0309 ネソ

投稿日: 2件のコメントカテゴリー: 小さな仕事

あいな亭を一緒に葺いていた、「飛騨かやぶき」のスギヤマさん
の現場に応援にやって来ました。
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岐阜市内の縄文遺跡公園に建つ復元縦穴住居の葺き替えです。

稲作の一般化していない縄文時代にはワラ縄はありませんから、「ネソ」と呼ばれる雑木を曲げて屋根下地の構造材を組んで行きます。
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ネソはスギヤマさんの地元の北陸地方では伝統的な建材として用いられていて、今回は応援と言いながら、その扱いに関しては日本でも指折りの屋根屋さんであるスギヤマさんに教えを請いに来たようなものです。

ネソの正体は早春の山を彩るマンサクの若木です。
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伐り出したあとしなやかさを失わないように水に漬けてあるネソには、間違いなくマンサクの花が咲いていました。

木の内部が凍ったままで曲げると折れてしまうので、まず焚き火で樹皮が焦げて落ちるくらいまで炙ります。
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さらに全体を絞り上げるようにねじって、木の繊維をほぐしておきます。
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慣れていないと力のかけ方がわからず、からだ中が筋肉痛になってしまいました。

木のねじれが戻ろうとする力を利用して丸太を結束して行きます。ネソは乾燥が進むにつれてより強く締まって外れることは無いそうです。
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縄文時代まで遡らずとも林業を生業として栄えていた飛騨地方では、稲作の副産物であるワラ縄よりもマンサクの若木の方があたりまえの材料でした。
外から見ただけでは判らなくとも、茅葺き屋根を支える技術や材料は実に様々です。現代の茅葺きを支えるに相応しい技を見極めるためにも、永く伝えられて来たそれぞれの技術に関する理解を、少しでも深めて行きたいと思います。

0306 竣工、そしてゴモクの行方

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@藍那Cハウス棟

棟の際から刈りはじめた刈込み仕上げも、吊り足場の丸太をはずしながら順番に下って来て軒裏を刈り落とし、軒の表を刈り揃えたらついに竣工です。
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2年越しの仕事がようやく終わりました。
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断熱性に富みながら通気性も持つというストロウベイルハウスの魅力を引き出すには、同様の性能を発揮する茅葺きで屋根を葺くに限ると常々思っていました。
今回それが実現はしたものの、この建物の設計は茅葺き民家らしく広々とした開口部を持ち、壁の断熱効果を活かすオーソドックスなストロウベイルハウスとは随分印象が異なります。

さて、屋根を葺いている間は大量の茅くずが、刈込みに入ってからは大量の「すさ」が茅屋根葺きの中では日々「生産」されていきます。
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もちろんこれらのゴモクは建築廃材などではなく、堆肥原料としても天然マルチとしても素晴らしい農業資材です。
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今回は手伝いチームを率いてくれた、百姓イマイさんの畑でじっくり熟成堆肥に育ててもらえることになりました。
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茅葺きの建物は竣工が完成ではありません。身近な草を屋根に使い、使い終われば土に還る、循環の環が繋がって成長し続けて行きます。
近い将来は里山公園の中でも、来園者とともにその環が繋がって行くようになることでしょう。

0305 しつこく雪の季節

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@藍那Cハウス棟

仕上げの刈込みもいよいよ表の一面を残すのみとなりました。
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今日は天気もよくて仕事が捗ります。

と、思っていたら一天俄にかき曇り、結構な勢いで雪が降り出しました。
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断熱効果に優れた茅屋根にはすぐに雪が積もり、積もると屋根の面を見通すことが出来なくなり、刈込みはとても難しくなってしまいます。

と、悩む間もなく雪は止み青空が広がりました。
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やれやれと胸を撫で下ろし、屋根に積もった雪を掃き落とします。

気を取り直して刈込み再開。
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ところが西の空にはもう次の雪雲が迫って来ています。

結局雪が積もって、雪を掃いて、晴れて、を3回も繰り返してしまいました。
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青空に舞う風花。
いつまでも雪の季節ではあるまいに。せわしない日でした。

0302 茅葺き現場体験会カヤカル'08@神戸

投稿日: カテゴリー: 茅刈り

今シーズンのカヤカルは、ヨシ刈りに続いて茅刈りも雨で順延となってしまいました。冬場の開催で今まで一度も雨にも雪にも合わなかったのが、まあ運が良かったといえばそうなのですが。
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しかし延期開催となった日曜日は冬晴れの茅刈り日和。
急な日程変更にも関わらず参加頂いた皆さんには、茅場での一日を楽しく過ごして帰って頂けました。

「家に帰った後もススキが気になる」「茅刈りしたくて腕がうずく!」とは何ともありがたいお言葉まで頂きました。
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茅刈りの楽しさをもっともっとたくさんの人たちに知ってもらえるように、これからも努めて行きたいと思います。

0229 刈込み

投稿日: カテゴリー: 茅葺き現場日誌@藍那Cハウス棟

棟も無事に収まり仕上げの刈込みが始まっています。
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屋根ハサミで茅葺き屋根の表面を刈り揃えて行きますが、一番丈夫な茅材の根本の部分を刈りすぎることの無いように、葺いて上がる段階できちんと屋根の面を出しておかなければなりません。
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傷んだ根本やケバをわずかに刈り揃えて行くことで、丈夫で美しい屋根の仕上がりを目指します。

刈込むハサミの先に太陽の暈の虹の環が。
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幻想的できれいな風景ではありますが、明日からの天気が心配です。