1103 葺き上げ/屋根裏の木登り

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/O邸

職人の数が揃っている現場なので、屋根の表裏に分かれて同時に葺くことができています。
表裏ふたりずつの職人が、それぞれの両角に責任を持ちペアを組むので、表と裏で互いの早さと仕上がりの良さを横目に睨みつつ、何となく競争が始まります。
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葺き並べた茅の先が棟を越すようになると、表裏で押し合いになって仕事にならないところですが、そこは気心知れたもの同士、競争しつつも互いにタイミングを計って、現場を止めたりはしません。

棟近くまで葺き上がってくると、屋根裏で針受けをするのも、足場の確保に一苦労することになります。
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屋根裏で棟木を支える棟持柱によじ上っての作業。屋根屋には体重制限が避けられませんね。

無事に葺き上がり、棟を積む段取りにまでこぎつけました。
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小さな現場は茅葺屋で切り盛りすれば小回りが利きますが、棟を積み直すような大きな現場は、皆で集まって葺くと捗ります。互いに意識し合うから活気も出ますし。

とは言いながら、いつの間にやら色づきはじめた山に、季節が進んでいることを知らされます。
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雑木林の紅葉は、まず黄葉から始まるみたいです。

1030 屋根茸

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

そんな名前のキノコは多分ありませんが、砂木の家の屋根にキノコが生えて来てしまいました。
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屋根屋にとって茅の確保はもちろん、その保管も頭の痛い問題です。かさ張るうえに雨漏りや地面からの湿気、結露など、湿気によってだめになってしまうこともあるからです。
大切な茅を捨てるのも忍びなく、濡れた茅を往生際悪く干してみたりして、とはいえさすがにお施主さんのところには持って行けず・・・そんな茅がこの屋根にはたくさん集まってしまいました。

濡れて菌糸で真っ白になっていた茅。今更乾かしてみても、キノコをつくる準備はすっかり整っていたという訳です。
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キノコはハサミでチョン、と切り取って、土間での焚き火を再開して屋根も燻すことにします。
気休めですけれどね。
それにしても、苔も生えぬうちからキノコが生えるとは。

1029 葺き上げ/コマいヘビ

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/O邸

なかむらの現場は、職人の人数が揃っているので裏表同時に葺いています。
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天候の安定する季節にも助けられて、仕事は捗っています。

アリゴシまで葺き上がると、両角は狭い範囲で茅の向きを急激に変えなければならず、一層手間がかかるようになります。
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そこでケラバにあらかじめ短い茅をかきつけておくと、作業効率の向上と仕上がりの丈夫さの一石二鳥となります。

ところで、一服している足下でこんなヘビをひろいました。
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以前茅倉庫から小さなヘビが続々と出て来たことがありましたが、比べ物にならないほど小さいですね。
ヘビは茅葺き屋根の守り神ですから、大切にしなければ。

1024 壁塗り(屋根も) その3

投稿日: カテゴリー: 茅葺屋の住まい@砂木の家/新築

仕事から帰ると、荒壁の裏塗りがされていました。
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左官屋さんが鏝で押さえた、塗り立ての壁はつやつやとしてきれいです。

裏側を塗ると、かちかちに乾いていた表側にも水分が滲みて来て、貫の影を浮かび上がらせました。
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裏を塗ると表も濡れるというのは、考えてみれば当たり前なのですが、少し意外に感じました。
現場で左官屋さんとご一緒することは少なく無いのですが、他の職工さんの仕事をまじまじと見る機会はあまり無いので、知らないことが多いです。

さて、砂木の家では壁だけではなく天井裏にも土を塗りました。
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換気塔である茅葺きの屋根裏への通気を妨げないように、ロフトの天井と茅葺き屋根の間には充分な空間を確保するようにしてあります。

そして、ロフトの天井板の上には、蔵を塗り込める要領で土を載せてもらいました。
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こうすることで天井裏は「半屋外」と割り切ってしまえば、外気を充分に取り込むことで、夏の涼しさと冬の暖房効率を両立出来るのではと考えています。
もうひとつ、万が一茅葺き屋根が火事になった時に、外に逃げ出す時間と空間を稼ぐこともできます。

ところが、ひとつ思いいたらないことがありました。
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天井裏に壁土を載せたら、天井板に水が滲みて来てしまったのです。
考えてみれば当たり前なのですが、全然予想していなかったので意外でした。

断熱と火災対策のために茅葺きの天井裏に土を載せるのは、大和天井として関西では広く行われているのですが、その場合は竹簀子の上にむしろを敷いて土を載せます。そうすれば少々水が滲みても問題なく、土も早く乾くでしょう。
砂木の家も天井板に少々シミができたくらいでたいしたことはなさそうですが、昔ながらのやり方は、やはり理に適っています。

1021 葺き上げ/スゴいヘビ

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@美山/O邸

ナカノさんの美山茅葺き株式会社の現場へ応援に、伝統的建造物群保存地区の「北」集落のとなり、「中」にやって来ました。
ちなみに地元では、北はきたむら、中はなかむらと呼んでいます。
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大野の現場を片付けてからおっとり刀でやって来ましたが、既に軒付けは終わっているところからの合流となりました。

暖かな良いお天気が続いていますが、こちらの現場に来てから、冬鳥のジョウビタキが「ヒッ、ヒッ、」と短くホイッスルを鳴らす声を聞くようになりました。
少しずつですが、冬は確実に近づいて来ています。
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そんな小春日和に誘われたのか、こんなとんでもない体色のヘビが散歩していました。
ヤマカガシなのかなあ?体色変化の多いヘビだけれども、こんなカラフルなのは初めて見ました。

現場の方はヘビとは関わりなく順調に進んでいます。
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ナカノさんのところの若い衆は武相荘坂野家薬師門など、以前は泊まり込みで良く一緒に仕事をしていましたが、すっかり一人前の職人に育った最近では、各地の現場を任されて忙しいようで、会う機会も減っていましたから一緒に屋根を葺くのが懐かしいです。