ワークショップ」カテゴリーアーカイブ

0719 男鬼の茅葺き2010

今年も滋賀県立大学人間文化学部有志「男鬼楽座」による、男鬼での茅葺きに参加して来ました。
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崩壊寸前だった山手側の屋根を、軒から順に葺き替えはじめて3年目。とうとう棟にまで至りました。

棟に近づくと、葺き並べた茅の先が越えてはみ出てしまいます。はみ出た分が無駄にならないように、茅を切るのも屋根の残りにに合わせて長さを調整しながらとなります。
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茅切りしている地面から、バケツリレー式に茅を届ける葺いている場所までの距離も遠くなりますが、加工した茅の「仕掛品」が出ないように、葺く人と茅を切る人とで連絡を密にして、互いの作業内容を確かめ合いながら進めることが大切です。

毎年少しずつ茅を集めて、葺いて、積み重ねて山側の屋根はきれいに葺き替えられました。
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既に住む人がいなくなって久しい男鬼の集落ですが、人が関わり続けることで集落としての気配を保ち続けています。人の営みが重ねられた環境は、自然の中に適度なアクセントを加えて、原生の自然よりもはるかに多くの生き物たちに暮らしの場を与えています。
山村の佇まいを眺めていると、人の暮らしもまた自然の一部なのだと実感します。

自然に正直に、丁寧に暮らしたいと思う人は増えていますが、自然とともにある正しい人の暮らしとは、エコとかロハスとか外から持ち込むものではなくて、その場所が求めている声に耳を傾けて、ようやく教えてもらえるものだと思います。

長く営まれて来た集落の暮らしは、まさにそんな生き方のお手本でです。
男鬼に携わった学生たちは、そこでの営みを通しての様々な発見を、きっと少しずつ社会に還元して行ってくれることでしょう。

0606 土壁塗り体験会

昨年の初夏に屋根を葺いていた赤井家住宅で開かれた、土壁塗りの体験ワークショップに参加させてもらいました。
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一年経って屋根も落ち着いた良い色になってきています。

下地の小舞は左官屋さんによってかかれていましたが、参加者にも少し体験させて下さいました。
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竹小舞を透かす光は何度見てもとても美しくて、施主ならぬ気楽さから、つい「このままでも良いのでは・・・」という言葉が出そうになります。
長い長い建物の生涯の中で、ほんの一瞬だけ見せてくれる涼やかな姿。

修理前の古壁の土や、解体された付属の蔵の土も混ぜられて、一年寝かせて熟成された土。建物の歴史や記憶もたくさん詰まっています。
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壁に塗るためには、まずこれを捏ねなければなりません。なかなか堪える作業です。塗る方は楽しいのですけれど、しっかりと土つくりが出来ていないと先には進めません。

土が出来たらさっそく壁に。子どもたちは素手でぺたぺた塗り込んで行きます。
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文字通り「自分の手で」家を造った体験は、彼等の中でどんな想い出として残るのでしょうか。

せっかくの機会なので、大人は鏝の使い方も勉強しましょう。
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見てると簡単そうでも、当然ながらやってみるとかなり難しい。でも、引き込まれる作業なんですよね。やり始めると止められない。

忙しい指導の合間を縫って、参加者の塗った壁をさりげなく仕上げてまわる左官屋さん。
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前に出過ぎす、突き放さず。絶妙な立ち位置でサポートして下さる職人さん。
自分が体験してから職人さんの仕事を見せて頂くと、あらためてそのすごさに感服してしまいます。

作業のあとには、あかい工房棟梁が変身した料理長による、豪快絶品料理の数々。
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素材を活かした味に舌鼓を打ちつつ、僕たちはおいしいごはんを食べるために、出会って、働いて、生きているのだということを噛み締めていました。

1212 茅刈りイベント in 花山中尾台

第2回目の開催となる、神戸市北区役所主催の茅刈りイベント
昨日の雨は止んだもののまだ雲は厚く、時折日が差す程度では、午後からの茅刈りまでにススキが乾いてくれるかどうか気を揉む、昨年と似たような展開となってしまいました。
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そんな状況の中で、今回も朝から黙々と参加者のために鎌を研ぐ、丁稚サガラ。

午前中は神戸市の茅葺き民家保存への取り組みと、茅刈りについてのレクチャー。
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そうこうしているうちに弱いながらも陽も射して、アスファルトも乾いて来ました。茅場のススキも乾いている頃でしょう。

そこで、午後から茅場へ移動してみると、 茅が無い・・・
ように見えるくらいに、尾花(ススキの穂)のつきが良くありません。
と、いうかほとんどついていません。
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夏に様子を見にきた時には、勢い良くススキが伸びていたのですが・・・
昨年「みんなで刈っていけば、秋になるごとにススキの穂が輝くようになりますよ」とか、参加者の皆さんに話していた手前、八多町での茅刈りに続いて、なんだか格好のつかないことになってしまいました。

尾花がついていないと、ぱっと見てススキなんだか、雑草なんだか良くわかりません。
ススキの株を探しながらの茅刈りとなってしまいました。
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お米が不作の年には、同じイネ科のススキも生育が悪く、何年か前の冷夏の際には文化財修復のための茅材が、全国的に不足したことがありました。
今年も夏に雨続きだったせいでしょうか?
でも、近くの高速道路法面では一面の尾花が揺れているので、この茅場だけ不作なのが腑に落ちません。

もっとも、刈ってみれば穂は無いながらしっかりと棹は立っていて、束ねて茅に拵えることは問題なくできました。
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むしろ、細くて真っ直ぐで、茅としてはなかなかの品質です。

尾花のついていない棹の先をよく見てみると、一応穂はつくられているものの、開かないまま枯れてしまっているようです。
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さらにその穂の穂首の辺りを見てみると、ハカマに包まれた茎がえぐり取られたように切断されていました。
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何かの虫の食み跡のようにも見えますが・・・
それにしても近辺でこの茅場だけ?全部?

昨年に続いてナンバンギセルの花の跡が見付かりました。
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ススキの地下茎に寄生する植物ですが、こいつが爆発的に増えてススキの精気を吸い取ってしまった訳でも無さそうです。
数はそれほど多くも無くて、万葉集にオモイグサと詠まれた印象通り、控えめに咲いていた感じでした。

道の辺の 尾花がしたの 思ひ草 今さらさらに なにか思はん

来年こそ、一面のススキが秋の陽射しに輝くさまが見れると良いですね。

おまけ。
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文化財課の方が持って来て下さった、サヌカイトの石包丁。
実験!「縄文人は石器で茅刈りをしたのか?」の詳細と検証は、こちらに、いずれ、そのうち、UPされるかもしれません。

僕の個人的な感想としては、肥料喰いの米や麦の本格的な栽培が始まるまでは、葺き替えの度に出る大量の古茅の需要が無いので、分厚い茅葺き屋根を葺くために広い面積で茅刈りをするよりは、もっと他の方法で屋根を葺くと思いますけれども。

1127 八多町の茅刈り

全国茅葺き民家保存活用NWの シンポジウム会場ともなった、八多町の茅葺き公民館の葺き替えに備えた茅刈りが、今年も地元自治会と八多中学校の生徒たちによって行われました。
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茅葺屋も神戸市北区役所「茅葺き係」と、ちょこっとお手伝いに行ってきました。

農村の暮らしの技を伝えながら世代間交流を深めるこのイベント。こういうかたちでたくさんの人たちが、茅葺きに触れて下さっているのを見ると、とてもうれしくなります。
実施にあたってはご苦労も多いかと思いますが、ぜひとも続けて行って頂けたらな、と思います。
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この日の主役は地元のおじさんたちと、中学生・・・

それに、カヤネズミ(の古巣)!
昨年のイベントの際にこの茅場からは、僕が知る限り面積あたり最多の、この「茅ボール」が出て来ました。
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(写真は昨年秋の現地で見付けた、カヤネズミの巣)
さすがに、農村地域で絶えること無く刈り続けられて来た茅場は違うな、と感心したものなのですが・・・

今年は全然出て来ません!
何故?どうして?

「みんなが茅を刈るのは、人の住処と同時にカヤネズミの棲み処をつくることにもなるんだよ」とか、ちょっとイイ話しをして格好つけようと企んでいたのに。
困ったなあ。
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結局、昨年の倍近い面積を刈ったのに、全部合わせてやっと4つ・・・

大勢で刈るのが良くないのかな?・・・いや!まさか、それは昔から変わらないはず。
冷夏だったのとか影響したのかな?・・・そう言えば、ススキの生育も去年より良く無いな・・・

彼等は一体どこへいってしまったのでしょうか?
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(写真は今年の春現場に、御殿場産の茅に紛れて、富士山麓からやって来たカヤネズミ)

1122 茅葺きシンポ@神戸市北区

インフルエンザ対策のために5月開催予定が延期されていた、全国茅葺き民家保存活用ネットワーク協議会 第10回 シンポジウム「都市と農村の協働する茅葺き民家」が、11/21シンポジウム、/22見学会の日程で、神戸市北区にて開催されました。
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初日のシンポジウムは茅葺き民家を移築した八多ふれあいセンターで行われ、神戸における茅葺き再興への取り組みの他、全国各地での活動が紹介されたのに続いて、茅葺きと関わり合う活動を展開している学生たちを招いてのパネルディスカッションが行われました。

僕も自身が茅葺き職人となるきっかけをつくってくれた、母校の神戸芸術工科大学でのカヤテックコミュニティ」について紹介させて頂きましたが、

限界を超えて行こうとする集落での営みの模索を続ける、↓滋賀県立大学「男鬼楽座」、

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廃屋の再生プロジェクトから、むらづくりへ踏み込んで行こうとする、 ↓武庫川女子大学「古民家族」、

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さらに、工学院大学後藤研究室による、山梨県上条集落と福島県前沢集落での実践的な取り組みにについて発表され、活発な質疑応答が行われました。

2日目は地元の手により現役で使われている「下谷上の農村歌舞伎舞台」、再生され市民の集う場となっている「県指定重要文化財内田家住宅」、神戸最大の茅葺き民家である渕上さんのお宅を見学させて頂きました。
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今回特に印象に残ったのは、やはり元気な学生たちの活動報告で、いずれの活動も研究対象としてではなく、当事者として関わって行こうとする覚悟に満ちていたことに感心させられました。

茅葺きの魅力に触れた感動が、先輩から後輩へと生き生きと受け継がれていて、彼等の自主的な活動の継続が、茅葺きを支える人と自然の関わり合う生態系の環、人と人との営みの輪の一部として、既に欠かせない役割を果たしていました。
地道に積み重ねられる活動の様子は、まぶしく、頼もしく、元気を分けてもらう2日間でした。

0324 仕上げ

屋根の上で葺く作業がスムーズに進むのは、裏山で茅の下拵えしたり運んだりする、テッタイさんの働きをする人がいればこそ。
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茅を切るのも手配するのも、段々上手になってきました。

新しく葺いた屋根と、葺き替えていない上半分の屋根の間を葺き詰めます。
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葺き詰め方が足りなければ、古い屋根が緩んで崩れますし、だからといって闇雲に詰め込んだら、茅が屋根の内部に向かって傾いてしまい、そこから雨漏りが始まります。

古い屋根は長年風雨に曝されて厚みが減っています。新しい屋根はそれにつられないように注意して、適正な厚みを保って葺き上がらなければなりません。
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だから、新旧の屋根のあいだには段差が出来るのがあたりまえ。

最後に仕上げのハサミかけ。
屋根の表面を上から順に仕上げて行ってから、軒の裏を刈り落とします。
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重いハサミを持ってのきつい姿勢での作業、「腕が笑った」のはだれでした?

そこらへんに生えている草と、みんなの力とを合わせるだけで、見違える程きれいな屋根になりました。
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来年以降も毎年刈り集めた茅の分だけ、屋根は新しく生まれ変わって行くことでしょう。
あるものを使って、必要な分だけ葺き替えながら、一緒に暮らして行くのが茅葺き民家のあるべき姿。つぎはぎの屋根は、この民家が「生きている」証拠です。

0319 葺き上げ

軒がついたら、屋根の表面になる部分を葺き上げて行きます。
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茅が立ちすぎず寝すぎない最適な角度を保つように、短い茅や長い茅を交互に重ね合わせて調整しながら並べて行きます。
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色んな人が手伝いに来ていますね・・・古民家族はなかなかの大家族ですな。

40〜50㎝くらいの高さが出るだけの茅を並べたら、軒と同じように竹で押さえて下地に縫い止めて行きます。
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屋根の表面を叩き揃えて形を整えたら、息を合わせて竹を踏みしめ、縫い止めている縄を締め上げます。
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この工程を4回繰り返して、古茅をめくった分だけの新しい屋根が葺けました。
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0317 軒付け

下地が出来たら、屋根の軒裏になる部分をつくります。
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手間のかかる地味な作業が続きますが、屋根の形の善し悪しを決める大切な工程なので、焦らずやりましょう。

丁寧に葺き並べた茅を押さえる竹は、でっかい針に縄を通して屋根裏に縫い止めて行きます。
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針先が屋根裏に出て来たら、中に待機している人がレン(垂木)に縄が巻き付くように、掛けかえてあげます。
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軒を止める縄は屋根の一番下に巻く事になりますから、屋根裏で針受けをする人も低いところに手を突っ込んでで大変です。

臨時の助っ人に駆けつけて下さった、山城萱葺屋根工事の職人さんたちを交えて。
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少しずつ出来て行く屋根を眺めながらのお弁当。

0316 下地組み

先月傷みの酷かった部分の解体を済ませておいた屋根に戻って来ました。
今日から古民家族 茅葺き週間のはじまりです。
まずは下地の補修から。
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竹や丸太を縄で結わえただけの茅葺きの下地は、しなやかに揺れることで風や地震に強さを発揮しますが、時間が経てば緩んで来ますから、葺き替えの際に整えてやる必要があります。

古茅をめくって下地の横竹も外して、隙間の大きく空いた茅屋根からは、天井裏に保管されていた茅を出すのに良い具合。
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毎年冬に少しずつ刈り貯めた茅を保管するのには、広くて乾燥している茅葺き屋根の天井裏が最適です。

ずれたレン(垂木)を元の位置に戻して、ヤナカ(母屋)を補強して高さを揃えたら、横竹を配置して行きます。
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基本的に釘もコースレッドも使いません。縄だけです。その方が丈夫になるのですが、もちろん、縄がきちんと緊結されていることが前提条件。
さて、予習の成果を見せてもらいましょうか?

男結びが下手っぴだと横竹はぐにゃぐにゃに踊ってしまうのですが、なかなかきれいに並びましたね。
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下地も仕上がり、茅屋根を葺き始める準備がすっかり整いました。

0307 かろまい!! 09

カヤカル'08@美山に参加して下さったタテマツさんとホシノさんが、地元の国営木曽三川公園内にあるエコパーク河川環境楽園での茅刈りを企画されて、ご案内を頂きました。
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カヤカル参加者の方が、地元に戻って開かれる茅刈りイベントにお誘い頂けるとは、何とも嬉しいことです。
茅葺屋もお手伝いに伺って、参加者の方々と一緒に刈って来ました。

12月に美山での茅刈りに参加されて、地元に帰って公園にススキが株立ちしているのを見付け、公園管理者に働きかけて、3月には茅刈りイベントを実現されてしまいました。
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その行動力には感服いたします。

昨年までは刈り取られたススキはゴミになってしまっていたのでしょうか。
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今年はみんなで鎌を手にして刈り取って、少しの手間と愛情と一緒に束ねて、茅という資源になりました。

河川環境楽園内には、茅葺き民家が移築されています。
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公園内に生えるススキを毎年少しずつ刈り貯めて、この屋根を維持して行けたら素敵だと思います。

エコパークだけあって、芝生の一画には草の茂る原っぱが好きな生き物たちのために、刈込まずに草を伸ばしているところがありました。
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でも、放ったらかしにしていたら枯れ草の薮になってしまいます。
冬になったら思い切って刈ってしまった方が、翌春の芽吹きが枯れ草に邪魔されず、草も元気に葉を伸ばし、小さな生き物たちにとっても暮らしやすくなるのではないでしょうか。
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自然を大切にするというのは、手を触れずに放っておくこととは違うはずですから。

最後に鎌研ぎも体験。
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使う度に、仕舞う前に手入れするのが、道具と上手に付き合って行くためには大切です。
来年のためにも!