あいな里山公園ではハサミ仕上げでしたが、今回は差し茅=補修工事ということもあり、工期や予算を勘案してエンジンヘッジトリマーを使って刈り込みます。
ヘッジトリマーを使う場合は、ハサミのように刈り込みながら平面をつくることは難しいので、事前に叩き揃える段階で屋根のかたちを仕上げておかなければなりません。
足場を外しつつ上から順に刈込み、仕上がったら例のアワビの貝殻を、括りつけた竹串を茅と平行に屋根に差し込み設置して行きます。
「ヨシ葺きの屋根に、アワビと鎖のアクセント」は山城から近江にかけて、茅葺き民家の地域的な意匠として定着している感があります。
アワビの貝殻は(気休めの)鳥除け。鎖は何のために?と、昔尋ねたところ、「火事のときに上がるためだ」と教えられました。
燃えている屋根に消しに上がるなんて、随分危険なことをするものだと思いましたが、そうではなくて、火の見櫓として使うためだそうです。確かに茅葺きの屋根は田舎では高層建築で、棟まで上れば見通しは利きます。
隣家の火災に際して「飛んで来た火の粉を延焼しないように消してまわる」こともするそうです。ちょっと危ないような気もしますけれど。
やはり、どちらかと言うと意匠的な意味合いが強く残っているように感じます。
だからこそ、お施主さんも鳥よけの効果には首を傾げながらも、こうして交換用の新しいアワビの貝殻を用意して下さる訳で。
実際、山中の茅葺き屋根とアワビの貝殻という唐突な組み合わせは、なかなかかわいらしいかもしれない。という気もしてきました。段々と。