られたように切断されていました。
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何かの虫の食み跡のようにも見えますが・・・
それにしても近辺でこの茅場だけ?全部?

昨年に続いてナンバンギセルの花の跡が見付かりました。
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ススキの地下茎に寄生する植物ですが、こいつが爆発的に増えてススキの精気を吸い取ってしまった訳でも無さそうです。
数はそれほど多くも無くて、万葉集にオモイグサと詠まれた印象通り、控えめに咲いていた感じでした。

道の辺の 尾花がしたの 思ひ草 今さらさらに なにか思はん

来年こそ、一面のススキが秋の陽射しに輝くさまが見れると良いですね。

おまけ。
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文化財課の方が持って来て下さった、サヌカイトの石包丁。
実験!「縄文人は石器で茅刈りをしたのか?」の詳細と検証は、こちらに、いずれ、そのうち、UPされるかもしれません。

僕の個人的な感想としては、肥料喰いの米や麦の本格的な栽培が始まるまでは、葺き替えの度に出る大量の古茅の需要が無いので、分厚い茅葺き屋根を葺くために広い面積で茅刈りをするよりは、もっと他の方法で屋根を葺くと思いますけれども。

1127 八多町の茅刈り

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: ワークショップ

全国茅葺き民家保存活用NWの シンポジウム会場ともなった、八多町の茅葺き公民館の葺き替えに備えた茅刈りが、今年も地元自治会と八多中学校の生徒たちによって行われました。
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茅葺屋も神戸市北区役所「茅葺き係」と、ちょこっとお手伝いに行ってきました。

農村の暮らしの技を伝えながら世代間交流を深めるこのイベント。こういうかたちでたくさんの人たちが、茅葺きに触れて下さっているのを見ると、とてもうれしくなります。
実施にあたってはご苦労も多いかと思いますが、ぜひとも続けて行って頂けたらな、と思います。
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この日の主役は地元のおじさんたちと、中学生・・・

それに、カヤネズミ(の古巣)!
昨年のイベントの際にこの茅場からは、僕が知る限り面積あたり最多の、この「茅ボール」が出て来ました。
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(写真は昨年秋の現地で見付けた、カヤネズミの巣)
さすがに、農村地域で絶えること無く刈り続けられて来た茅場は違うな、と感心したものなのですが・・・

今年は全然出て来ません!
何故?どうして?

「みんなが茅を刈るのは、人の住処と同時にカヤネズミの棲み処をつくることにもなるんだよ」とか、ちょっとイイ話しをして格好つけようと企んでいたのに。
困ったなあ。
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結局、昨年の倍近い面積を刈ったのに、全部合わせてやっと4つ・・・

大勢で刈るのが良くないのかな?・・・いや!まさか、それは昔から変わらないはず。
冷夏だったのとか影響したのかな?・・・そう言えば、ススキの生育も去年より良く無いな・・・

彼等は一体どこへいってしまったのでしょうか?
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(写真は今年の春現場に、御殿場産の茅に紛れて、富士山麓からやって来たカヤネズミ)

1122 茅葺きシンポ@神戸市北区

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: ワークショップ

インフルエンザ対策のために5月開催予定が延期されていた、全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会 第10回 シンポジウム「都市と農村の協働する茅葺き民家」が、11/21シンポジウム、/22見学会の日程で、神戸市北区にて開催されました。
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初日のシンポジウムは茅葺き民家を移築した八多ふれあいセンターで行われ、神戸における茅葺き再興への取り組みの他、全国各地での活動が紹介されたのに続いて、茅葺きと関わり合う活動を展開している学生たちを招いてのパネルディスカッションが行われました。

僕も自身が茅葺き職人となるきっかけをつくってくれた、母校の神戸芸術工科大学でのカヤテックコミュニティ」について紹介させて頂きましたが、

限界を超えて行こうとする集落での営みの模索を続ける、↓滋賀県立大学「男鬼楽座」、

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廃屋の再生プロジェクトから、むらづくりへ踏み込んで行こうとする、 ↓武庫川女子大学「古民家族」、

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さらに、工学院大学後藤研究室による、山梨県上条集落と福島県前沢集落での実践的な取り組みにについて発表され、活発な質疑応答が行われました。

2日目は地元の手により現役で使われている「下谷上の農村歌舞伎舞台」、再生され市民の集う場となっている「県指定重要文化財内田家住宅」、神戸最大の茅葺き民家である渕上さんのお宅を見学させて頂きました。
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今回特に印象に残ったのは、やはり元気な学生たちの活動報告で、いずれの活動も研究対象としてではなく、当事者として関わって行こうとする覚悟に満ちていたことに感心させられました。

茅葺きの魅力に触れた感動が、先輩から後輩へと生き生きと受け継がれていて、彼等の自主的な活動の継続が、茅葺きを支える人と自然の関わり合う生態系の環、人と人との営みの輪の一部として、既に欠かせない役割を果たしていました。
地道に積み重ねられる活動の様子は、まぶしく、頼もしく、元気を分けてもらう2日間でした。