月別アーカイブ: 2008年12月

1229 竣工

雪に追われながらの作業でしたが、何とか納屋の差し茅も終了。あとは仕上げの刈込みを残すのみ。
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納屋とはいえウマノリが3つでは少し寂しかったので、2つ足して小さなサイズのものを五組としました。

納屋の破風には破風板が入っておらず、茅をかきつけて蓋をしてあるだけです。
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大きな破風を設けた入母屋の屋根は、今でこそ美山の茅葺き民家の特徴となっていますが、古い時代にはこのように破風板無しが普通でした。
やはり、棟飾りとともに見栄えのする箇所なので、細工を施した破風板が入り、さらには次第に大きくなって行ったようです。

ウマノリは耐候性に優れた栗材ですが、新しい材との色合わせも兼ねて、念のため防腐剤を塗っておきます。
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天気予報では大晦日からお正月にかけて雪が降り続くようです。貴重な晴れ間に掃除を進められて幸運でした。

そして、竣工。
茅葺きの納屋と土蔵に挟まれて建つ、美山町の伝統的な屋敷構えに新しい屋根が映えます。
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これで、今年は仕事納めです。
皆様、良いお年を。

1227 差し茅

暖かい、暖かいと言い過ぎたのか、連日の雪となりました。
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お正月の前後に根雪が積もるのは例年のこととはいえ、もう少しだけ待ってほしかったところです。

一晩の積雪量はたいしたことはなくても、雪かきというのは、労働の成果が蓄積しないのが辛いです。
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なるべく余計なことに手間を取られないように、充分な養生を心がけます。

雨漏りをしないように万全を期していても、作業中に積もった雪が溶け出して、手元や屋根裏を濡らすことがありますから、帰る時には屋根全体をすっぽりと包んでしまいます。
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小さな納屋で良かった。
おかげで雪かきにあまり煩わされずに、差し茅を進めて行くことができます。

1221 棟上げ/刈込み

お天気続きで、無事に棟が収まりました。
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平行して、納屋の差し茅をするための足場を組んでいます。

ケラバを刈込む、美山茅葺き(株)のナカノさん。
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入母屋づくりの屋根にとって、ケラバは顔とも言える場所です。仕上げのハサミをかけると、草を積み上げた屋根が端正な表情に一変します。
手間のかかる隅の部分をひとつひとつ積んで来た職人にとって、仕事の成果を問われるとともに、誇らしくもある工程です。
ケラバを刈り落とすことが、屋根屋の花型のひとつかもしれません。

きれいに軒まで刈込み、終了です。
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仕上がった母屋の方は先に足場を解体してしまいました。納屋の差し茅をしている間に、掃除を済ませてしまうためです。

アリゴシから上だけ葺き替えた裏側には、意図的な段がつけられています。
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このような「つぎはぎ」のある屋根が見られることこそ、美山町では茅葺き屋根が暮らしの中で普通に使われいていること、言わば茅葺きが「生きている」ことの証しなのです。

1213 棟積み

暖かい天候に恵まれて、葺き上げ作業が続きます。
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裏側も棟まで葺き上がりました。

棟を積むあいだも、晴れてくれることを祈ります。
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特に風は困ります。

幸い今のところ穏やかな毎日。
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隣りの納屋の屋根も直すことになりました。
もうしばらく、小春日和が続いてくれると良いのですが。

1211 葺き上げ/小春日和

季節が秋から冬へと移り変わるにつれて、霧の出る日も少なくなりつつあります。
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久し振りに濃い霧に包まれた朝でした。

霧が晴れると昼間は陽射しがたっぷり。
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暖かな日は作業も捗ります。

陽射しに誘われてか、畔にはタンポポが花を開いていました。
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在来種のカンサイタンポポは、街に咲くセイヨウタンポポに比べて、地味と言うか、おしとやかな印象です。

1208 葺き上げ/裏側

しばらく野添の現場を空けているあいだに、美山では毎朝あたりまえに霜の降りる季節となりました。
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今朝も良く冷え込んでいます。

茅葺屋が笹葺きやら茅刈りやらしているあいだにも、現場では美山茅葺(株)の面々が着々と葺き上げ作業を進めておられていました。
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表側は新しい屋根がすっかり棟まで葺き上がっています。

そこで、反対側の屋根の葺き替えに廻ります。ただし、こちらはアリゴシから上だけの葺き替えになります。
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と、いうのも、屋根は北側南側だけでは無く、上と下でも雨水が流れる量の違いで傷み方に差が出ます。こちら側は傷みやすい下半分を既に何年か前に葺き替えているので、上半分だけ葺き替えるのです。
ちょど、10月に葺き替えたN邸のときの逆になります。

1207 カヤカル'08@美山・2日目

カヤカル2日目。一晩寝ると初日の体験が熟成されて、技術として身についているか試すときです。
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朝は、霜柱が大きく育つほど冷え込みました。

が、今日作業する茅場は陽当たりが良いので、朝日に照らされて茅は乾いていて、刈るのに支障はありません。
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本来ススキは、このような陽当たりの良い乾いた場所に生えるものです。かつての里山では、ススキに適した場所が選ばれて茅場として手入れされて来ました。

昨日と今日と、同じススキでも場所によって、手入れの程度によって、茅としては随分と質が変わって来ること実感してもらえたのではないでしょうか。
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遠くにお堂を眺めながら、カヤカル参加者の手際もすっかりサマになっています。

そして、手入れの行き届いた茅場からは、カヤネズミの古巣が。
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ここでは晩夏には、スズムシの声も良く聴こえます。

みんなで刈り集めた茅で、初夏にはこのお堂の一部を葺き替える予定です。
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そのときにはまた、ぜひ地下足袋履いていらしてください!

1206 カヤカル'08@美山・初日

傷みの目立つようになって来た砂木のお堂の葺き替えを目指して、まず材料の茅となるススキを砂木の集落内で刈り集めることとなりました。
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「カヤカル'08美山」として茅刈りへの参加を募ったところ、各地から20人の方が集まって下さいました。

春にフルセ(立ち枯れたススキ)を刈り倒しておいた茅場に移動して、最低限の注意事項を説明させてもらったら、鎌とサンバイコウを手渡して、早速茅場へと入ってもらいます。
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刈り方も束ね方も、実際の作業を通して覚えるのが一番ですから。

地元の人たちの手解きを受けながら、カヤカル参加者もどんどんきれいな茅の束をつくって行きます。
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みんなで刈るとたちまち茅場は広々としてきます。やはり茅刈りは大勢でやると達成感が得られて楽しいです。

刈って束ねるだけのことですが、茅として屋根に葺くのに適した束を手際良くつくるためには、ちょっとしたコツががあります。
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簡単なことでも、何世代もの経験の積み重ねから生まれた、それは里山の知恵なのです。体験して教えてもらう機会が無ければ、一生気付くことの無いこと。

夜は集落の皆さんが持ち寄って下さった、素晴らしく美味しい家庭料理の数々を楽しみつつ、乾杯。
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ともに鎌を手に汗を流したもの同士、茅トーク、田舎暮らしトークに夜更けまで花が咲きます。

1202 ピンホールカメラとか

恩師の神戸芸工大S先生と、神戸の茅葺き巡りをしてきました。
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ニュータウンと茅葺き民家が隣り合う、神戸市北区。茅の環で繋がれば、この状況は神戸という街の財産にもなると思うのです。

国営明石海峡公園予定地に建つ、藍那茅葺き交流民家を久し振りに訪ねました。
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雨戸を締め切った暗い屋内で、障子に浮かぶ雨戸の節穴から射す光が何だかカラフルです。

近づいて良く見てみれば、屋外の景色が天地逆さまに写っています。
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節穴と障子で、針穴写真機になっているのですね。
ただそれだけですけれども、何だか嬉しい。誰かに見せたい気分です。

光の芸と言えば、先日福井市のおさごえ民家園を訪ねた折にもありました。
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かまどに火が入り、屋内は煙と水蒸気でもうもうとしていたのですが・・・

茅葺き屋根の隙間から差し込む光が、もやに反射しているのかビームとなって伸びていました。
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ただ、それだけ何ですけれども。

茅刈り体験会 '09

この冬の茅刈りシーズン、年が明けて後半もイベントが目白押しです。
鎌を手に冬枯れの野原へ分け入って、身近な草が茅という建材へと変わる様を体験してみて下さい。
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皆さんの日常の暮らしが自然とともにあることを、きっと実感してもらえると思います。

◎[茅刈り体験会ヨシ刈り編「カヤカル@淀川」]
期日:2009年2月1日(日)
会場:淀川十三干潟 ヨシ原(淀川河川公園 西中島地区 隣接)
集合:AM10:00 淀川河川公園 西中島地区 駐車場
解散:PM15:00 予定
参加費:無料
申込:当日飛び込みも歓迎ですが、中止の決定は当日朝の天候を見て行いますので、◯氏名◯当日朝に連絡可能なEメールアドレスを
こちらまで
お送り頂き、参加登録されることをお薦めします。
持物:弁当、水筒、防寒着、タオル、汚れても良い動きやすい服装でお越し下さい。
主催:山城萱葺屋根工事+茅葺屋

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新御堂筋と阪急+JRの鉄橋に挟まれた、広大な淀川十三干潟。梅田のビル群を目前にして、ここには奇跡のように美しい草原が広がっています。

それは、遥かな昔から途絶えることなく続けられて来た、ヨシ刈りという人の営みと自然とが織り成す豊かな自然環境。
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代々ヨシ刈りを家業とされて来た職人さんの指導のもと、そこでのヨシ刈りを体験するイベントです。

昨年の様子http://www.kayabuki-ya.net/notebook/2008/02/021608.html

◎[茅刈り体験会ススキ編「カヤカル@神戸」]
期日:2009年2月8日(日)
会場:神戸市須磨ニュータウン内茅場
集合:AM9:45 神戸市営地下鉄名谷駅 北側ロータリー(TAXI乗場)
AM10:00 現地
解散:PM15:00 予定
申込:保険加入のため必ず事前に
こちらまで
◯氏名◯年齢◯性別◯住所◯当日朝に連絡可能なEメールアドレスをお送り下さい。
持物:弁当、水筒、防寒着、タオル、汚れても良い動きやすい服装でお越し下さい。
主催:茅葺屋
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ニュータウンを貫く幹線道路に沿って、四季折々の豊かな表情を見せるススキ野原。

17年前から始まった茅刈りによって、ニュータウンの中に甦った草原の自然環境。
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豊かな住環境を育む茅刈りが、里山の自然と茅葺き屋根も守ります。冬晴れの1日を茅場で過ごし、都市と農村、人と自然の共生する新しい関係の芽を育てて行きませんか。

茅刈りアーカイブhttp://www.kayabuki-ya.net/notebook/cat15/

◎[「茅刈りイベント in 花山中尾台」道路沿いで茅を刈ろう!!]
【会場】北区花山中尾台2丁目道路沿い(ひこはち公園南側)
【日時】平成21年2月14日(土)10:00〜15:00(雨天時は15日に延期)
【集合場所】神戸電鉄花山駅前ロータリー
【集合時間】9:30 【参加費】500円
【申し込み】ハガキかFAX、電子メールのいずれかで、件名「茅刈りイベント」とし、住所、氏名、電話番号、生年月日、性別を記入して、下記まで申し込みください。
【定員】30名 (申込多数の場合は抽選になります。)
【締め切り】2月6日(金)消印有効
【主催】北区役所まちづくり推進課 【共催】花山手自治会
【後援】建設局北建設事務所・教育委員会事務局・神戸市すまいの安心支援センター
【問い合わせ先】
〒651−1114 北区鈴蘭台西町1−25−1
北区まちづくり推進課「茅葺き」係
TEL 593−1111(代)  FAX 593−1166
電子メール kitaku@office.city.kobe.jp

神戸市北区には、美しい田園景観のシンボルである茅葺き民家が約750棟現存しており、北区の魅力の一つになっています。しかし、茅葺き民家の数は、茅葺き職人の高齢化や、屋根材である茅(ススキやヨシなど屋根を葺く草の総称)がないことなどが原因で、減少しています。そこで区では道路沿いに茂っている雑草であるススキを「茅」として、みんなで刈りとり、北区の茅葺き民家の屋根に使用することをめざし茅刈りイベントを開催します。あわせて、茅葺き職人による講演を行います。
このイベントを通して、市街地部と農村部が茅でつながる『茅の環』をみなで体験しましょう。ふるって、ご参加ください。なお、今回の茅は北区内の文化財である茅葺き民家の葺き替えに利用する予定です。

◎[職人が伝える茅刈術「かろまい!! 09」]
期日:2009年3月7日(土) 雨天順延8日(日)
10:00〜16:00 (9:30受付開始)
会場:岐阜県各務原市 河川環境楽園 自然発見館
募集資格:中学生以上 (小学生以下は保護者同伴)
参加費:無料
問合申込:河川環境楽園 自然発見館 http://www.hakkenkan.go.jp/
0586-89-7022 (3/6締め切り)
持物:長袖長ズボン、運動靴又は長靴、弁当、水筒、タオル、軍手
主催:かろまい09実行委員会 共催:河川環境楽園

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川原に生える茅を刈ることは、生態系の改善に繋がりまます。
刈った茅は、茅葺き屋根の材料として使うことができます。
当日は茅葺き職人との座談会も予定しています。
里山環境、古民家建築に興味のある方、大歓迎!