一昨年、後ろの音楽ホールになっている本堂を差し茅で修復したかやぶき音楽堂にまたやって来ました。
今回は手前の住居に使用されている庫裏を差し茅します。
差し茅はあくまでも屋根葺き替えの期間を延ばすためのメンテナンスです。あまり手間がかかるようでは葺き替えた方がましになってしまいますし、かといって急ぐあまり手を抜いてすぐに傷むようではやらない方がましとなってしまいます。
限られた予算と工期の中で最大の効果が得られるように、手際良く仕事が進むように集中して行きたいと思います。
一昨年、後ろの音楽ホールになっている本堂を差し茅で修復したかやぶき音楽堂にまたやって来ました。
今回は手前の住居に使用されている庫裏を差し茅します。
差し茅はあくまでも屋根葺き替えの期間を延ばすためのメンテナンスです。あまり手間がかかるようでは葺き替えた方がましになってしまいますし、かといって急ぐあまり手を抜いてすぐに傷むようではやらない方がましとなってしまいます。
限られた予算と工期の中で最大の効果が得られるように、手際良く仕事が進むように集中して行きたいと思います。
茅刈りシーズンの締めに、里山の茅倉庫まわりを刈りに来ました。
この場所を使わせてもらい始めた頃には絡み合うクズのツタに埋もれていましたが、クズの海を開墾した中から掘り起こした梅の木が、茅刈りによる手入れを続けて来たことで、かつて棚田を見守っていたのと同じきれいな花を咲かすようになっています。
茅倉庫の前ではやがて里山公園としてオープンする日に備えて、園路を整備する工事が始まりました。
雑木林に春の訪れを知らせてくれたサツキの花に今年は会うことは適わなそうですが、園路が完成し雑木林の手入れが重ねられていけば、やがて誰もが足場の良い道から再びサツキを楽しめるようになることでしょう。
今年も茅刈りの季節は終盤を迎えつつあります。
毎年の刈り取りで手入れされていてこそ、このように茅として優れたススキを得ることもができますから、屋根葺きに忙しいからと行って刈り残すことは出来ません。
丹後で笹葺き民家を再生しつつある立命館大学の丹後村おこし開発チームのメンバーが、茅刈りの様子を見学がてら手伝ってくれました。
「笹刈り」には慣れた彼等も、「ススキ刈り」には興味津々の様子。
我々が茅刈りに使う鎌は、枝払いなどに用いる両刃の木鎌。
色々試してこれに落ち着きました。
良く研いで使うことが良い茅を得るためには肝要。自身の疲労も軽減されます。
住宅地の幹線道路の法面で茅葺き民家の葺き材が生産されているとは、この道に車を走らすドライバーの方々は思いもよらないことでしょう。
しかし、この場所が他と比べて「きれい」であることに気付いておられる方は、少なくも無い様子。
茅刈りの楽しさを伝える手段を考えて行きたいと思います。
刈り取った後に残るススキの葉やハカマ、雑草などのゴモク。そのままにしておくと翌春の芽吹きの妨げになります。
昔はその場で燃やしていましたが、住宅地のなかで火を使う訳にも行きませんから、きれいに掃き集めて畑の土へと還します。
あいな亭を一緒に葺いていた、「飛騨かやぶき」のスギヤマさん
の現場に応援にやって来ました。
岐阜市内の縄文遺跡公園に建つ復元縦穴住居の葺き替えです。
稲作の一般化していない縄文時代にはワラ縄はありませんから、「ネソ」と呼ばれる雑木を曲げて屋根下地の構造材を組んで行きます。
ネソはスギヤマさんの地元の北陸地方では伝統的な建材として用いられていて、今回は応援と言いながら、その扱いに関しては日本でも指折りの屋根屋さんであるスギヤマさんに教えを請いに来たようなものです。
ネソの正体は早春の山を彩るマンサクの若木です。
伐り出したあとしなやかさを失わないように水に漬けてあるネソには、間違いなくマンサクの花が咲いていました。
木の内部が凍ったままで曲げると折れてしまうので、まず焚き火で樹皮が焦げて落ちるくらいまで炙ります。
さらに全体を絞り上げるようにねじって、木の繊維をほぐしておきます。
慣れていないと力のかけ方がわからず、からだ中が筋肉痛になってしまいました。
木のねじれが戻ろうとする力を利用して丸太を結束して行きます。ネソは乾燥が進むにつれてより強く締まって外れることは無いそうです。
縄文時代まで遡らずとも林業を生業として栄えていた飛騨地方では、稲作の副産物であるワラ縄よりもマンサクの若木の方があたりまえの材料でした。
外から見ただけでは判らなくとも、茅葺き屋根を支える技術や材料は実に様々です。現代の茅葺きを支えるに相応しい技を見極めるためにも、永く伝えられて来たそれぞれの技術に関する理解を、少しでも深めて行きたいと思います。
棟の際から刈りはじめた刈込み仕上げも、吊り足場の丸太をはずしながら順番に下って来て軒裏を刈り落とし、軒の表を刈り揃えたらついに竣工です。
2年越しの仕事がようやく終わりました。
断熱性に富みながら通気性も持つというストロウベイルハウスの魅力を引き出すには、同様の性能を発揮する茅葺きで屋根を葺くに限ると常々思っていました。
今回それが実現はしたものの、この建物の設計は茅葺き民家らしく広々とした開口部を持ち、壁の断熱効果を活かすオーソドックスなストロウベイルハウスとは随分印象が異なります。
さて、屋根を葺いている間は大量の茅くずが、刈込みに入ってからは大量の「すさ」が茅屋根葺きの中では日々「生産」されていきます。
もちろんこれらのゴモクは建築廃材などではなく、堆肥原料としても天然マルチとしても素晴らしい農業資材です。
今回は手伝いチームを率いてくれた、百姓イマイさんの畑でじっくり熟成堆肥に育ててもらえることになりました。
茅葺きの建物は竣工が完成ではありません。身近な草を屋根に使い、使い終われば土に還る、循環の環が繋がって成長し続けて行きます。
近い将来は里山公園の中でも、来園者とともにその環が繋がって行くようになることでしょう。
仕上げの刈込みもいよいよ表の一面を残すのみとなりました。
今日は天気もよくて仕事が捗ります。
と、思っていたら一天俄にかき曇り、結構な勢いで雪が降り出しました。
断熱効果に優れた茅屋根にはすぐに雪が積もり、積もると屋根の面を見通すことが出来なくなり、刈込みはとても難しくなってしまいます。
と、悩む間もなく雪は止み青空が広がりました。
やれやれと胸を撫で下ろし、屋根に積もった雪を掃き落とします。
気を取り直して刈込み再開。
ところが西の空にはもう次の雪雲が迫って来ています。
結局雪が積もって、雪を掃いて、晴れて、を3回も繰り返してしまいました。
青空に舞う風花。
いつまでも雪の季節ではあるまいに。せわしない日でした。