茅葺き現場日誌@禅定寺」カテゴリーアーカイブ

0414 刈り込み

あいな里山公園ではハサミ仕上げでしたが、今回は差し茅=補修工事ということもあり、工期や予算を勘案してエンジンヘッジトリマーを使って刈り込みます。
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ヘッジトリマーを使う場合は、ハサミのように刈り込みながら平面をつくることは難しいので、事前に叩き揃える段階で屋根のかたちを仕上げておかなければなりません。

足場を外しつつ上から順に刈込み、仕上がったら例のアワビの貝殻を、括りつけた竹串を茅と平行に屋根に差し込み設置して行きます。
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「ヨシ葺きの屋根に、アワビと鎖のアクセント」は山城から近江にかけて、茅葺き民家の地域的な意匠として定着している感があります。
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アワビの貝殻は(気休めの)鳥除け。鎖は何のために?と、昔尋ねたところ、「火事のときに上がるためだ」と教えられました。
燃えている屋根に消しに上がるなんて、随分危険なことをするものだと思いましたが、そうではなくて、火の見櫓として使うためだそうです。確かに茅葺きの屋根は田舎では高層建築で、棟まで上れば見通しは利きます。
隣家の火災に際して「飛んで来た火の粉を延焼しないように消してまわる」こともするそうです。ちょっと危ないような気もしますけれど。
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やはり、どちらかと言うと意匠的な意味合いが強く残っているように感じます。
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だからこそ、お施主さんも鳥よけの効果には首を傾げながらも、こうして交換用の新しいアワビの貝殻を用意して下さる訳で。
実際、山中の茅葺き屋根とアワビの貝殻という唐突な組み合わせは、なかなかかわいらしいかもしれない。という気もしてきました。段々と。

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sh@

0413 今日まで差していました

今年の春はやけに雨が多いですね。
あまり降られると、屋根屋のフトコロは干上がってしまいます。
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その間に、宇治田原の桜もようやく満開になりました。

今回差し茅するのはここまでです。
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茅葺き屋根は部分によって当然傷み方に差が出ますから、効率よくメンテナンスするためには何回も分けて葺くなり差すなりすることになります。
ここより上は棟を積み替えるときに同時に葺き換える予定です。

ところで、禅定寺の茅葺きの本堂に並んで建つ、薬師堂は土蔵造りでした。
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あまり他では見た記憶がありませんが、こういう例は他にも結構あるものなのでしょうか。
sh@

0408 今日も差しています

今日はひどい黄砂が降りましたね。

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葺き替えの場合、最初の古屋根の解体は汚れる作業で、場合によっては顔の前後ろも解らぬほど煤まみれになりますけれど、新しい茅で葺くようになればそんなに汚れません。
でも、差し茅だと最後まで古茅と縁が切れない訳で、毎日ほこりまみれになります。
それに加えて今日は黄砂。やれやれ。

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sh@

0407 差しています

八幡の市内は桜が満開となりましたが、現場のある宇治田原では、つぼみほころぶ程度でまだ梅の方が盛りです。
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それでも、暖かな日が続いて昨日はアマガエルの初鳴き。
かえるの季節が始まります。

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今日はこれだけ。
sh@

0406 茅材としてのヨシ

禅定寺の茅葺き屋根は、ヤマダさんによるとおそらく琵琶湖産のヨシで葺かれています。
そして、今回差し茅のために用意されたのは、宇治川の「中書島」で山城萱葺屋根工事によって刈られたヨシです。
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'06カヤカルvol.1で刈り取った淀川の「南方」のヨシと比べると、長さも太さも倍以上、手触りも違うし、とても同じ種類の植物とは思えません。

現在、茅材として流通しているヨシの主な産地は、宮城県の北上川河口と青森県の岩木川河口、それに琵琶湖の西の湖周辺です。
前2カ所は海水の混じる汽水域に広がるヨシ原で、淀川のヨシ場も大阪湾の潮の影響を受ける干潟にありますが、いずれも細くパリッとした感じの茅になります。塩分が作用するとそのようなヨシになるのかもしれません。

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宇治川のヨシは琵琶湖のそれと同じように触った感じは少し柔らかめ。太く大きくなるので、差し茅用に1m前後に切った茅が、一束のヨシから3つくらいもとれます。
太くて丈夫な一番根元、材の揃った二番目、先細りで柔らかめの三番目以降を、それぞれ適材適所に使い分けます。
海水の混じらない場所に生える、これがヨシ本来の姿なのか? 或いは琵琶湖の富栄養化した環境のせいで大きく育つのか? 常々気にかかっていましたが、最近そもそも琵琶湖のヨシは大きくなる遺伝子群だという話も耳にしました。もし、そうだとすると淀川水系のどのあたりで、宇治川タイプのヨシと淀川タイプのヨシが住み分けているのか・・・

分類上は同じ植物なのでしょうけれど、茅材としては全く別ものです。どちらが優れているということはありませんけれども(地元の屋根屋さんはそれぞれ自分の使っているタイプのヨシを「日本一の茅」と言いますが)、葺き方は違うのできちんと使い分けることが肝心だと思います。

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sh@

0404 差し茅工程

差し茅を始める前に、まず屋根表面の風化して土に変わってしまった茅を、苔ごと取り除きます。
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この苔は畑に入れると地力が衰えてしまうために、肥料にはならないそうです。
いかにも堆肥になりそうなのですが、何故だめなのか具体的にご存知の方がいれば、ぜひ教えて頂けませんでしょうか。

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屋根表面を雨水が流れることで、茅葺屋根は表面から分解して少しずつ薄くなっていきます。
押さえの竹から屋根表面までの厚みは茅葺き屋根の寿命を示す事になりますので、痩せた分だけ茅を引っ張りだして元の厚みにもどします。

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傷んだ先端部分はハサミで切り取って取り除きます。

茅を引っ張りだしたことで押さえの竹は緩んでいますから、緩んだ分だけ新たに茅を差し込みます。
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このとき、どこに、どんな茅を、どのように差すのかが、差し茅で肝心なところです。

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sh@

0401 差し茅

茅葺き屋根に降った雨は、茅材の表面張力と重力とのバランスにより、中に染み込むこと無く屋根の表面を流れていきます。従って、茅は雨に濡れる外側から風化していきますが、中は傷むことはありません。
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ちょっと一本引っ張りだしてみれば、良くわかります。
変色しているのは外側の数センチだけです。

差し茅というのは簡単に言うと、表面が風化した屋根の痩せた分だけ茅を引っ張りだして、傷んだ茅の先端部分を取り除き、引っ張りだして押さえの竹が緩んだ分だけ新たに茅を差し込む。というものです。(他のやり方もあります。あくまでも今回の場合)

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実際には茅葺き屋根は、かたちや長さが様々な茅を上手く使いこなすために、一様には葺かれていませんし、その様子は外観からではよく解りません。
引っ張ってみた手応えや感触で判断して、短くなったりしていて使えない茅は取り除き、差した茅が緩んで抜けたり、詰めすぎて茅の勾配がおかしくなったりしないように調整しながら、屋根全体を均一に新しくしていくのは、それなりに気を遣う作業です。

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sh@

0331 足場組み

あいな交流民家にも応援に来て下さった、「山城萱葺屋根工事」のヤマダさんの現場にお手伝いに来ています。

宇治田原市の禅定寺というお寺の本堂です。
今回の工事は葺き替えではなくて、「差し茅」と呼ばれる補修です。茅葺き屋根を長持ちさせるためには、適切なタイミングで差し茅を行う事が大切です。

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まずは、足場組みから。
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足場主任者講習を受けに行っても、「最近では行われていませんから」といって該当する内容を飛ばされてしまう丸太足場ですが、茅葺きの現場では今でもこれが幅を利かせています。

昔は屋根屋はハサミ一本担いで現場に行けば、材料の茅も手伝いさんの手配も、お施主さんに用意してもらうのが普通でした。別に屋根屋の怠慢ではなくて、集落共同体での農業生産の中で、そのようなものが自然と賄えた訳です。足場も、どこの家にでもあった刈り取った稲を干すための「ハサ木(稲木)」を借りて、足りなければ裏山の竹を伐って来たりして縄で組んでいた名残です。
話が逸れますが、現在そのようなかつての伝統的な生産システムに変わるような、「茅葺きと暮らすためのソフト」が構築されないまま、全てが現金決済に置き換わってしまっているのが、「茅葺きは高価」である、主たる要因でしょう。

では、今でも丸太足場にこだわるのは単なる因習かというと、そうでもありません。茅葺き屋根では軒周りの造作に手間がかかるのですが、足場の高さが絶妙な位置にないと、作業に支障が出るばかりでなく、場合によっては仕事ができなくなってしまう事すらありますが、杉丸太を番線で組み上げる足場丸太ならば、足場面の高さを屋根に合わせて自由に設定できます。また、深い軒の下まで回り込んだ足場は、柱材が短すぎるのはもちろん、長過ぎても上部先端が屋根に刺さってしまい使えません。杉丸太なら場合によっては簡単に切断して長さを調節することもできます。

足場を組んでいる途中の様子。
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足場の上にはかさばる茅材をストックするスペースも必要です。今回はあくまでも補修のために、どちらかと言うと狭め。葺き替えだと出来ればもう少し広い方がありがたいです。
sh@