杉皮を被せて「カラミ」と呼ぶ角材で押さえ、カラミをウマノリで挟むようにして棟の養生とします。
最後に「ユキワリ」と呼ぶ丸太を、ウマノリの上に意匠的なバランスを取るために載せます。
足場を外して刈り揃えたら完成です。
棟やケラバは良く目につくところだけに、機能的的な低下がそれほど進んでいなくても、今回のようにお施主さんの意向で手直しすることもあります。
屋根全体の印象がすっきりしたのではないでしょうか。
反対側の屋根のケラバも差し茅で手直しし、棟もあるべき高さにまで積み増しました。
棟の高さは減ったというより、元々少し低めだったようです。
杉皮の下には「ひしゃいだ」(潰した)ヨシが敷かれていました。低めの棟とともに近江の茅葺き屋根に見られる特徴です。
屋根を葺いている茅材も全て琵琶湖のヨシのようですし、前回は滋賀県の職人さんが京北のスタイルに合わせて葺かれたのではないでしょうか。
棟飾りの材料を段取りします。ウマノリを刻むのも屋根屋がやります。
雨風に曝されるウマノリには栗の木が最適です。
栗は傷んで細くなっても最後まで芯は残ります。輸入木材など用いると見た目はしっかりしているようでも内部から腐って空洞化し、突然落ちて来ることもあり注意が必要です。
美山に戻って来て、隣町の京北(京都市右京区旧京北町)のお宅の屋根修理に伺います。
棟が傷んでいるので積み直し、ついでにケラバもエッジが立つように直してほしいとのことです。
ハシゴをかけて屋根を間近に見てみると、ケラバの近くでは屋根表面に銅線がたくさん表れています。
「捨て縄」と呼ばれる技法で、押さえ竹より外側、屋根の表面から浅い位置で、針金や銅線、麻縄などでかきつけてあります。
こうすることで屋根表面は目の込んだ仕上がりになりますが、茅葺き屋根は隙間があるからこそ細い茅材一本一本の表面張力が釣り合い雨が漏らないので、強くかきつけて隙間が無くなると雨の染み込みやすい屋根になる懸念もあります。
棟の雨養生の杉皮も厚みが充分ではなかったのか、穴の開いた箇所から棟の中にも雨が入り込んでいます。
ウマノリはその重量で杉皮を押さえています。
最近の美山ではウマノリで棟を挟むようにして止めているので、載せているだけのこの屋根の収め方は、形は同じでも美山の屋根とは工法としては全く異なることになります。