投稿者: shiozawa
060328 早春
060326 トタンもスタイルのひとつ
瓦や金属板やが開発されたり、木を板に挽けるようになる以前には、広い面積の屋根を覆うための材料としては、一般的に土や毛皮の他には茅葺きしかありませんでしたから、茅葺き屋根の民家は世界中で見ることができます。
しかし、茅葺き屋根をすっぽり金属屋根で覆ってしまうというのは、おそらく日本だけでなされているのではないでしょうか。
ヨーロッパの茅葺きは茅材の根元を屋根の外側に出して厚めに葺く、「真葺き(まぶき)」という葺き方をする点で日本のそれと近いものがあるのですが、当地では茅葺きでもスレート葺きでも、あるいは石やタイルや金属板で葺かれていても、屋根の勾配や下地構造にたいした変化はありませんので、茅葺きの葺き替えをしたくなければ、気軽に他の材料を選ぶことができてしまいます。わざわざ被せる必要はありません。
これはイギリスの例ですが、茅葺きに戻すのも簡単で、茅葺きが他のマテリアルと変わらぬ選択肢として用意できるという点で、うらやましくもあります。
世界的には茅材の穂先を外に出す、「逆葺き(さかぶき)」の方が多いと思いますが、逆葺きは薄く簡単に葺いて、傷むのも早いけれどまたすぐに葺き替えたら良いという考え方が普通なので、茅葺きをやめるときにはやはりわざわざ被せたりせずに、別の材料に取り替えてしまいます。
これはバングラディシュの例ですが、中央奥が従来の茅葺き、手前左右がトタンに葺き換えられた屋根です。トタンに換えられた屋根の中には、茅は入っていません。
茅葺きが農の営みの中で必要とされず、金属板を現金で購入する方が自然な行為であった時代に、茅葺き屋根の遮熱性能や外観を保つための工夫として、日本独自に発達した「カンヅメ屋根」は、「ある時代を代表する民家の様式」として認められてもよいのではないでしょうか?
民家を滅び行く過去の遺物ではなく、今も生きづつける文化として捉えたならば、そのような考え方にも違和感は無いと思うのですが・・・
sh@
060324 トタンも「茅」のうち
茅葺き屋根は、そこに暮らす人にとって最も合理的に入手できる材料で葺かれます。
山がちなところではススキや笹で、水辺近くではヨシやガマで、農地が発達していれば小麦わらや稲わらで、南の島ではヤシやバナナの葉で。
これは奈良の稲わら葺き。奈良では山地ではススキ葺きが主流ですが、国中(くんなか)と呼ばれる農地の整備された奈良盆地では、稲わら葺きが多かったそうです。
ただし、最も合理的な材料は、社会背景の変化に伴って変遷するものです。
ススキで葺かれていた屋根が、周辺の開墾が進んで茅場が遠くなり畑が増えれば、小麦わらに葺き替えられることもあったことでしょう。
ならば、茅葺きが農の暮らしと切り離され、工業製品を購入するのが最も合理的だった時代においては、トタンによって葺かれるのが自然な姿だったとも言えます。
そして今、自然と共生する暮らしがもとめられるようになってきたのならば、またトタンを剥がして茅に葺き替えれば良いだけの話だと思います。
トタンを剥がせば中にはちゃんと茅葺き屋根が入っているのですから。
次はどんな「茅」で葺くのか?
それは、現代の日本でどのようにして茅葺きとともに暮らすのか、そのアイディア次第ということです。
sh@