里山」カテゴリーアーカイブ

0422 芽吹き前の茅場

一旦美山に帰るにあたり、資材を取りに里山の茅倉庫に立ち寄りました。
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先月は梅の香りだけが春の訪れを知らせていた周りの茅場は今や春の野花の盛りです。

ここがかつて長い時間田んぼであった記憶をとどめるレンゲの他に、スミレ、タンポポ、ハハコグサ・・・最近ではあまり見かけなくなった在来種の花も多く見かけます。
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毎年冬には茅刈りによって手入れされ、春先には地表に隈無く日光の降り注ぐ茅場は、春に花を咲かせる野花に取っては理想的な環境なのでしょう。
何千年ものあいだ人の営みに寄り添うようにして、多くの野草が花を咲かせて来たはずです。

そして日当りの良い草原を好む植物は、茅刈りによってススキが元気に繁っていればこそ、ススキとともに葉を伸ばして行くことができるのです。
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ワラビもそんな草のうちの一つ。ですから、手入れの良い茅場では春にはワラビ採りが存分に楽しめます。

積み上げていた茅束の中から飛び出して来た、この小さな小さな野ネズミも、やはり人の手が入ることでつくられる茅場の環境を棲処としています。
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おそらくカヤネズミかと思われます。
文字通り、茅とともに生きるネズミですからね。

0321 早春の里山

茅刈りシーズンの締めに、里山の茅倉庫まわりを刈りに来ました。
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この場所を使わせてもらい始めた頃には絡み合うクズのツタに埋もれていましたが、クズの海を開墾した中から掘り起こした梅の木が、茅刈りによる手入れを続けて来たことで、かつて棚田を見守っていたのと同じきれいな花を咲かすようになっています。

茅倉庫の前ではやがて里山公園としてオープンする日に備えて、園路を整備する工事が始まりました。
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雑木林に春の訪れを知らせてくれたサツキの花に今年は会うことは適わなそうですが、園路が完成し雑木林の手入れが重ねられていけば、やがて誰もが足場の良い道から再びサツキを楽しめるようになることでしょう。

071002 脱衣室

神戸の里山でもススキの花が咲き出しています。
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砂木の家の屋根は、以前から少しずつ刈り貯めていたススキに、淀川や宇治川のヨシを混ぜて葺いて行きます。
ヨシを取りに茅倉庫へやってきました。

茅倉庫の容量に限りがあるので外に積んでいた茅がかなり傷んでいました。厳重にシートで養生し地面からも高く上げて積んでいたのですが、わずかな穴から雨水が入り込んでいたようです。
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細かな気配りが必要な上に、やたらとかさ張る頭痛の種です。
かつては秋に刈り冬中干して乾かした茅を春に葺いたり、村の各戸の屋根裏に分散して保管した茅を順番に使ったりしていた訳ですが、つくづく上手い仕組みが出来ていたものだと思います。

倉庫の茅を運び出していると、何やら変なものが出てきました。
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卵の殻を細かく砕いて固めたような・・・

どうやらこの皮の主が、食事の後に吐き戻したもののようです。
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ヘビは脱皮の際に石の角などを使って、古い皮を引っ掛けながら脱いで行くそうですが、積み上げて揃えた茅の根本が引っ掛けるのに具合が良いようで、実にたくさんの古川が脱ぎ捨てられていました。

さらに茅を運び出して行くと、皮の持ち主自身も現れました。
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左の細い皮の主のシマヘビ。

そして、右のごつい皮の主のアオダイショウ。でっかい!
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カヤネズミのことを思うと、ヘビ達に茅倉庫の住み心地を喜ばれるのは複雑な気分ですが、大きなヘビが何匹も暮らして行けるくらいに、ネズミやカエルや鳥の巣がたくさんある環境になっていることは、喜んでおこうと思います。

070906 夏の終わり

久し振りに神戸の里山にやってきました。夏のあいだに繁った、藍那の茅倉庫周りの草刈りをしておくためです。
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もともと田んぼだったところでぬかるんだ場所も多く、そういう場所では茅刈りを重ねていても、痩せて乾いた土地を好むススキはなかなか生えて来なかったのですが、代わりにミゾハギが群落を造るようになりました。
萩の花も秋の七草のひとつです。手入れされた茅場のなかで、地質や日当りによって色々な植物が棲み分けているようです。

一方で人の手が入らなければ日本の自然は実にワイルドです。
それらは一見緑豊かに見えても、実際にはクズがすべてを覆い尽くそうとしているこの茅場の周りの廃田のように、単調で貧弱な植生になってしまいます。
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変化に富みやさしい日本の自然とは、あくまでも日本人が生態系の輪の中において、その務めを果たすような暮らしをしていればこそ育まれて来たのでしょう。
おじいさんとおばあさんが、日々の暮らしの中で手入れされておられた先の現場の周りのように。

ところで造形としては、日本の自然もナチュラルなアースカラーだけに彩られている訳ではありません。
人間の勝手な思い込みを吹き飛ばすような、派手なデザインにしばしば出くわします。
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草刈りをしているとササの中から現れた、この岡本太郎のオブジェかと思うような作品は、狐の錫杖(ツチアケビ)。

このタマムシのめくるめくような輝きも、また。
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アリがきれいに空っぽにしてしまった殻を、丁稚サガラが拾いました。
子供が拾えば宝物になりますね。大変な手間をかけて一枚ずつ厨子に貼った、天平人の気持ちもよくわかります。
生きているときはもっときれいな輝きを放つそうで、見てみたいものです。

神戸のアパートに戻ると、4階の窓の正面になる電信柱のてっぺんで、モズがキキキキ、ケケケケ、と高鳴きを始めました。
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見上げれば暮れて行く秋の空。
昼間は草刈りで大汗かいて来ましたが、もう既に次の季節が始まっています。

070510 初夏の里山

神戸まで茅の搬出に来ました。
茅刈り体験会「カヤカル」の会場となった団地の茅場は、春になって芽吹いた緑に覆われています。
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刈り取りさえ怠らなければ、毎年繰り返し生まれる豊かな草原が、多くの生き物たちの命と私達の自然と共生する暮らしを支えてくれています。

同じ団地内の道路法面でも、茅刈りによる手入れをしていない場所との違いは一目瞭然です。
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もう少し季節が進めばここも見た目には緑色となるかもしれませんが、実態はこのように枯れ草ばかり多くて、それでは小さな生き物たちを育むことも、私達が資源として利用することも難しいのです。

初夏を迎える里山の茅倉庫では、鳥たちの鳴き声がにぎやかです。耳を傾けていると、実にたくさんの種類の鳥たちが鳴き交わしています。
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耕作放棄された一帯の里山は、次第に単調で野生の凄みすら感じさせる、原生の植生へと変遷していこうとしていますが、草刈りなどの管理を続けている倉庫の周りは、人の気配の漂うやさしい景色を保っていると思います。
それは多分、多くの鳥たちにとっても居心地の良い空間であるはず。

廃田を再生したこちらの茅場は土が豊かすぎて、本来痩せ地に生えるススキは毎年少々育ち過ぎ気味。茅刈りを続けてることで次第に落ち着いて行くとは思いますけれども。
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日当りの良い草地を好むシダが、ここでは年々増えて来ています。周辺の茅刈りをしていない休耕田は、ササやクズの茂るジャングルとなってしまっていて見られません。
茅場では冬のススキだけではなく、春のワラビという収穫も楽しめるのです。

070315 茅屋根の重さ

神戸の西にある実家に顔を出し、犬を連れて明石海峡を望む高台に登ると夕焼けがきれいに見えました。
毎日この夕焼けを見ながら育ったので、美山に移った当初は山に囲まれているせいで、夕焼けが見れないまま暗くなってしまうことに気が滅入ったものでした。
今ではすっかり慣れましたけれど。
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未だに馴染めないのはこの非常識に大きな橋。
小学生の時に造り始めたときから、冗談みたいに大きくて子供心に笑わずにはいられませんでした。
四国に行く時には便利でよく使っていますけれども。

さて、保管してある茅を養生するための単管の覆いも、ようやくトタンの屋根を張るところまでこぎ着けました。
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「屋根屋ですが茅葺きしか葺けません」ので、トタンを張るのも時間ばかりかかって、なかなかきれいには納まりまらないのです。

それでもとにかく雨露は凌げるようになったので、さっそく野積みにしてある茅を運び込もうとしたのですが、案の定ブルーシートをめくってみると雨水が入り込んでいて3分の1ほどの茅が濡れてしまっていました。
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夏だったら全滅の大損害だったところです。
幸い冬場だったので腐朽には至っていませんでしたから、できたばかりの屋根の下に立てかけて乾かします。こうして立てて風を通してやれば数日のうちに乾燥するはずですが、単管の覆いは物干し場となってしまったので、全ての茅を運び込めるのはまた先に延びてしまいました。

茅を運び込むついでに、乾いた分の茅の一束あたりの重さを量ってみました。
この茅は北上川産のヨシですが、38束量って平均が4.097キログラム。
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平方メートルあたりだいたい15束程度必要になるので、美山町サイズの屋根だと18トンくらいになる計算です。
これは茅だけの重さですから、さらに竹や縄の重量が加わります。茅葺きがとても重いということを説明しても、なかなか信じてもらえないことがあるのですが、こうして量ってみるとやはり相当なものです。

念のために申し添えておくと、金物を使わず木を組んで建てられる伝統的な日本建築は、上から荷重がかかってはじめて安定するものですから、重いということは別に悪いことではありません。
ただ、それに見合うだけのしっかりした構造が必要とされるということです。

野積みにしていた茅の山を崩して行くと、こんな可愛らしい借家人が出て来ました。
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茅とビニールひもを細く裂いて作った巣にくるまって冬を越していた、カヤネズミでしょうか?ヤチネズミでしょうか? 親指よりも小さな野ネズミが。

061124 晩秋

神戸に茅倉庫の片付けに行って来ました。
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それなりに艶やかな、雑木林の紅葉も終盤に差し掛かかりました。
今年はあまりにいつまでも暖かで、今さら小春日和と呼ぶのもためらいそうな日が続いていましたが、それでも季節は移ろっていたことを、里山の木や草や鳥の姿が教えてくれます。

さすがに最近では日が陰ると寒さを感じるようになって来ました。
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藍那の里山も間もなく冬を迎えます。

060930 初秋

美山の現場の途中ですが工程を調整してもらって、神戸で一週間作業して来ました。
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藍那の里山では、草刈りを続けて来た場所でススキの尾花が咲き始めています。
いよいよ茅場に銀の波がうねる季節となってきました。

葺き替えの途中で神戸に行って来たのは、ストックしてある茅材のうち他所の倉庫にご好意で置かせて頂いていた分を、搬出する期限が迫っていたためです。
茅材はとにかくかさばるうえ湿気や水濡れに弱いので、保管のための場所を確保するのに苦労させられます。

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倉庫に山積みの茅を運び出していると、こんなものが出て来ました。
鶏卵の半分くらいの卵の殻。そしてヘビの抜け殻。

やがて茅のあいだからこんなものがたくさん出て来ました。
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生まれて間もないアオダイショウの子供たち。
まだら模様がマムシに似ているせいで、間違えて殺されてしまう事も多いのですが、体形が細めだし頭部を隠して守ろうとするので、落ち着いて見れば簡単に見分けられます。
ネズミを獲りに茅葺きの屋根裏で暮らしているおっ母さん達は、農家の守り神として昔は大切にされていたものですが・・・

10年以上茅刈りを続けて、ニュータウンの道路法面で育てている茅場の様子も見て来ました。
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今年は少し生育が悪いかなあ。

ススキの根元にはナンバンギセルの可愛らしい花が。
変な名前ですが、万葉集にも詠われた在来種だそうです。
ススキの地下茎に寄生するこの花は、元気なススキ野原がなければ咲く事が出来ません。
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茅刈りをすることによってこんな貴重な植物が、団地の中であっても群生する自然環境が育まれています。

60630 夏のはじまり

そろそろ棟を積む、というタイミングでまた関西へ一週間程戻ってきました。自宅のiMacは戻るのを待っていたかのようにクラッシュしてしまったので、美山→神戸→宇治のショートトリップをまとめて。

美山も忙しそうでした。いつまでも鎌倉が片付かないので少々気が引けます・・・
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美山の自宅の周りはホタルが盛り。
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なのですが、ホタルの写真は難しいですね。
ゲンジは明るいですよ。

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藍那の里山は夏の装い。茅場のススキも順調に育っていました。
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ヤマダさんの京田辺のS家は竣工間近。こちらの現場に入るという話もあったのですが。まあ、鎌倉に行ったこと自体は良い経験になっていますけれど。
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S家近くの巨椋の池干拓地にはこんな田んぼが。これは稲田なのか蓮田なのか・・・。レンコンの収穫は稲刈りに合わせなければならないのでしょうか?
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で、今朝鎌倉に戻って来たのですが、まだ棟は上がっていませんね。あれ?
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060515 初夏

屋根めくりの始まった鎌倉を後にして、関西へ戻って来てしまいました。
自宅と藍那の茅倉庫まわりの草刈りをするため、その他諸々の用事のためで予定通りなのですが、タイミングがタイミングなだけに少々後ろめたいです。1回目のめくりもやっていないし。

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藍那の里山は初夏の装い。
林中から途切れなく聞こえてくる鳥の声。谷筋を吹き抜ける風。満開のレンゲ、ハハコグサ。
気持ちよすぎて、刈り払い機のエンジンをかけるのが憚られます。

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刈り取った草は一晩くすべて灰にして、畑の肥料に活用します。
火の番とお月見を兼ねて、夜の森で過ごします。

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ここは茅刈りを始めてまだ2年目ですが、草刈りをすると昨年よりも確実に植物の種類が増えている事を実感します。ワラビもススキ野原でよく採れます。今年は遅すぎましたけれど。

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草刈りをすませた茅場は、ススキの株がぽこぽこと個性的な風景をつくります。
手入れされた里山は人の気配が漂って良い感じ。
sh@